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くるくるくるくる歌が脳内再生。

#20230824-207

2023年8月24日(木)
 美容院には2ヶ月に1度行きたい。
 このペースを維持するならば8月上旬だが、ノコ(娘小4)が夏休みに入ってしまった。
 美容院と定期通院の病院の日は、基本「私デー」でむーくん(夫)にノコのお世話を丸投げする。用事が済んだ後もその日は夜までひとり時間。
 ふふふ、顔がにやけてしまう。
 夏休みに入ってから、むーくんの休日はノコがらみのイベントばかり。家族3人で過ごすので、美容院の予約ができなかった。それが数日前、今日の夕方にあるイベントにむーくんがノコと行ってくるといったので、いそいそと予約を入れた。
 とうに髪は限界を超えていた。ショートカットなので結ってごまかすこともできず、もさもさと膨張してしまう。白髪もだいぶ目につく。

 バスに電車と3人で乗り継ぎ、途中駅で別れた。
 私デーの日は、パパとのお留守番のご褒美としてノコにお土産を買って帰る。はじめの頃は、子ども用の指輪のセットだの可愛い文具だの雑貨だったが、喜ぶのは当日のみで即ゴミと化すので最近はもっぱら本だ。美容院の近くにノコ向けの本を扱う書店がないため、事前に用意して帰宅したら渡すようにしていたが、今日はイベントへ向かう車中で読めるよう事前に渡した。
 「じゃあね、またね。パパのいうこと、よく聞いてね」
 2人に手を振り、私は足も軽く軽く美容院へ向かった。

 今の美容院に通いはじめて、まだ1年経たない。
 髪を切るリズミカルな音は眠気を誘い、うとうとすることも多い。鏡のなかの自分をぼんやり眺めながらケープに落ちる毛束をこっそり床へ滑らせたり、美容院でしか読むことのない美容雑誌を読んだり、スマートフォンスマホが鳴ると鏡の前の棚に手を伸ばしてメッセージをチェックしたり。
 小さく流れる音楽にお客さんとの会話と決して無音ではないが、賑やかなノコがいないだけで私にとっては静寂に等しい。大人の世界だ。
 いつも同じ美容師さんにお願いしている。前回あたりからようやくお互いのことを話すようになり、雑談が増えた
 「4ヶ月の男の子がいるんですけど」
 前回は約3ヶ月前。既に産まれていたはずだが、初耳だ。
 「泣き声がすンごいんですよ。いいか、悪いか、ぼくは息子が泣いてても寝れちゃうんですけど、それがまた妻には腹立たしいみたいで」
 カラー剤を私の髪に塗りながら、美容師さんが苦笑いする。
 睡眠不足は問題だ。かなりかなり体力気力を削る。
 「共倒れは困るから、そんななかでも寝られることは貴重なんですけどね。眠いなか、あやしてる奥さんにしてみたら、グースカ寝ている夫に怒りたくなっちゃうんでしょうね」
 「いやぁ、周りが子どもがほしいなら、早く作れ作れっていっていてもピンと来なかったんですけど、年齢っていうか体力だったんですね」
 鏡のなかで私がうなずく。
 「体力です……ホーント体力
 美容師さんは百日参りのときのこと、夏休みで遊びにきた小学生の甥っ子兄弟のことなど、今までになくプライベートな話をする。子どもが生まれて、甥っ子たちに将来の息子の姿が重なるようになったらしい。
 「小学4年生のお兄ちゃんのほうなんて、もうゲームばっかりで。せっかく外でバーベキューしているのにSwitchスイッチばっかりなんです」
 携帯ゲーム機から目を離さないらしい。
 「そんなことをいいながらも、ぼくも泣きやむんで、つい絵本の読み聞かせの動画を見せちゃうんですけど。もうじーっとじーーっと見るんですよ」
 小学4年生の娘がいることは美容師さんも知っている。
 里親であることは知らない。美容師さんの頭のなかには、0歳、1歳、2歳……と育てた経験が私にあると思っている。もちろん生後4ヶ月の赤ちゃんも知っている前提で話してくる。
 里子のノコは幼稚園年長で我が家に来たため、実子のいない私は乳児を知らない
 私の経験を直接問われていないので、見聞きした話やノコを育てるなかで推測できる子育てエピソードを総動員して言葉を返す。
 ノコが繰り返し聞き、よく歌うTV番組の歌が脳内再生され、笑ってしまう。

 ――しってるふりして しったかぶり しってるふりして しったかぶり

 私の経験だとはいってないもん。

※    NHK「にほんごであそぼ」の「しったかぶり」(作詞 おおたか静流しずる

※ 「私デー」を書いた私の過去記事です。

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