ル・コルビュジエ 《多数のオブジェのある静物》

なんだか可愛い、
母がそう言って私に額絵を買ってくれた。

本当は私は、
隣に売ってたギターが描かれている方が好きだったけど。
買ってもらうのだから仕方ない。

新しい家具の代わりに、
無機的で無駄のない、純粋たるコルビュジエの精神を私の部屋に取り入れられたら。

でもなんだか持ち帰ったら、
部屋に飾るのが怖くなった。

真っ白な私の部屋の壁は壁紙が剥がれた跡があって、
幾つかの国のポストカードが統一性なく飾られている。

よれたシーツの上には散らばった読みかけの文庫本と先月の雑誌。
床には脱ぎっぱなしのハイカットジーンズと革ベルト。

この絵を飾ったら、
私の生活の余分を失っていってしまいそうで怖かった。
迷いに迷って、しばらくは自室の扉の外に飾ることにした。

購入してから1週間、
突如この絵を注視してみたくなった。

この絵で一番印象的なのは真ん中左側に描かれている大きめの瓶。
瓶の口と底は、
それぞれ前上からと真下からの見た目を一つの瓶に共存させている。
キュビズム的。

左にはうちのスターチスを入れているのとほぼ同型の花瓶があって、
右端にも二本ほど瓶がある。
うちの花瓶と比べたらコルビュジエのはなんだか不均等な仕上がり。
これらの瓶は真ん中のとは異なって、真横から見たまんまに描かれている。

キュビズム風の瓶の透けた先にネジ?パイプ?ソファ?鍋?が混在してて、
左の花瓶の中にはサイコロが見える。

さっきは気づかなかったけど、
いくつかの瓶にはコルクがささってる。

ふと、地下がある。
これは家?無機質な四角い家みたいだ。

透けた先にあるパイプは実はちょん切られてて目みたいで奇妙。
二つあるから尚更奇妙。

トマトスープがはいった羊型の食器、
逆さに落ちるコーヒーカップからはコーヒーこぼれている。
両方地下にあるよう。

真ん中右のほう、
突如として肉体っぽい、
有機的な乳白色の突起が隠されているのを認めた。
隠されてる、
でもなんだか主張している気がする。
私に気づいて!

波打つように切り取られた空間。
グレーの背景が全体の雰囲気を生んでいるんだろう。

左上にはポット?
再び現れる有機的な物体たち、
真ん中左あたりに緑色の苔をまとって、
丸みを帯びた物がみえる。
近くのちょん切りパイプの目も同じ色だから一つの生き物みたいだ。

全体は平面だけど、
時折影を持つものがある。
光を得て三次元的リアルを写してる。

やっと部屋に飾れる気がしてきた。


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