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完全年功序列・家族主義で成果を上げる(2)

前回の投稿では、万松青果株式会社の紹介記事をテーマにしました。同社が「年功・勤続年数序列・家族主義」を掲げてうまくいっている要因のひとつとして、「自社の存在意義と関連付けて、そうしたい理由を明確にしていること」を挙げてみました。

2つ目の要因は、自社の価値観に合った人の採用を徹底していることです。

同社HPでは、次のように説明しています。

万松青果の基本的なポリシーの中で、一番の特徴、批判、質問の多いのが、この、「年功序列」を守っていることでしょう。

時代錯誤的に見えますし、「頑張った人が、頑張らない人と同じ給料なんてありえない」という方もたくさんいらっしゃることは、もちろん承知しています。

万松青果では、一緒の時に入ったら一緒の給料、一緒のボーナス、簡単です。「他の人に比べて~~」と言う人は絶対に最初から雇いません。交渉もなし。

名著とされる「ビジョナリーカンパニー」シリーズでは、次のような説明があります。このことからも、自社にとっての適切な人材の採用を徹底することの重要性を改めて認識できます。

まずはじめに適切な人をバスに乗せ、不適格な人をバスから降ろし、その後にどこに行くかを決める

偉大な企業になれるかどうかの一番重要な指標は、バスの重要な座席にふさわしい人材が埋まっている割合だ

同社が重視するのは、採用時点での保有能力・スキルの優秀さよりも、自社の価値観に合っているかどうかであることが、BizHint記事からもうかがえます。

一点、おそらく他社と大きく異なるのは、当社は「誰と仕事をするか」を何より重要視しているということです。求職者の方は、当社の考え方に共感して応募して頂くことに加え、従業員やその家族の写真を見て「この人達と仕事をするのだ」という所までイメージを持っていただいていると思います。

同社では、応募者本人ではなく、応募者の妻が電話で「夫を面接に行かせますので」と連絡を受けたというエピソードもあるそうです。「自分の配偶者を採用試験に行かせたいと思える会社」 として映るまでに、同社の価値観や求める人物像が的確に発信されている結果だと言えます。「年功・勤続年数序列・家族主義の会社というバスに乗せるべき人のみ乗せる」という徹底があってこそ、この文化の醸成とそれを前提にしたマネジメントの成功があるのだと思います。

さらにその前提として、「自社にとっての適切な人材」とはどういう人材のことを言うのかの、定義が必要です。

3つ目は、「年功・勤続年数序列・家族主義」を促す組織活動を日々徹底していることです。

BizHint記事で専務取締役中路和宏氏は次のように答えています。

私はこの会社を 「社員どうしがお互いにおせっかいで面倒くさい会社」 にしたいと思っています。そのためには社内の人間関係が構築されている必要があります。当社の社員旅行やイベントは従業員の家族も参加するのですが、これはその関係づくりを目指したものです。

こういった社員旅行やイベントを成功させるために、私自身気を付けていることがあります。それは「仕事の話は一切しない」「参加者が嫌がるようなことはしない(幹事の指名やカラオケ等)」ということです。「仕事から完全に切り離す」ことによって参加者も増え、その結果、従業員全体の結束力も高まっていくからです。

社員旅行にあたっては、私は必ず事前に同じルートで下見に行き、同じホテルに泊まり同じ食事をし、支配人と話をします。社員やその家族に、心から楽しんでほしくて、期待以上のことをしてあげたいと思っているからです。 私は仕事だけの会社にしたくないのです。

「年功・勤続年数序列・家族主義」を標榜していますので、社員旅行やイベントを大切にしているのは想像できます。そして、単に実施するだけではなく、そのやり方にまで同社の価値観が色濃く表れているのが見て取れます。

外部関係者の絡まない、うちわ向けの社員旅行やイベントで、上記ほどの気遣いや手間暇かけた手配を、経営陣が行うことは一般的ではないでしょう。同社では、各人の業績査定やそれを反映しての処遇改定の検討などにほとんど時間を割いていない代わりに、家族主義を維持発展させるための取り組みに時間を割いていることがうかがえます。

このように見てみると、次のように考えられるのではないでしょうか。

・「組織としての考え方を言語化さえすればあとはうまくいく」ということはない。自社が大切だと考えることの取り組みには、こだわって時間とエネルギーを使うことが必要。

・何に対して時間とエネルギーを使うのかは、会社の方針による。時間とエネルギーを使う対象が会社によって異なるとして、使う時間とエネルギーの総量は結局どの会社も同じぐらいになるのではないか。力を入れることなくして、風土づくりもマネジメントの実現もないということ。

続きは、次回以降考えてみます。

<まとめ>
自社というバスに適切な人を乗せ、それを維持するための組織活動に力を入れる。


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