見出し画像

「心地のいい線」を探すように生きる

『プロフェッショナル 仕事の流儀』や『情熱大陸』が好きだ。

特に93歳現役でササ餅をつくり続ける、桑田ミサオさんの回は何度も見返すほど好き。

60歳で保育所の用務員さんの仕事を定年退職後、ササ餅をつくりはじめ、75歳で起業。キャリアは30年を超える。

自分のような若造が「今さら始めても遅い」なんて考えていたことが恥ずかしくなり、あわててプログラミングの勉強を始めた。


「これだ!」という仕事をみつけたい

昔から「プロフェッショナル」とか「職人」のような生き方に憧れていた。かれらみたいに一生続けたいと強く思えるような「これだ!」という何かがほしかった。

ミサオさんのように、60歳を超えて「これだ!」というものが見つかる人もいることは勇気づけられるが、でもできれば僕は、今すぐにそれがほしい。そんな焦りがあった。

小さい頃から、ジャンプで、アニメで、ドラマで、学校で、「ひとつのことに夢中になるのはカッコいい」と教えられ、育ってきた。

でも、物語の主人公たちみたいに、何かひとつのことに打ち込めているような、時間が惜しいというような感覚が一向にわからなかった。

それが見つかっていない人生は、つまり準備期間か何かなのだろうか?いつまでこの準備期間は続くのだろうか?もしかして準備期間だけで一生が終わるなんてこともあるのだろうか?

アラサーになってもそんなことばっかり考えていたし、何なら未だに「これだ!」というものはみつかってはいない。相変わらず、やりたいことよりも、めんどくさいことの方が多い。

それでも以前のように焦らなくなったのは、「これだ!」という何かは、どうやら探して見つけるものではないらしい、ということがわかってきたからかもしれない。


僕はそれを、パートナーの働き方から学ぶことができた。

彼女は僕のように「じぶんのやりたいことって何なのだろう」とはあまり考えない。それなのに彼女は、毎日楽しそうに働きながらファンを増やし、ますます「これだ!」という働き方に近づいていっているように見える。


自分でも想像できないやり方で理想を叶える

彼女は今、「ねこのクッキー缶職人」だ。

画像1


彼女は料理が上手だった。これは商売にできちゃいますよ、できたらいいね、1階がカフェで、2階に住むとか楽しそうだね、でもやっぱり飲食店を経営するのって大変そうだよね……なんて想像をふくらませたりしていたものだが、あるとき、「レンタルカフェ」という場所貸しのサービスがあるのを知り、ためしに月に1回、そこを借りてカフェをやってみることにした。

画像8


月1回程度だったけど、これで「飲食店の経営」がどういうものか、かなり実感を伴って知ることができた。1日に1万円の利益を出すことの大変さ。仕込み入れたら1日の営業のために3日は必要。天気の影響えげつない。などなど。

飲食店でバイトをしたこともあったから、その大変さは想像できていたつもりだったし、その上でなんとかなると思っていたけど、自分たちで値段を決め、料理を仕込み、集客して、というところまで全部やってみて、「これを毎日やるとか正直マジでキツイ」ということを、身体で理解することができた。

画像9


でもカフェで料理を美味しいといってもらえるのはとても嬉しかったらしく、月1程度のペースでカフェは続けていたところ、カフェに来てくれた人から、イベントのケータリングなどを頼まれるようになった。

