【短編小説】8.おちてゆくせかい【その角を通り越して。】
ろうそくの香りではない。
嗅いだことのない、濃厚な香りだ。
あの小人を探すがどこにもいない。
あいつが何かをしたに違いない。
ぐるりと部屋を見渡すと、僕はふらついてしゃがみ込んでしまった。
部屋全体が熱を持って、気怠い空気に包まれているような。
そんな感覚がして、僕の頭もいつの間にか回らなくなっていた。
だけど。
身体が重いのに心地よい。
と。
吸血鬼の小人の声が頭に響いた。
「ただの人間はこれで終わり。どうなるかはお前次第だよ」
もう目を開けていられない。
頭を抱え込む。
目の前が真っ暗になり、体の力が一気に抜けていく。
ここはおばあちゃんと暮らしていたあの山小屋で、
床に倒れ込むはずなのに、
力の抜けた僕の体は、どこまでもどこまでも落ちて行った。
次第に気が遠くなる。
ここは、どこだ…
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