よその家族の輪に入れるとき/入れないとき。
#20230828-211
2023年8月28日(月)
ノコ(娘小4)の習い事がある。
出発までの残り時間を告げてもなかなかノコが動かないため、目指していたバスに乗れなかった。次のバスだと到着がギリギリか、遅刻か。
そのバスにも遅れかけてバス停まで走ったら、小学校の友だちが家族と立っていた。
ノコははしゃぎ、制しても先に並んでいたその家族の一員のようにバスに乗り込んでしまった。そして、家族構成からして母親が座るであろう席にノコはさっと腰を下ろし、友だちの頭をなでまわし、話しかけ、遊びはじめた。
2人でする手遊びの歌声がノコばかりどんどん大きくなっていく。
「ノコさん、バスのなかです」
人差し指をマスクの上から口に当てて、静かにするよう伝えても声量が小さくなるのは一瞬。3秒後にはまた歌声が大きくなっていく。
どう声を掛けたら、ノコが私を睨んだりせずに理解するだろうか。
「ノコさん、バス停で並んでいた列に割り込んじゃったよね。どうしたらいいのかな」
「・・・・・・謝る」
「そうだね。謝ろうね」
終点で降りる際、ノコは謝ろうともじもじするが、私に見られたくないのだろう。先にバスを降りろと手の甲を上にしてシッシッとばかりに振り、私を追い払った。
バスを降り、電車のホームに立つ。
ノコは私に近付こうとせず、私が立っている乗車位置からドア1つ分離れたところいる。こうなると、手招きしてもノコは怒るばかりだ。目の届く範囲なのでそのままにしておく。
そうしているうちに先ほどバスで一緒になった家族もホームへやってきた。バスにはいなかった祖母らしき人がいる。夏休みだ。おそらく駅で待ち合わせて、これからどこかへお出掛けするのだろう。仲むつまじげに輪になって喋っている。
ノコは友だちの姿を見ると、またもや駆け寄ろうとした。
「ノコさん」
ノコが私を睨む。
「おばあちゃんと待ち合わせてたんだね。これからきっと家族でお出掛けなんだよ」
このいい方では、その家族に混ざってはお邪魔だということをノコは理解できない。それはわかるのだが、どういえば、ノコを不機嫌にさせずにあの輪にノコが加わってはいけないことを伝えられるのだろう。
あちらの母親がこちらに気付いた。何かいい、家族を引き連れてホームをこちらとは反対の方向へ移動していった。
ノコの混ざりたそうな気配を察したのかもしれないし、ただ乗り換えがスムーズにできる乗車位置へ移動しただけかもしれない。それは私にもわからない。
ただノコは友だちの母親がノコを見たにも関わらず、遠ざかっていくのを怪訝な顔で見つめていた。
ホームに電車がすべり込むと、ノコは私の後ろに走り寄った。
一緒に乗り込み、無言のまま私の隣に座った。習い事場所に着くまでノコは口を開かない。
私もなんていえばいいのかわからない。
楽しそうにーー家族でどこに行くんだろうねぇ。
嬉しそうにーーホームで、ママのそばにいられたね。
あちらの家族のもとへ駆けて行こうとしたことを咎めれば、ノコは怒るだろう。
里親会の旅行ではほかの家族に混ざっても、そこの親子と遊んでも何もいわれなかったのに、むしろ笑っていたのに、一夜明けたら止められる。ノコにしてみれば、その違いはわからない。
うだるほど暑いホームから空調のきいた涼しい電車に乗ったものの、頭はぼんやりしたまま考えるのをやめている。
ノコが納得できる言葉を私は見付けられずにいる。
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