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株価はバブルか?

最近経営者とお話する機会に、今の株高はバブルなのか、これからまだ上がるのかそれとも下がるのか、ということが時々話題になります。株価の今後は、誰も知らない未来の典型で、市場関係者(金融のプロ)の見解も分かれますし、外れることも日常的にあるものです。私などが言い当てることは当然できませんが、考え方のポイントの整理を試みてみたいと思います。

2月17日の日経新聞に、「日経平均3万円台「バブル」「妥当」拮抗」という記事が掲載されました。以下に一部抜粋してみます(一部加工)。

~~日経平均株価は15日に30年6カ月ぶりに3万円台を回復し、16日も大幅に続伸した。市場関係者41人に緊急アンケート調査を実施したところ、現状の株価水準を「バブル」または「ややバブル」とみる人が5割強だった。一方で「妥当」との回答も5割弱に達し、2つの見方がほぼ拮抗した。今後のリスク要因には米株の急落と米金利の上昇を挙げる声が目立った。

「バブル」派は実体経済や企業業績に比べ株価は割高とみている。「予想PER(株価収益率)が過去のレンジを逸脱して高い」「世界的な金余りが様々な資産の価格を引き上げている。構図は1980年代後半のバブルに似る」との声もあった。現状の株価水準は金利の低さで、ある程度は説明できるとの声もある。

「妥当な水準」との回答も18人に達した。金融緩和や大規模な財政出動で株式の高いバリュエーションが許容されるとの評価だ。「新型コロナウイルスのワクチン普及による年後半の景気や企業業績の浮上を考えるとバブルではない」「需給面からも過熱感は限定的」などの声もある。

今後の日本株のリスク要因を1人3つまで選択してもらった。回答者の4分の3にあたる30人が「米国の株式相場の急落」と回答した。「米国の金利上昇」も29人と多かった。金利が急上昇すれば、米連邦準備理事会(FRB)が緩和的な金融政策の見直しに追い込まれかねないとの警戒感がある。「新型コロナ問題の深刻化」、「米中対立の深まり」がこれに続いた。~~

株式市場の水準を評価する上での検討要素は、様々なものが挙げられますが、ここでは今注目するとよいのではないかと(個人的に考える)3つの要素を取り上げてみます。

1.PERが高い

PER(株価収益率)とは、株価÷1株あたり利益で算出される値です。時価総額÷利益と同様の計算結果になります。見方を変えると、直近の利益の何倍分が時価総額となっているかです。

日経新聞によると、日米のPER推移は以下のようになっています。まだ1990年ほど過熱していないものの、既にアメリカよりも高くなっています。PER26倍なので、時価総額は直近の利益の26倍あるということです。つまり、26年間で投資が回収できるということになります(厳密には配当や税金なども視野に入れる必要がありますが)。

日本 1990年40倍、2021年26倍
米国 1990年15倍、2021年25倍

皆さんは、元本回収に26年かかる投資は、期間として適正と感じるでしょうか。元本保証されている定期預金や国債などではなく、企業が倒産すれば紙くずになる株式投資ですので、おそらく多くの方にとって26年は長すぎるでしょう。

「平均的なPERの目安は一般的に15倍くらい」と言われたりもします。このことは、15年ぐらいが適正な元本回収期間とみられる平均値と言うこともできます。26倍はこれを大きく上回っています。

しかしながら、「26倍だから割高」と単純には言えません。なぜなら、現在のPERは過去の決算情報に基づいているからです。未来の決算で増益なら株価は同じでも26倍以下に変わりますし、減益なら26倍以上に変わります。言い換えれば、株式市場全体が今後の業績回復を十分に織り込んでいないと見る人は実質的なPERは26倍以下だと判断しますし、既に織り込み済みだと見る人は実質26倍以上だと判断します。よって、上記記事でも見立てが分かれるわけです。
皆さんは、PERの観点から割高とみるか、適正とみるか、割安とみるか、いかがでしょうか。

2.金利上昇の可能性

日本の金利は当面動きづらい状態ですが、米国の金利は上昇の動きが見られます。最近、製造業を中心に需要に対して供給が一時的に追いつかない状態が起きていて、物価上昇圧力も高まっています。物価上昇は金利上昇につながります。上記で最大のリスク要因とされている「米国の株式相場の急落」も、金利の上昇が一因になる可能性は大いにあり得るでしょう。今は、各国政府の緩和的な金融政策で市中に出回った資金が株式市場に向かっています。金融政策が変わるとこの風向きが変わって、株式市場に資金が向かいにくくなる、結果株価全体が下がるというわけです。

また、債権と株式は、投資対象としては対極的な性質とも言えます。金利上昇=債権の金利が上がると、基本的に債券投資の魅力が高まります。すると、資金が債券に向かい、株式市場からの流出も想定されます。今は債券に向かわなくなっている資金が株式市場に流れている環境とも言えます。この環境が変われば、株価下落の一因となるでしょう。
果たして、金利は上がるのかどうか、上がるとしてどの程度か、それはどのくらい株式市場に影響を与えそうだと想像するか。

3.大株主の存在
日本銀行が保有する上場投資信託(ETF)の時価評価額が、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回ったと話題になっています。両者で約100兆円、日本の株式市場時価総額全体が約700兆円ですので、その1割以上を占めていることになります。

今後に関する論点は2つでしょう。ひとつは、さらに買い進められるかどうかです。中央銀行が株式市場へお金を投じるのは先進国では異例の対応と言われています。ここからの買い増しには限界があると考えるのが自然でしょう。

もうひとつは、現保有分の出口をどうするかということです。株価下落は経済にとってマイナスのですので、下落局面でも日銀が売却を仕掛けていくのが想定しづらいことが、買い安心感につながっているとされます。他方で、ブルームバーグ記事によると、日銀は危機対応で買うときのルールは決めたものの、出口のルールは決められていない、とあります。既に10兆円以上の含み益があるとされますので、どこかで出口は意識されるかもしれません。

「ユニクロ」のファーストリテイリングの時価総額が、「ZARA」のインディテックスを超えて、アパレル業界で初めて世界首位に立ったと話題になっています。日銀がETFを通じて同社の株を20%近く保有しています。もちろん、同社の実力あっての株高ですが、官製相場の影響を受けた上での結果であることは否めないでしょう。
大株主の動きと影響は、今後いかなるものと想像するか。

以上、3点見てきました。
「なんとなくバブルの気配」「いやまだいけそう」と漠然と思うのではなく、これらを自分なりにどう評価し、今の水準をバブルとみるか妥当とみるか考えてみるとよいでしょう。株式市場を通した経済の見方が深まり、半年や1年後の結果が出た時に面白いと思います。

<まとめ>
今現在の株高に対して、「バブル」「妥当」で市場関係者の見方は拮抗している。


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