画像2


画像3


さらにはイベントへの出店のお声もかけてもらえるようになり、よりたくさんの人に知ってもらえる機会が増えた。

画像4


画像5


気づけば、彼女は料理が仕事になっていた。


最初は「料理を仕事にする=飲食店で働くor自分で経営する」ぐらいしか思いつかなかった。しかしまさか、こういう方法があったとは。

カフェとかやってみたいねーと話しているだけでは、この選択肢に気づけなかったと思う。月1でカフェをやり続けたからこそ発見できた選択肢だった。


しかし新型コロナの影響で、ケータリングやカフェの仕事が突然、すべてなくなってしまった。


そこで彼女は、お菓子の通販をはじめた。webデザインの仕事で身につけたイラレとフォトショのスキルで、かわいいねこのアイシングクッキーをつくった。

画像6


webデザインの仕事で身につけたイラレとフォトショのスキルで、クッキー缶のデザインも自分で手掛けた。

画像7


月1のカフェやケータリングやイベントへの出店は、イベント当日に合わせて大量の料理を用意する必要がある。仕込みのために数日前から徹夜覚悟で準備が必要だ。でも通販なら自分のペースで作れた。彼女にはこっちの方が向いているようだった。

これも、とりあえずやってみたからこそ気づけたことだ。



下書きをせず、いきなり線を書く生き方

彼女はいつも、心地のいい線を探すように生きている。

彼女はイラストを描くときに、下書きをしない。ペジェ曲線というのを使って、曲線のカーブをマウスで微調整しながら絵を完成させていく。


『浦沢直樹の漫勉』に登場していた藤田和日郎先生が、下書きほとんどなしでいきなりペンを入れ、ホワイトでガシガシ修正しながら絵を完成に近づけていくスタイルが業界を震撼させた。この手法と似ている。

ーあのホワイト(修正液)、魔法の道具ですか?(浦沢)
ー魔法の道具っていうか、こっちが筆記具っていう感じです。要するに、ホワイトとペンの両方でペン入れしていくわけです。線を削って成形している感じが、自分は好きなんですよね。(藤田)


こちらは放送を見て騒然となるTwitterの様子


いきなり本番の線を引いて、それを目でみて、感じとり、自分の中にあるイメージとの「ズレ」を微調整しながら完成を目指す、という創作方法。

ああ、こういう生き方っていいなぁ、と思った。


"好きなこと"と"得意なこと"と"求められること"の交点=天職 に接近していく

彼女は「自分は何が好きなのか」ということをあまり深く考えない。あまり下書きをしない。

好きそうなこと、できそうなことをまずは仕事にしてみる。売ってみる。いきなり本番の線を引く。

料理は好きだ、月1でカフェをやってみよう。やってみたらちょっと思ってた以上に大変だった。でもときどきカフェをやるのは楽しいから続けよう。そしたらケータリングの仕事が生まれた。楽しかったけどコロナで需要がなくなってしまった。だったらステイホームを楽しむお手伝いとして、通販で買えるクッキーはどうだろう。とりあえずつくってみよう。という感じだ。

本番に身を置いて初めて感じられる「肉体が感じる実感」と、実際にお金をもらうことで得られるお客さんからの反応を肌で感じながら、「これだ!」という気持ちのいい関係性がみつかるまで、何度も微調整を繰り返す。

そうやって、"好きなこと"と"得意なこと"と"求められること"の交点=天職に接近してきたのだ。


本番に身をおくことで「体感覚」の情報を得る

自分の天職がわからない、自分の好きなことがわからない。そういう時期は誰にでもあると思う。

そういうときこそ、いきなり本番の線を引いてみる。考えるのではなく、想像するのではなく、とりあえず本番に身を置いてみる。感じてから考える。感じながら考える。

本番で感じる体感覚と、社会からのレスポンス。これらは想像では得られない情報だ。本番に身を置き、つねにこれらの情報を取り込みながら考え、行動を微調整していると、当初は想像すらしなかったような選択肢が向こうからやってくる。


「これだ!」という何かは、探してみつけるものではなかった。「これだった!」を積み重ね、組み合わせながら、長い時間をかけてつくりあげていくものだったのだ。




CM

2021年1月30日の土曜日に、弊社で開発、提供しているタスク管理アプリTaskChute Cloudを使った、習慣の作り方講座をオンラインで実施します。

TaskChute Cloudをご利用いただいている方なら無料で参加できます。



読みたい本がたくさんあります。