見出し画像

雲の中のマンゴー|#17 目の調子はどうだ?

この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。

Novel model Mango Kawamura
Author Toshikazu Goto

★前回はこちら
★最初から読む

第17話 「第3章~その5~」

数日後
登とサワムラ社員との亀裂が深くなり、それを案じた黒岩が久しぶりに品質管理センターに現れた。

「よう!みんな元気か。」

「玄さん!久しぶりです。真っ黒に日焼けしてますね。」
「あれ、腰どうしたんですか?」

「あぁ、これな。畑作業でひねってしまってね、まぁすぐに良くなると医者には言われているんだ。心配してくれてありがとう。ところで、マツ。おまえ、社長とやりあったんだってな。」

「あっ、社長から聞いたんですか。」
松田は心配そうな顔をする。

「あぁ、社長だいぶ落ち込んでいたな。」

「すみません、玄さんに気を使わせちゃって。しかし今、鈴森自動車の小型4WD車用のセンサーの納品が山場を迎えているんですよ。社長もこのことは承知のはずなのに、農業を手伝ってほしいっておかしくないですか?そもそも、なんでマンゴー栽培なんですか。」

「そうだな。実は、マンゴー栽培のこと当面はサワムラと切り離して考えたほうが良いと社長に言ったのは私なんだ。そのまま、皆にあまり深く話すことなく今に来てしまった。それが原因でお前たちに不信感を与えてしまっていたのかもしれない、申し訳ない。」

「まぁ... そうなんですか。。」

「マツ。お前、目の調子はどうだ?」

「まぁ、年相応ですかね。さすがに細かい基盤作業や検査データ集計は難しくなってきていますよ。でも、私の分は若手に頑張ってもらっています。」

「それなんだよ理由は、まぁ理由の一つだけど。サワムラが新卒採用をここ10年ぐらいしていないのは知っているよな?そのまま社員の平均年齢は上がってきている、皆一応に年を重ねているワケだ。お前たちのやっているセンサー技術は、年々高度化して検査技術もコンピューター化されてきてはいるが、要所となる作業は人間がやらなくてはならない。要は目が重要だ。これはしばらく続くだろう。」

「一体どういうことですか?」
松田は不思議そうな顔をしている。

「高齢化、体力低下、人材不足、第二の人生、副業、癒し、継続雇用などなど。サワムラに限らず日本のモノづくりの現場は、どこも同じような課題を抱えている。登くんは、いや社長は、我々の未来のために何かをしなくてはならない、新しいチャレンジを今しなくてはならないという思いで、農業分野への進出を決めたんだ。中でも工業ノウハウを生かせる可能性があり、付加価値の高い作物であるマンゴー栽培をやることにしたんだ。」

「....そうなんですか。でもそんなコトを急に聞かされても。。しかし、どうしてそれを早く言ってくれないんですか!」

「まぁまぁ、そう熱くなるな。理想や理念がどんなに素晴らしくても、どうなるか分からない現状では、まだ皆に話すのは早いと判断したんだよ。なぁマツ、許してくれよ。」

「玄さん、何年一緒に釜の飯を食ってきたと思ってるんですか。全く水臭いですよホント。。そうならそうと社長もそう話してくれればいいのに。うちの嫁にも相談できるじゃないですか!」ブツブツブツ....

「そうだな、そうだよな ..笑。家族だもんなぁ、みんな。」

#18に続く。


サポート頂ければ、そのお金で世界中のマンゴーを食べ比べます。いや、本当はハウスの新たな設備「防虫や温度管理」導入の軍資金にします。