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10歳の娘、お子様メニューが恥ずかしくなったらしい。

#20240317-375

2024年3月17日(日)
 ノコ(娘小4)の習い事が終わるのが13時。
 帰って家で昼食となると、14時になってしまう。さすがのノコも空腹を訴えるので、外食と決めている。
 「今日は、なに食べるの?」
 このところ、ファストフード店が続いていた。今日もそうかと思いきや、ノコが体を上下に揺らして叫んだ。
 「もう決めてある! パンケーキ!
 ファミリーレストランファミレスのお子様メニューにするという。

 休日のランチは遅くなりがちなのか、13時を過ぎているのに店内は混んでいた。
 家族連れが多い。
 もう決まっているノコはいそいそとタブレットをタッチし、注文を厨房へ飛ばす。食材の好き嫌いは少ないのだが、ノコが好むファストフード店やファミレスにはどうも私の食べたいものが少ない。あちこち画面を触れながら、どれにしようかと悩む。
 隣のテーブルに家族が案内された。父、母に子ども2人。4歳と――もっと幼い2歳くらいだろうか。料理がくるまで手持ち無沙汰なノコはじっとその家族を見つめた。

 「これ! これがいい!」
 4歳くらいの男の子がタブレット画面を指差した。
 「パンケーキのセットね。じゃあ、ママはこれにしようかな。それと単品で……」
 慣れた手つきで母親がタブレットを操作する。
 ノコが目を見開き、私を見た。
 「私と同じのだ」
 ノコのパンケーキが先に運ばれてきた。メイプルシロップをたっぷりかけた上にチョコペンでうねうねと線を描く。それをスプーンでべったりと伸ばす。甘さに甘さを加え、食事というよりおやつではないか、と思うが、ノコが食べたいというのだから何もいうまい。
 完食するのなら「よし」の精神だ。
 ノコはおまけについてきたキャラクターのシールをおざなりに紙面に貼る。10歳になったノコは特に興味もなく、楽しそうに貼るわけでもない。このままゴミ箱行きだとわかる。
 隣のテーブルにもパンケーキが届いた。
 男の子はチョコペンを手に取るが、パンケーキ以外のところにも勢いよくチョコの線を描いてしまう。母親がテーブルを拭くあいだに、今度はメイプルシロップが開かないと騒ぐ。お兄ちゃんが賑やかだからか、下の子も子ども用の椅子の上でじたばたと両手足を振っている。母親が慌ててコップなどを移動させた。
 「あ! いいこと考えた!
 チョコがついたままであろう手で男の子が叫び、シールを次から次へとはがしはじめた。
 「全然いいことじゃないし……」
 ちろりと男の子へ目をやったノコがつぶやく。
 そして、深くため息をついた。
 「なんか、私と同じことやったり、いったりしてる!」
 思わず、吹き出しそうになってしまう。
 そうなのだ。
 ノコも「いいこと考えた」とよくいう。そして、子どもの発想の芽を摘むわけではないが、大抵それは大人から見ればいいことではなく、厄介なことなのだ。
 勢いよく皿の上のパンケーキをノコは頬張った。
 「なんか、なんか、恥ずかしくなってきた!

 小さなパンケーキ2枚に一口ゼリー3個、枝豆、ドリンクバー。
 「ママママ、まだ何か食べたい」
 食の細かったノコだが、ここ最近急に食べる量が増えてきた。以前は、ごくたまに心配になるほど食べる日もあったが、その後数日間は食べない日が続くと波があった。食べることを拒んで、1食2食抜くことも珍しくなかった。
 「お子様メニューで足りないのなら、そろそろ普通に大人のメニューにしたほうがいいんじゃない? おまけが欲しいわけじゃないんでしょ」
 ノコは首をすくめ、笑った。
 「そうする。もう5年生になるし」
 おまけに興味がないのにおまけ付きのお子様メニューを選んだ上に、追加注文をするとなるとむしろ高くついてしまう。
 「で、何、食べるの?」
 「山盛りポテト食べたい」
 「ちょい盛りのほうでいいんじゃない?」
 「山盛り!」
 さすがに多いと思うが、いってもノコにはまだわからない。
 「じゃあ、頑張ってね」
 タッチと同時にオーダーが宙を飛んでいく。

 結局、ノコはポテトフライを食べ切ることができなかった。
 「お持ち帰りにして、夕飯に食べる」
 少し前まで無料だった持ち帰りの容器がタブレットを見ると、20円となっている。
 「20円かかるよ」
 「20円払うし」
 こうして、ノコのお小遣いは減り、本日にて残高21円となった。

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