見出し画像

資質を活かす(2)

前回の投稿では、ある経営者Aさんを事例として、「ストレングスファインダー(ギャラップ社)」の活用方法について考えました。自社や社員の置かれた環境を踏まえて、自身のリーダーシップの発揮の仕方を調整したということ、「指令性」等の資質に着目すればより有効な発揮の仕方を考えられたかもしれないというお話でした。
https://note.com/fujimotomasao/n/n3fc914b8c218

リーダーシップ理論の中に、SL理論(Situational Leadership=状況対応型リーダーシップ)という考え方があります。部下の成熟度に合わせて、上司の関与の仕方を調整しようという考え方です。SL理論によると、部下の成熟度に対する有効な上司の関与の仕方は、下記のようになります。

<部下> <上司>
1.能力低+意欲・自信高 指示中心型(高指示+低支援)
2.能力低+意欲・自信低下 指示・支援型(高指示+高支援)
3.能力高+意欲・自信不安定 支援中心型(低指示+高支援)
4.能力高+意欲・自信高 委任型(低指示+低支援)

前回の投稿で、Aさんが「10年前は強いトップダウン統治でやるべきことをすべて自分で定義し社員に一丸となって実行させた。なぜなら、当時は自分以外にそうしたことを共に考えられる人材がいなかったから。」と話したことをご紹介しました。それは、上記で当てはめるとフェーズ1.の段階に対する指示中心型のリーダーシップ発揮だったと言えるでしょう。

1.のように意欲はあるがマネジメントの判断力が未熟な人材に対しては、指示命令中心に動かしたほうがよいということです。当時は、マネジメントを担う人材が総じて1.のステージにあったというAさんの見立てです。そして、このことにAさんの「指令性」資質の発揮が功を奏したと考えられます。

リーダーシップ理論には、パス・ゴール理論というものもあります。リーダーシップの本質が、「メンバーが目標(ゴール)を達成するためには、リーダーがどのような道筋(パス)をたどれば良いのかを示すことである」、という考えに基づいています。パス・ゴール理論では、リーダーシップの類型は次の4つのタイプに分類されています。

・指示型リーダーシップ
何を期待されているかを部下に教え、するべき仕事のスケジュールを設定し、タスクの達成方法を具体的に指導する。

・支援型リーダーシップ
相互信頼をベースに、親しみやすく、部下のニーズに気遣いを示す。

・参加型リーダーシップ
決定を下す前に部下に相談し、彼らの提案を活用する。

・達成志向型リーダーシップ
困難な目標を設定し、部下に全力尽くすよう求める。

そして、リーダーを取り巻く「環境的な条件」と「部下の特性」の2つの側面から、上記のうちどのタイプが適切なリーダーシップとなりやすいかについて説明されています。例えば、タスクが曖昧でストレスが多い場合、チーム内に軋轢がある場合、部下の自立性や経験値が高くない場合などは、指示型リーダーシップが有効だと言われています。逆に、部下が高い能力や豊富な経験を持つ場合は、指示型ではうまくいかない可能性が高まるとされています。

Aさんによる10年前のリーダーシップは、この理論に当てはめても「指示型」でうまくいった例だと考えることができそうです。そして、今では「経営・事業に一定のめどがつき、人材がそろってきたことで、次のステージを目指してボトムアップの要素も積極的に取り入れてきた」と言います。状況が変わったことで、自身のリーダーシップのあり方も別のタイプを目指して調整していったということでしょう。

こうした調整を行うにあたっては、自身の持ち合わせている資質の特徴を踏まえ、どの資質をどのように発揮するのかについて自分なりの方法を身に着けておくと有益でしょう。Aさんの場合は、「指令性」資質の発揮を意識的に抑制することでそれを実現させていったというわけです。ただし、「指令性」資質の発揮を抑えることが苦痛だったために、こうした考え方を知っていればもっと自分なりの工夫をしながら自然体で臨めることができたのではないか、と振り返ったわけです。

続きは、次回以降の投稿で取り上げてみます。

<まとめ>
リーダーシップ理論は様々あるが、周囲の条件によって部下に対する関与の仕方を調整するという考え方が見られる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?