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エッセイ

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エレベーター・やさしい人(中島みゆきの歌によせて)・分身の術など あれこれ
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2021年9月の記事一覧

謙遜

謙遜

夫の転勤で、私たち家族はオーストラリアと米国に十年ほど生活しました。日々の暮らしの中で、私は「国民性の違い」と言うものを色々感じました。
そのひとつに「謙遜」が挙げられると思います。私たち日本人にとっては、当たり前で美徳でもある「謙遜」ですが、彼らには通用せず、時として
奇異にうつるようなのです。

オーストラリアに引っ越した当初。三歳の娘を連れて出掛けますと、もの珍しさも手伝い、彼らは申し合わせ

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右四番小臼歯欠損

右四番小臼歯欠損

「う~ん、だいぶ歯茎の中の骨が侵食されていますねぇ。 ほら、この黒いところ、ここは骨が溶けてなくなっているところです。 だから、この歯は支えがなくてぐらぐらしている。 それに、この黒いところからばい菌が入って、炎症を起こしている。 今回腫れがひいても、またぶり返す可能性が高いですね。 抜いたほうがいいかもしれない。 使えるだけもうちょっと使ってみるか、難しいところですね」

谷川先生は、レントゲン

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みなさんに花の歌たばを!

みなさんに花の歌たばを!

note始めて二カ月になりました!皆さん、本当にありがとうございます!
書く、ということ、読んでいただける、ということで、救われてきました。
お礼にささやかですが、花の歌束、お送りします。
これからも、よろしくお願いたします🙇

梅のつぼみは白い鈴
そよ風吹けば
聞こえます
チリンチリン
ほらほら春がはじまるよ

ふんわり満開
八重桜 
空に綿菓子ひろがった
ぴーぴーぴろろ 鳥の笛
春の祭りは今

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湿ったゴツン!

湿ったゴツン!

お風呂場出口の柱に思い切り頭をぶつけてしまった。洗濯が終わり立ち上がったとき、体を出口にむけ、すっと出るつもりだったのが、向けきれていなかった。ゴツン!と鈍い音・・・強烈な痛さで座り込んだ。そっと立ち上がり、洗面所の鏡でぶつけた左目の横のあたりを見ると、額下から頬骨の上あたり、目に沿って、みごとに細長いコブができている。美女台無しだ。こんなときは冷やすしかない、父が発熱したとき用に買ってあった冷却

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たくさんなうた

たくさんなうた

金子みすゞは、大正から昭和にかけて、流れゆく日々の暮らしのなかで、ぬくもりのあるなまざしで物事を見つめ、透き通った多くの詩を残しながら、自らの意思で26歳で早世した詩人だ。

西条八十から「若き童謡詩人の中の巨星」とまで賞賛を浴びたという豊かな感性は、紡がれた言葉の確かさときらめきとをもっている。「幻の童謡詩人」と言われながら、埋もれていたみすゞの詩集が世に出されたのは、三十年ほど前であったと思う

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海がこぼれる

海がこぼれる

姉の家から、湘南の海まで歩いて15分だ。
家を出て2、3分もしないうちに、もうサーフボードを持った若者たちに出くわしたり、5分も歩けばコンビ二の前で腹ごしらえをしている姿を見かけ、一年中若者で混んでいた。

姉にはもうすぐ二番目の子供が生まれる予定で、今日が健診日、ちょうど夏休み中でごろごろしていたわたしに、長男剛を頼む、と電話がかかってきた。剛は6歳、幼稚園の年長「そらぐみ」で、最近の彼の自慢は

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ズボンの棒グラフ

ズボンの棒グラフ

今日は雨だ。閉め切った窓を通して雨音が聞こえる日は、かなり降っている。空からの雨音よりも、近くの幹線道路を走る車が、道路の水を跳ね飛ばす音の方が大きく聞こえる。5分毎に走っている電車音も混じって、雨の日は音だらけ・・・

そんななか、用事があって出かけた。もう通勤時間も過ぎていたのに、ホームには、電車を待つ人が列を作っている。上着を着ている人が多く、Tシャツだけの人は寒そうだ。ズボンの裾を濡らして

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米倉涼子は田舎のひと

米倉涼子は田舎のひと

最近、物忘れが進んできた。漢字が書けなくなったのは、PCのせい、で逃げられるが、人の名前がでてこないのは、やっぱり歳のせいだろうか?

顔ははっきり覚えているのに名前がでてこない。脳のなかに、顔を覚える領域と名前を覚える領域があって、顔の方が記憶に残りやすいのだそうだ。テレビを見ていて何度もそんなことがあり、意地でも思い出そう、脳の老化には負けないぞ、とむきになるのだが、やっぱり思い出せない。

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