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大人とは、いつもごきげんでいること。

 むかし何かで読んだお話のフレーズに、いまだに僕の心をつかんで離さない言葉がある。
 うろ覚えだけど、登場するのは確か小さな女の子とそのおばあちゃん。それはこんなやりとりだった。

女の子がおばあちゃんにききました。
「おとなになるって、どういうこと?」

すると、おばあちゃんは言いました。
「おとなになるっていうのはね、いつもごきげんでいることよ。」

 肝心の物語のほうは全然おぼえていないのに、この言葉だけはあれから僕の心のなかに棲みついている。

 それまでぼくは、大人になるためにはたくさんの「やらなければならないこと」があると思っていた。いい学校に行って、友達をたくさん作って、良い仕事に就いて、結婚して幸せな家庭をつくる。これが立派な大人だと思っていた。でも、ただ「ごきげん」でいるだけでいいんだと、なんだかほっとした。

 それ以来、僕は周りの人が「おとな」かどうかをみるようになった。

 すごい肩書を持っているけど、しかめっ面でいばっている人。みんなは憧れてるけど、おとなになれてないんだな。

 田舎のぼろ家に住んでいるごきげんなおじいさん。まちかどで買い物をしているごきげんなおばさん。普段注目されないけど、立派なおとなだ。

 そうやって「おとな」とそうではない人を注意してみていると、どこかで聞いたことのあるような言葉が腑に落ちるようになった。

ごきげんな人は、そこにいるだけでみんなを幸せにする。
ふきげんな人のイライラは、すぐにまわりに伝染していく。

 いつも「おとな」の周りには笑顔があふれて、みんな生き生きしている。
僕もおとなを目指そうと、強く思うようになった。

 ちなみに、恥ずかしながら今のところたまに僕は落ち込んだりもするし、まだまだおとなにはなれていない。ひきつづき、「おとな」に近づくように、ごきげんに暮らしていきたい。

カエル

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