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ターゲット層の特徴を捉える

5月1日の日経新聞で「メルカリ、中高年つかむ 上場来初の通期黒字視野」という記事が掲載されました。個人間売買市場でのメルカリの存在感は既に大きく、売上も右肩上がりで推移しているため、これまで赤字続きだったのを意外だと感じる方も多いでしょう。広告宣伝費やキャッシュレスの消費者還元の費用が大きく、米国事業も伸び悩んで赤字体質でした。しかし、ここにきて投資が回収できてきたということでしょう。

同記事の一部を抜粋してみます。

~~メルカリが個人間売買を仲介するフリーマーケット(フリマ)アプリで快走している。新型コロナウイルス下で、日米でフリマ利用者が急増し、これまで手薄だった中高年層の需要も取り込んだ。株式市場ではメルカリのフリマアプリが主要利用者である20~30代に行き渡り、売り上げ成長の鈍化を懸念する声があった。そうした懸念を打ち払い、大幅増収をけん引したのは、中高年の利用の拡大だ。

メルカリによると、特に60代以上の利用者が1年前から4割増え、最近は中高年層の方が増加率が高いという。60代以上はフリマ出品数が月平均6個と20代の約2倍あるうえ、高額品の取引も若年層より多く、取引件数や金額が押し上げられた。

メルカリは中高年の利用拡大に布石を打ってきた。近年は携帯ショップやコンビニエンスストアなどと連携し、初めてフリマアプリを使う人向けに購入や出品方法を指南する「メルカリ教室」を開いてきた。販促でも中高年の視聴が多いテレビ広告を強化していた。

メルカリは利用者に占める高齢者の割合を開示していないが、江田CFOは「現在も20~30代が最も多いが、利用者の増加率では中高年の方が高い。伸び代も大きいので、引き続き中高年層の利用拡大に注力する」と語る。~~

私自身は、まだメルカリの利用経験はありません。上記で言う「手薄だった中高年層」の年齢層に私も入っているのかどうかわかりませんが(年齢的にもう入るのかなあ)、、少なくとも近しい位置にはいそうです。未利用の理由は、一言でいうと「利用方法を覚えるのが億劫」ということです。私の周囲にも話してみたところ、似た年齢層の未利用者もほぼ同様の感覚のようです。

このターゲット層の特徴について考える上で、3つほどポイントがあるのではないかと思います。

ひとつは、利用方法をわかりやすく伝えることです。「利用方法を覚えるのが億劫」な人は、説明動画などがあってもそれを自分から見ようとはしません。若年層からすると、「検索して気の利いた動画を見つけて、その通りにやればいいじゃん」という感覚だと思いますが、私を含めた中高年齢層はそうはいかないのです。自発的に動画を探り当てて理解するぐらいなら、既に始めています。1から人に教えてもらえるのであれば、聞いてみようという気になりやすいでしょう。その観点から、上記にあるメルカリ教室は一定の効果はありそうです。

しかし、私などはそれでもなかなか腰が重く、利用が進みません。画像をアップして、購入希望者とやり取りして、梱包して発送して、何かあったらクレームにならないかなど、いろいろな手間をかけて数千円程度だと、その時間の手間と心配をかけたくないと思ってしまいます。つまりは、メルカリを利用することで得られるメリットの大きさに対して、機会費用(そのメリットを得るために失うデメリット)の大きさの方が勝ってしまっているのです。そこで、2つめのポイントになるのが、エコ意識の喚起です。

「30分の手間をかけて2~3000円での販売」などだと、金銭面のみでは個人的には取り組む気になりませんが、「処分することになるはずのものを他者に使ってもらうことで地球環境に貢献する」と訴えられれば、進んでやってみようという気持ちが高まります。つまりは、エコ意識が満たされることをメリットに加えて、機会費用を上回るメリットを感じさせるわけです。

この点については、ターゲット層に対してもっと促してもいいかもしれないと、個人的には思います。そして、このエコ意識については、今の若年層がこれから中高年層になるにつれて、ますます高まると想定されます。

3つ目は、中古品の使用に対する抵抗感の低下です。日本の消費者は新品主義が強いと言われてきました。住宅や自動車などの高額品であっても、新築・新車が主流です。中古市場が発達している諸外国とは異なると言われます。電気製品等も新品が主流です。しかし、この新品主義も、若者世代から波及する形で徐々に薄れていっています。

中高年でも、カーシェアや中古本の利用が日常的になってきました。あるご年配の企業経営者も、所有車は処分してカーシェアに変えたと言っていました。これから中高年になる層はITツールへの習熟度も高いため、「スマホで中古品を注文」という行動への抵抗感は、今後ますます薄れていくでしょう。

これら3つのポイントを踏まえると、中高年の利用拡大に投資することは、合理性の高い戦略だと考えられます。

今のターゲット層の特徴だけを見ると攻略は厳しいと思われることでも、これからのターゲット層の特徴を考えると評価が変わってくることがあります。上記はその一つの例だと言えるでしょう。

<まとめ>
ターゲット層の特徴の変化を想定してみる。


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