前回までの投稿では、万松青果株式会社の紹介記事をテーマにしました。同社が「年功・勤続年数序列・家族主義」を掲げてうまくいっている要因として、「年功・勤続年数序列・家族主義を掲げる理由を自社の存在意義と関連付けて明確にしていること」「自社の価値観に合った人の採用を徹底していること」「年功・勤続年数序列・家族主義を促す組織活動を日々徹底していること」の3つを考えてみました。
4つ目の要因は、多様な人材を受け入れていることです。
BizHint記事で専務取締役中路和宏氏は次のように話しています。(一部抜粋)
上記のような採用基準が他社でもそのまま当てはまるとは限りませんが、同社の採用に対する考え方をよく表していると思います。
「年功・勤続年数序列・家族主義」と聞くと、「同質のタイプの人で固めた組織」を思い浮かべがちかもしれませんが、その必要性はないことに気づかされます。私たちの身の回りにある家族も、家族内にいろいろなタイプの人がいるわけですので、それと同じことですね。
今組織における「多様性」が課題テーマとして各所で取り上げられています。組織として創造的なアイデアを形にしながら、イノベーティブな商品・サービスの開発や社内変革を実現させていくうえで、人材の多様性は大切だと思います。同社の例からは、多様性の観点から認識すべき人材マネジメントの考え方に気づかされます。
・自社の経営理念やビジョンに共鳴する同質の人のみを歓迎するのではない
・自社の経営理念やビジョンに共鳴しながらも、それぞれ異なる強み弱み・資質・志向性などをもった異質な人を歓迎し、マネジメントしていく
ちなみに、同社のユニフォームは一律ではなく、多岐にわたるデザインから従業員が好きなものを選べるのだそうです。青果仲卸という業種、年功序列・家族主義といった考え方からは、一律のユニフォームではないかと想像しがちです。しかし、このあたりも、「会社の経営理念への共鳴と実践は求める。しかし、そのことと、同質人材による一律的な働き方を求めることとは別である」という、同社のポリシーが感じられます。
HPの作成目的も、「年功・勤続年数序列・家族主義を周知すること」としていること(それだけではないかもしれませんが)が明確に見てとれます。HPを見てみると、従業員の家族の写真も数多く掲載されていて、年功序列や家族主義などについて丁寧な説明がなされています。
このあたりからも、「自分はこの会社に合う・合わない」を明確に感じさせる効果があるはずです。自社の伝えたいメッセージを、メディアを自社なりにいかに的確に使って伝えていくかは、やはり大切なことだと思います。
以上、4回にわたって同社に関する示唆的な記事を参考に、会社の理念に合う人を集めて成果を上げるマネジメントのヒントについて考えてきました。振り返ってみると、同社の大切にしたい文化をつくって維持するために、相当な努力をしていることがわかります。
例えば、最近話題になることが多い「心理的安全性」についても同じことが言えると思います。「心理的安全性を追求しよう」と叫ぶだけで、それが文化として根づくわけでもありません。追求するために自社なりに何をどのようにやっていくかを定義して継続的に実践する。それによって目指す文化に近づいていくのだと思います。
<まとめ>
自社の目指す文化を実現させるために、何をどのように取り組むか決めて実践する。