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時系列倒置の研究 3・「ゴッドファーザーⅡ」

実は倒置は少なめ

作品の解説はこちらです。

前々回の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」 は、

あからさまに本作の影響下です。本作の昔のニューヨーク

「ワンス」の昔のニューヨーク

本作の出来を基準にワンスが作られているのがよくわかります。日本人的にはだからどうなんだという感じですが、アメリカ人にはたいそう興味をそそられる絵なのかもしれません。
このシーリズは時系列倒置の研究なのですがこの作品は、時系列はあんまり倒置していません。

を時系列通りに並べ直すと

となります。元の表から中間過去を除くと、

過去と現在が交互に出現しているだけです。当初私は、時系列のグチャグチャした作品の形式を研究しようとはじめたのですが、ここにきてようやく、時系列グチャグチャと時系列倒置は少々違うことに気が付きました。手探りで進んでいて極めて効率悪いのですが、研究というのはこういうもんでして、グネグネするのが宿命なのです。
話戻して本作も時系列はグチャグチャです。でも倒置は非常に少ない。前回の「市民ケーン」もさのみ倒置はしていませんでした。時系列が乱れているからといって、倒置ものと単純に考えてはいけないようです。

本作は過去と現在が交互に出現します。この時間交互は、空間交互に置き換えることも可能です。実際本作でも、時間も違いますが空間も別の場所になっています。こういう物語技法もあるということですね。それと時系列倒置はまた別です。時間交互でもある程度時系列グチャグチャ感は出ます。でも本作の場合、

過去も現在も、時系列倒置はしていない。交互に、しかしながら順序通りに並んでいます。倒置と言えるのはただ一点、中間過去の真珠湾奇襲の日のみです。中間過去が本作の最大の主張ですから、最も強調したい部分を倒置していると言えます。「ワンス」と同じく強調のための倒置です。一応倒置回数数えると6回になりまして、「ワンス」より少し少ないくらいなのですが、うち5回はただの時間交互です。

仮に

という構成にしても、やはり映画の主張としてはかわりません。じゃあ交互構成にしたのはなぜなのか。私には過去と現在は、さほど上手く行っていない反復構成に思えます。反復構成、つまり過去と現在を対比させたい。それを強調したくて時間交互にした。

と考えると、後継作品である「ワンス」の原案が反復構成だったと思えることと、整合します。

ユダヤとイタリアと日本

レオーネ監督作品
「ウェスタン」1968年・ラスベガス創生史
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」 1984年・ユダヤ、イタリア連合史

コッポラ監督作品
「ゴッドファーザー」1972年
「ゴッドファーザーⅡ」1974年

なのですが、ラスベガスを作ったのはベンジャミン・バグジー・シーゲルと言う人で、バグジーとは(バグは虫ですから)害虫です。あだ名です。ゴッドファーザー1の

この人物のモデルです。ユダヤ系です。
ところで本作「ゴッドファーザーⅡ」の悪役は、彼の友人というか師匠でして、

もちろんユダヤ系です。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」でヌードルスたちと抗争くりひろげるユダヤ系ギャングも、

バグジーと名付けられていました。上記4作品、全て結びついているのです。レオーネはイタリア人、コッポラはイタリア系アメリカ人です。彼らだから見える風景がなにか有ったのでしょうね。裏から見るアメリカ史ですね。そしてレオーネは黒澤の「用心棒」を見て「荒野の用心棒」を作って出世し、コッポラは学生時代にノーベル賞委員会に「黒澤明にノーベル文学賞を」と手紙を出していたそうです。両方黒澤がらみですね。

言いたいのは、日本というのはアメリカにとって、かなりやっかいな国だということです。なんで黒澤が「黒澤天皇」と呼ばれて嫌われていたのか、なぜインテリほど黒澤嫌いを公言していたのか、いまとなってはよくわかります。黒澤はアメリカにとって非常に面倒くさい奴だったのですね。実際コッポラやスピルバーグ(ユダヤ系)が、晩年の黒澤を援助していました。体制内野党の裏ボスですね。でも完全無視はできない。

もしもスピルバーグの「プライベート・ライアン」が存在していなかったら、アメリカは今でも大規模な軍事行動を頻発させていたはずです。スピルバーグに手足を縛られている。そして自分で自分のちぎれた腕を持っている兵士のこの絵は無論

黒澤の「乱」の影響です。

アメリカ体制側視点から見れば、黒澤は実に面倒な奴だったのです。今やイギリスでもそうかもしれません。

カズオ・イシグロの肝いりで、黒澤の「生きる」のリメイクです。「志村喬のかわりに笠智衆が演じたら?」というコンセプトだそうで、実際笠智衆タイプの主演使っています。

次回は「パルプ・フィクション」の予定です。

昔の記事に加筆したもの再掲します。


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