ちりも積もれば、なんとやら。
#20240805-447
2024年8月5日(月)夏休み17日目
ノコ(娘小5)がなんだかおかしい。
起きてきたものの、ソファーに寝そべりなかなか着替えないのも。
時間をかけて、朝食を食べるのも。
学習塾の毎日3分の計算問題を声掛けしてもはじめないのも。
どれもこれもいつものことだし、ノコの通常運転なのだが、なにか引っ掛かる。
なにかが違う。
歌う声の張りか。
座ったまま、テーブルの下でトコトントコトンと刻むステップの調子か。
食器を洗いながら、洗濯物をたたみながら、昼食のチャーハンを作りながら、私はノコの違和感を探る。
「もー、いらない」
昼食のデザートに出した桃をノコが押しやった。
先日、むーくん(夫)の実家から送られてきた桃で、甘みは強いが、みずみずしいので口のなかがさっぱりする。食後によく合う。
「熱、測ってごらん」
私はノコに体温計を渡した。
37度1分。
たいしたことないといえば、たいしたことないが、微熱ではある。
新型コロナウイルスの流行で、毎日体温を学校や習い事先に提出することが続いた。今はそれもなくなり、プール授業の日のみになったが、おかげでノコの体温の状態がわかった。
私自身は37度1、2分ならちょっとした拍子になることがあるが、ノコはない。
麦茶を入れた水筒を用意し、ノコの額に手をあてる。
「ベッド行って、ちょっと横になりなさい」
なにか自分でも感じるところがあるのか、絶賛開口一番ヤダヤダ中のノコが「ヤダ」といわない。
「ママママ、なにかお話して。そうじゃないと、寝れない」
いやいや、本の読み聞かせをしたらかえって興奮するじゃないか。
一緒にノコの部屋に向かいながら、私はいう。
「ひと眠りしたら、読んであげる。今はまず横になって目をつぶって」
カーテンを引き、冷房をつけ、横たわったノコに薄い夏布団を掛ける。
「はい、目を閉じて。少ししたらまた様子見にくるからね」
ノコのかたちのいい額からまぶたにかけてやさしくなでる。
神妙なところが怪しい。
おかしい。
これは通常運転ではない。
あまりすぐに様子を見に行くと寝ようとしなくなるので、1時間ほど過ぎたところでノコの部屋のドアを開けた。
寝息を深くたて、眠っている。布団から出ている足にふれると、冷房がきいた部屋にも関わらず、じんと熱い。起こさないように額にふれると、やはり熱い。
居間に戻り、氷嚢を用意する。
冷却ジェル枕もいいが、最低2つはないと交換ができない。平時、待機させるには冷凍庫で場所を取る。その点、氷嚢は氷さえガンガン作ればすぐ使えるので便利だ。
氷嚢を首の後ろにあてると、うっすらとノコの目が開いた。
「熱、測ってみて」
ぼんやりとしたまま、ノコは脇の下に体温計をはさんだ。
――ピピピ。
電子音が鳴る。だるそうに渡してよこした体温計を見ると、39度。
さて! さて! さて!
時刻は16時を過ぎている。今から小児科受診は難しい。とりあえず一晩様子見か。
「熱あるからね。しっかり寝なさい。またくるからね」
私がそういい終わらないうちに、ノコはまた眠ってしまった。
寝るに限る。
私と違い、ノコはありがたいことにかなり丈夫だ。
といっても、年に1、2回は熱を出したり、咳や鼻水を垂らしたりすることはある。幸いなことに嘔吐や下痢は滅多にない。
経験が少ないからだろう、体調の変化に無頓着なところがある。
これは子どもというだけでなく、頑健な人にありがちなのだとやはり気付かないむーくんと暮らすようになって知った。小学5年生の私ならば、体調の変化を察し、それがどう悪化するか予測できていた記憶がある。
里子のノコと一緒に暮らして5年。
体調を崩すことが少ないので、こちらもなかなか経験値がたまらないが、それでも「いつもと違う」と違和感を持てるようになった。
ちりも積もれば山となるらしい。
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