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オフィス出社は不要か

先日、ある企業様を訪問する機会がありました。いわゆるIT関連企業です。同社社長にお聞きしたテレワークに関するお話が示唆的でした。

同社様では、「週1日」のテレワークをルールにしているそうです。
テレワーク導入のきっかけになったのは、やはりコロナ禍を契機とした環境の変化です。また、単に就業場所を移すというわけでなく、週に1日分はオフィス以外でできる仕事を集約し、テレワーク環境下で集中的にその仕事を進めることで生産性を高める狙いです。

ただし、週2日以上のテレワークは基本的にできないことにしているそうです。理由のひとつは、週に2日分以上の仕事をテレワークに集約しようとすると、調整がしきれずかえって生産性が下がると考えているからのようです。

しかし、それ以上に重要な理由は、自社の強みが発揮できなくなるからです。
同社様では、自社のミッション(使命)、強みを明確に定義し、その強みを軸に何を達成するべきかのビジョン(目標)を明確にして、事業活動が行われています。その強みを発揮するには、オフィス出社による対面の要素(対面だからできる情報共有、創発効果など)が外せないという判断だと聞きました。また、お客様に対しても、極力対面営業することを基本としているそうです(相手先様の事情・意向と調整した上で、ですが)。

いわゆるIT関連企業です。入社を考える人材からも、「もっとツールを活用してテレワークできるのではないか」と質問を受けるそうですが、強みの源泉が崩れるとしてそこは妥協しないというお話でした。社長個人しても、「週に4日も同僚と一緒にいたくないような会社では、事業は続かない」というポリシーのようです。

コロナ禍でテレワークが一気に広まりましたが、自社の就業環境にどう取り入れていくかについては、各社様が結論を求めて試行錯誤中のことでしょう。やはりオフィスでの対面がよいという企業もあれば、完全テレワーク化で本社オフィスも契約解除したという企業もあります。

一概にどちらがよいというわけではないでしょう。同社様のように以下の論点に沿って考えられているかが重要だと思います。

・自社のミッションや強みを明確化し、それらを基盤として生産性向上の観点で判断されているか
・自社にとっての解を、出社orテレワークという二元論だけでなく、その中間的な運用も視野に入れた上で判断されているか

なお、上記で「週4日」と書きましたが、実態としては「週の半分以下」でしょう。日本は、世界で最も祝祭日が多い国です。ジェトロやプレジデントオンラインにあったデータを参照すると、日本では年間18日が祝祭日となっていて、2位以下を大きく引き離しています。休暇日数‘(祝祭日+有給取得日数)では、有給休暇の消化が多い欧州各国より少ないですが、それでも欧州数か国に次ぎ世界6位となっていて、アジアでは最も多くなっています。

さらに、祝祭日ではないものの多くの企業が休日とする年末年始やお盆休み(あるいは夏期休暇)、土日を加えると、国民が休んでいる日数の平均値はもしかしたら世界で1位かもしれません(そこまでの統計はありませんし、休日扱いでも働いているなどの事象もあるため、短絡的には判定できませんが)。

「週に1日」とだけ聞くと極めて限定的のように思えるかもしれませんが、こうした他のデータと組み合わせるとそうでもない別の実態が認識できます。同社様の考え方が他のどの企業にも適しているわけではまったくありませんが、一つの参考になると思います。

<まとめ>
テレワーク含めた就業形態のあり方は、自社の価値観、ビジョン、戦略に従う。


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