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食べない、喋らない。~娘の口内炎①~

#20240826-451

2024年8月26日(月)夏休み38日目
 ここ数日、ノコ(娘小5)の口のなかに口内炎らしきものができて痛がっていた。
 それがおとといの晩から食事をするのを嫌がりだし、昨日の朝には食べることを拒みだした。
 「痛い」
 首を振って食卓の皿を押しやり、唇をきつく噛む。
 日曜日だったので病院には行けない。薬局で口内炎の市販薬を買って塗ってみる。
 昼食はデザートの甘いシロップのみ。果物などの酸味も染みてイヤだという。栄養ゼリー飲料を購入するが、なかなか口をつけない。
 どんなのなら食べたいか、何なら食べられるか、例を挙げて問うが首を振るばかり。
 お粥が食べられればいいのだが、ノコは日頃から好まない。
 夕飯には、ヨーグルト、バナナ、はちみつ、牛乳をブレンダーで撹拌したものをマグカップ1杯分なんとか飲んだ。

 今朝も昨夜同様のものを用意したが、飲み終えるのに1時間以上かかる。
 学校がなければ朝食に1時間2時間かけるので、これが痛いからなのか、通常運転なのかわからない。
 「病院行くよ」
 ノコが顔をしかめる。
 まる一日以上、ノコの声を聞いていない

 小児科で呼ばれると、ノコは警戒しながら診察室に入る。
 口のなかの様子を診るために、医師が舌圧子ぜつあつしを入れた。痛いといっている個所以外、また喉の奥も診るために舌を強く押されたのか、吐気をもよおし、ノコが医師の手を強く払いのけた。
 パシッと鋭い音が響く。
 咳込み、ノコは涙目で医師を睨む。喋れないからか、いつもより目つきが悪い。
 「免疫力が落ちているみたいだね。ちょっと喉の奥も赤いし」
 医師がカルテに書き込み、診察終了。

 昼食はりんごジュースをコップに半分。

 病院から帰ると、リモコンを持ち、TVテレビを指差して見たいとノコが訴えてきた。
 小学校の夏季休業日――いわゆる夏休みは月末までだが、明日から3日間午前授業がある。おそらく長期休暇で乱れた生活リズムを整えるためと宿題の提出、学校に置いておく防災頭巾や道具箱などを少しずつ運ぶためだろう。
 「学校の準備をしてからね」
 プリントを見ながら、ランドセルに持ち物を入れていたノコが急に手と首を横に振りはじめた。ランドセルのなかとプリントを交互に指さす。
 なにがいいたいのか、さっぱりわからない。
 「なぁに、どうしたの。いえないのなら、書いてちょうだい」
 ノコがプリントの提出する宿題を指先でバシバシと叩き、首を振っている。
 ソプラノリコーダーの練習。
 それから5冊以上の読書。
 もう宿題は終わっているといっていたのに、あぁ、小学5年生、1つずつ確認しないといけなかったか。
 リコーダーの練習用紙をペシペシと叩き、口を指さす。
 口が痛いからできないといいたいのだろう。
 「宿題は終わったっていっていたじゃない。痛いからできないのはわかるけど、それはそもそも後まわしにしていたあなたがいけないんでしょ。できなかった理由にはならないよ」
 ノコが激しくプリントと口を指さす。
 ――この口でやれっていうのか!
 まぁ、そんなところだろう。
 「先生に口でいえないのなら、紙に書いて見せなさい。でも、『痛いからできませんでした』じゃないよ、『後まわしにしたら、口内炎ができてできなくなりました』と書かないとダメよ」
 ノコが不満そうに私を睨みながら、明日学校に持っていく道具箱を床に叩きつけた。
 私は気付かない振りをする。ノコにしてほしくないふるまいには反応しない。注意したり、顔をしかめたりすれば、それをきっかけにノコは食いついてくる。
 「本は読んでいるでしょ。読書カードは書けるね。まずは、できるものを終わらせてちょうだい」
 私は夕餉の支度をすべく、キッチンに立つ。
 ノコが背後で荒れているが、喋れないのでいつもより穏やかといえば穏やかだ。


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