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構成読み解きについて

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キリスト教的作品リンク

今日の世界は西洋文明が中心にあります。西洋文明はキリスト教とギリシャ文化の融合したものです。 ギリシャ文化は多神教ですから、我々にもさほど理解が難しくない。問題はキリスト教です。西洋人はキリスト教を説明できず、日本人はキリスト教を理解しにくい。 西洋文明の中の人は、なにしろずっと世界覇権の中に居るわけですから、自分たちが世界の中心に居るわけで、周辺民族の気持ちになることなんてできやしません。だからキリスト教を端的に説明できません。それで自分が濃いクリスチャンだと気づかずに

構成読み解き概論

最近体力的にきつくて読み解きの更新が滞りがちです。しかしそれならそれで、一度落ち着いて今までの内容をまとめなおしてみようと考えました。 1、なぜ構成読み解きが必要か100倍の非効率 どうも文学と言語学は関係ありそうな気がして、先日図書館でチョムスキーの「統辞構造論」を借りてきました。難しくてさっぱり理解できません。20ページ読んで止めました。それより前に、ある人から「あなたの考え方は構造主義に近いのではないか」みたいなことを言われて、気になってレヴィ=ストロースの「悲しき

時系列倒置の研究

時系列倒置は物語の重要な技術ですが、よく調べるとなかなか奥が深いようです。今まで章立て表作った作品のうち倒置作品を調べてみます。 番外扱いになりますが、ギリシャ悲劇の「オイディプス王」も研究してみました。事件の叙述の順序を倒置させています。戦略的作品です。

時系列倒置の研究 7・「こころ」【夏目漱石】

歴史解説はこちらです。 本作は3部に分かれていまして 第一部と第三部が対になっています。 反復構成と私は呼んでいまして、太宰治の「走れメロス」「斜陽」、三島由紀夫の「暁の寺」も同じ反復構成です。 私がこれまで調べた結果では、物語はふつうの三幕的構成か、対称構成か、反復構成になります。もっとも調査例が少なすぎてまだ仮説の域を出ていません。 小説の構造については、研究している人がほとんどおらず、かろうじてハリウッド映画方式の三幕構成のマニュアル本がいつくか出版されているだ

時系列倒置の研究 6・「彼岸過迄」【夏目漱石】

作品の解説はこちらです。 作品はこういう章立てです。 前半と後半が対称になっています。 ところが、後半は主人公田川が活動するわけではありません。単にいろいろな話を聞くだけです。 話の内容は、 第四章雨の降る日:幼子宵子が死んだ話 第五章須永の話:須永と千代子のつかず離れずの男女関係 第六章松本の話:須永の出生の秘密、須永の旅の話 なのですが、これらいずれも物語の冒頭より過去の話です。 となりますと、物語を時系列として整理すると以下になります。 奇抜な作品です。冒険大好

時系列倒置の研究 5・「イワン・イリイチの死」【トルストイ】

作品の解説はこちらです。 最初から恐縮ですが、書くことありません。時系列倒置の究極シンプルスタイルです。 という時系列を としただけです。倒置回数1回。トルストイという人は大貴族の生まれです。いいところのボンです。いいところのボンの最大の美点は、いらんことをしないことです。生まれが悪いほどいらんことをします。無駄にこねくり回して結果を台無しにします。差別ではありません。残酷な現実です。トルストイはいいところのボンだから究極シンプル倒置ひとつで完成作にできる。人間苦労して

時系列倒置の研究 4・「パルプ・フィクション」

作品の解説はこちらです。 時系列倒置作品の代表格です。 三部構成こんな構成になっています。 タイトルだけではわかりにくいので、内容注釈加えます。 つまりこういう構成です。 時系列で並べ直すとこうなります。 実は1〜4は連続しています。 まとめますと、 こうなります。だいたい同じ量の3つの話題です。並べ替えて見てみると、作品主題は明快になります。 裏切り、信頼、忠誠心と、人助けです。 ジュールスとヴィンセントは裏切り者のブレットを殺しますが、 「裏切り者を

