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2000字小説たち

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2000文字ぴったりで書いた小説たち置き場
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#短編小説

【小説】午後の最後の光

五限目が始まるチャイムで席に着くと、教室には誰もいなかった。 みんな絶滅してしまったのだ…

富士見 ヒロ
1か月前
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小説:イグニッションガール 【2000字ジャスト】

「低気圧ぶっころす」と、私は目が覚めると同時に呟いた。 パジャマにしているパーカーのフー…

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小説:ハルノシュラ【2000字ジャスト】

「いやーモトサなんてするもんじゃないね」 そう言って彼女は、手に持ったペットボトルで丸め…

10

小説:ファイアズ 【2000字ジャスト】

踊り場の大きな鏡には、一か所だけ歪んでいる部分があった。 誰かが、ガラスは液体だと言って…

8

小説:フェスティーヴォ 【2000字ジャスト】

冷凍庫を開けると、それはあった。 僕はそれを手に取り、冷凍庫を閉めた。 こんなものがあるな…

8

小説:ケサランパサラン 【2000字ジャスト】

僕はそれをケサランパサランだと言い張った。 海苔の佃煮の瓶に入れたそれを、僕は大切に机の…

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小説:イエスタディ【2000字ジャスト】

僕が生まれた年に生産されたそのバイクを、僕は二十歳の誕生日に手に入れた。 結婚することになった先輩がバイクを手放すのと、先輩のバイクが欲しかった僕の誕生日が同じタイミングでやってきた。 「俺だと思って、大切にしてね」と、先輩はいつもの冗談を言うときの笑顔で言った。 「なに言ってるんですか」 僕はあくまで冷たそうに言ったけれど、言葉にできない感情が溢れそうになるのを抑え込むのに必死だった。 大切にするに決まってるじゃないか。 空冷単気筒のドポドポとした牧歌的な音は、僕をどこへ

小説:ブーゲンビリアが咲いていた夏 【2000字ジャスト】

目を覚ましたのがとても早い時間だということは、室内を染めている光の青さでわかった。 ただ…

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小説:ツヅクオンガク 【2000字ジャスト】

カラカラカラと自転車のホイールが鳴く。 また今日も嫌なことがあった。 あの人にラインしそう…

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小説 : アフリカの山羊座【2000字ジャスト】

「今朝あなたの星座最下位だったわよ」と、事務所のドアを開けるなり先輩が言った。 殺意とま…

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小説:リバーズ 【2000字ジャスト】

秒針ってこんなに遅かったっけか、と僕は思う。 心なしか、重力まで重くなっている気がする。 …

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小説:遠野さん 【2000字ジャスト】

祖母の部屋から爆音でEDMが聴こえてきた。 それはまぁどうでもいい。 学校を辞めてから二か月…

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小説:ラニアケア・チルドレン 【2000字ジャスト】

「猫人間コンテストしよ」と鈴木は言った。 僕は今年何十回目かわからない「どういうこと?」…

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小説:五月雨をあつめて 【2000字ジャスト】

私は船を作る。 出来るだけ早く、出来るだけ丈夫な船を。 グラウンドを走り回る犬を眺めながら、私は必死に眠気をこらえていた。 教室は春にかならず眠くなるような設計でもされているのだろうか。 少し暖かすぎる室温、のんびりとした拡散光、単調な先生の声、ほのかな制汗剤の香り、衣擦れの音、身動きの取れない硬い椅子、ひそひそ声、あたまがぼーっとしてくる。 私は眠るわけにはいかない。 真面目な私は眠るわけにはいかない。 私は恵まれた子供だった。 微笑んでさえいれば、なんでも与えられるこ