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娘の画面の解像度を垣間見た夜。

#20230911-225

2023年9月11日(月)
 TVテレビが大好きなノコ(娘小4)は、やるべきこと――もっぱら学校の宿題を済ませなければTVを見られない。
 好きなら好きで、さっさと宿題に取り組めばいいのに、ノコはなかなか手をつけず後まわしにする。結果、宿題は私が忙しい夕飯を作る時刻と重なり、「わかんない」「ママ教えて」と連呼するノコに私は振り回される。

 私はあまりTVをつけない。
 残暑が厳しい今の季節であれば、エアコンの吹き出す冷風の音や冷蔵庫のコンプレッサーが唸るかすかな低音、ノートPCに向かってこの記事を書いている打鍵音。向こうのバス通りを行き交う車の音。
 そんなTVをつけたら、たちまちかき消されてしまう生活の音が私には心地よい
 少しだけ音がほしい場合は、NHKのニュースや昼過ぎに再放送している刑事系のドラマを音量をしぼって流すのがよい。ドラマはシリーズ化するほど長く続いていて、見ればおもしろいけれど、もう何回も見ているので妙なところの記憶力はいい私は犯人を覚えていたりする。だから、まるでカフェのざわつきのような感覚でドラマの音を聞き流せる。
 見たい番組は録画してあるので、ノコの就寝後に見る。
 最近、ノコのベッドへ向かう時刻がどんどん遅くなっているので、再生する頃には私の方が眠くて眠くてまともに意識を保っていられないのが悩みだ。

 ノコとしたら、宿題を終えたら好きな番組を見たいだろうが、大抵むーくん(夫)に管理される。
 TVをつけてHDハードディスクが立ち上がるまでの少しの間をノコは待てず、画面にうつったチャンネルの番組にそのまま見入ってしまう。録画再生にたどりつかない。ノコ用に録画した番組をちゃんと消化してもらわないと、HDの容量が足りなくなり、新規録画ができなくなるのだ。
 むーくんとて、仕事を終え、夕食も済み、ぼんやりTVを眺めてくつろぎたい時間帯。
 ノコしか楽しめない番組を見たくない。
 むーくんとノコ、ふたりが楽しめそうな番組が選ばれる。

 少し前までは血が出たり、痛い場面がある番組はノコが怖がるので見られなかった。
 学校でどの子も話題にしていたアニメ番組「鬼滅の刃」もちょっと前まではノコが寝てからだった。「鬼が怖い」「血が出るから嫌」といわれれば、つけるわけにもいかない。
 小学4年生の今は少しならば大丈夫だ。「鬼滅の刃」も見ている。刑事ドラマの殺人事件も残虐なシーンがなければ許容範囲だし、むーくんがいない時間帯は本人がザッピングの上、選んで見ていたりする。
 少しずつだが、ノコも幼児向けの番組から脱却しつつある。
 
 ノコとTVでドラマや映画を一緒に見る。
 映画館でも手を打ったり、思わず声が出るノコだが、外ではちょっぴり遠慮しているようだ。家では突っ込みや手を打つのはもちろん、ひっくり返って笑ったり、画面に指差して叫んだり賑やかだ。
 TVを通して気付いたことがある。
 ノコはしんみりする場面で手を打って笑ったり、反対に笑える場面で怒ったりすることがある。
 前後の関係や張られた伏線、過去とのつながり、そのキャラクターなりの心の動き。難しい言葉で意味がわからないだけでなく、それ以上に状況の理解、人の表情や声音の受け取り方がその時点だけであり、うわつらしか見ていない。本心は違うのに、過去の出来事からの流れやその場に合わせるためなどで、そうふるまうしかなかったのに、そのふるまいにしか注目していない。

 これはTVのなかだからではないだろう。
 TVのなかだからこそ、現実の人と人のやりとりでは本来知ることのできない、他者の過去の話や状況、本音まで描かれているのだ。それでもノコは思いを巡らせることができない
 ノコの世界に対する解像度の低さを垣間見た。
 こんなふうに自分の周りの出来事を見ているのならば、悲しい場面で笑ってしまったり、笑う場面で怒ってしまったりするのもわかる。
 粗い画面を見ているのならば、さまざまなことが読み取れないし、気付けないだろう。
 画面の解像度は高ければいいわけではないかもしれない。
 ノコが生きやすければ、どんな画面でもいいのだが、自分の画面がどのようなもので、自分がどのような画面を持ちたいのか。選ぶにしてもある程度の比較ができないと難しい。
 成長と経験が自然と解像度を上げていくのか。手助けが必要なのか。今は見守るだけでいいのか。

 ただ――ノコの画面が粗いことを私もむーくんも忘れちゃいけない。

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