時系列倒置の研究 3・「ゴッドファーザーⅡ」

実は倒置は少なめ作品の解説はこちらです。 前々回の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」 は、 あからさまに本作の影響下です。本作の昔のニューヨーク 「ワンス」の昔のニューヨーク 本作の出来を基準にワンスが作られているのがよくわかります。日本人的にはだからどうなんだという感じですが、アメリカ人にはたいそう興味をそそられる絵なのかもしれません。 このシーリズは時系列倒置の研究なのですがこの作品は、時系列はあんまり倒置していません。 を時系列通りに並べ直すと

時系列倒置の研究 2・「市民ケーン」

映画史上最高傑作とも言われる(そうは思いませんけど)「市民ケーン」の時系列倒置の研究です。作品そのものの解説はこちらどうぞ。 枠物語本作は枠物語です。 最初にケーンが死に(これは事実)、ケーンの生涯をまとめたニュース映画の試写があり、しかしニュース映画として十分な出来ではないから記者たちが関係者に話を聞いて回ります。取材した話の内容は映像で描かれます。取材した話の内容の映像が本編で、ニュース映画と記者が駆けずり回る様は、枠に該当します。青の部分が枠です。 ところでニュー

時系列倒置の研究 1・「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

時系列グジャグジャ系の物語の研究をします。最初に取り上げるのは先日読解をした「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」です。 倒置回数本作の構成はこうなっています。 時系列通りに組み替えると こうなります。ここだけの倒置回数は5です。 倒置回数というのは、「最低何回操作をすれば元の順序に戻るか」です。 1〜4を上にあげて、末尾の5を、冒頭の5とドッキングすればよいです。ところが冒頭の5の中身にも倒置が含まれています。冒頭のみ表にするとこうなっています。 イブ射殺

見るだけで「死物」

黒井さんの批評に答えての記事・第二弾です。 前回はこちらです。 北大路魯山人が小林秀雄宅でいい鉄瓶があるのを発見しました。素晴らしかったので譲ってくれと交渉、小林は買ったばかりだからとしぶります。そこを押し切って魯山人は自宅に持って帰ります。 その後小林が魯山人宅にゆくと、譲った鉄瓶がゴミのように転がっています。当然小林は怒りました。あとで魯山人笑っていわく、 「一晩かけてじっくり見たから、あれはもう死物だよ」 なんか無茶苦茶な話なのですが、意味が分かってしまうのがなさ

空海の錯誤

黒井さんの批評に答えての記事です。 どうも漱石やりすぎて調子が狂いまして本人に会いたくなったわけですが、実は情が移るというか、作家が近くなりすぎる現象は前からありまして、「斜陽」をやっていたときは太宰が自宅に常駐しておりました。畳に座って、落ち着き無くそわそわしています。しばらくそわそわしていて、突然考え始めます。すると全く動かなくなります。その時太宰の目は落ち窪んで真っ黒な穴のようになります。ああこの人はいかん人だなあ、と思いました。現物に近寄っちゃいかん。静かな殺人鬼だ

作品構成についての研究3

前回はこちら これまでの考察で「三幕構成」を基本として考えているが、よく考えたら私は、肝心のベーシックな三幕構成についてよく知らなかった。まずは参考文献を読んでしっかり理解する必要があるのだが、そんなスマートなアプローチをしていいのは平成以降の連中だけだ。昭和おじさんはこんな時、特攻隊よろしく体当たり攻撃をしなければならない。 だからテスト用に三幕構成作品書いてみた。一応wikiは参照した。 三幕構成桃太郎 【第一幕】 (誕生:オープニング) 裂帛の気合と共に振り下ろさ

作品構成についての研究2

前回はこちら 鏡像構成と 反復構成で 比較した場合、 鏡像構成は内面的ドラマになり、 反復構成は外交的、政治的になる。ということまでなんとなくわかったが、あくまでなんとなくでしかない。 ほかにどういう形式が文学に存在するのか、調査が進んでいないから、データーが不足しすぎている。手がかりが少ない。 今現在私が判別できる形式は、 普通の三幕構成:ABC 反復構成:ABCABC 鏡像構成:ABCBA 以下特例として ロンド形式:ABACABA(富嶽百景) ソナタ形式: