小説:イエスタディ【2000字ジャスト】
僕が生まれた年に生産されたそのバイクを、僕は二十歳の誕生日に手に入れた。
結婚することになった先輩がバイクを手放すのと、先輩のバイクが欲しかった僕の誕生日が同じタイミングでやってきた。
「俺だと思って、大切にしてね」と、先輩はいつもの冗談を言うときの笑顔で言った。
「なに言ってるんですか」
僕はあくまで冷たそうに言ったけれど、言葉にできない感情が溢れそうになるのを抑え込むのに必死だった。
大切にするに決まってるじゃないか。
空冷単気筒のドポドポとした牧歌的な音は、僕をどこへ