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ノベルゲームを制作する同人サークルの販促アカウントです。『はらぺこあなたと』をc105にて販売予定です。

最近の記事

無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【ささやくように恋を唄う2/2】

1/2で実際に一迅プラスのページをご覧になった読者の方は既にお気づきであろうが、この作品は1〜3話を無料で公開している。 他作品が基本2話までしか公開していないのに対し、1話分多めに公開するという太っ腹な行為の裏にあるのは長寿作品且つアニメ化までされている作品ゆえの商品的価値の最大化であろうか。 商業的意図を推察しようとすればこのような思考でもあながち合点が行くように思われるが、少々私の希望を混同して言わせて貰えば、次のようなことが言えるのではないかとも考えられる。 それは

    • 無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【ささやくように恋を唄う1/2】

      先輩×後輩。 この関係性は百合において王道と言っても過言ではない。 現代百合文学の源流にして金字塔である『マリア様がみてる』の「タイが曲がっていてよ」とは、先輩後輩関係(あるいは姉妹関係)を象徴する言葉に他ならない。 愛憎渦巻く世界観の中で、純真無垢に姉を敬愛する後輩。 後輩には知り得ぬ陰鬱な過去を持ちながらも、姉として妹を導く先輩。 数多の苦難を超え、時に過去に決着を着け、育まれる二人の絆、そして慕情は百合として結実する……というシナリオは恋物語の典型にして不朽の王道

      • 無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【キミが吠えるための歌を、 3/3】

        さて、ここまで「作画」についての言及を完全にノータッチで解釈を進めてきたが(意図的ではない)、私は作画についても語りたい。 というのも、この作品の作画は個人的にドンピシャである。 繊細過ぎず粗過ぎないタッチのイラストは、彼女たちの青さ剥き出しの物語に非常にマッチしている。 中でも2話1ページ目の晴の表情は白眉である。 ユーリから「一緒にプロを目指してほしい」と言われ、当惑しながらも昂ぶる感情を抑えきれずにいる晴の恍惚とした表情から我々が感じさせられるものは、物語の始まる胎

        • 無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【キミが吠えるための歌を、 2/3】

          先の記事(1/3)を書いている途中でことである。 友人からの連絡があった。 『私の百合はお仕事です!』の11巻を読んで苦痛を受けている、という旨の連絡であった。 彼はわた百合を「可愛いタイプの地獄」「笑えないタイプのギスり方」「毒飲んでる気分」と評し、救助要請の如く私に三度連絡を入れてくる。 今なお彼は国会図書館で苦悶に苛まれ苦痛を受けているに違いない。 その様を想像するとひどく滑稽である。 それだけに留まれば彼は人畜無害な自傷癖持ちの人間でいられるのだが、「元気がな

        無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【ささやくように恋を唄う2/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【キミが吠えるための歌を、 1/3】

          認められたいという感情。 それは現代において「承認欲求」という言葉で表現され、ときに人間の邪心として扱われることも少なくはない。 然し、承認欲求は本当に邪心なのだろうか? 中学校で学修した通り、我々は社会的な生命体である。 であれば当然、社会に、社会を形成する人々に承認されなくてはならない。 でなければ人間ではなくなってしまいかねないのだから。 承認欲求が糾弾される理由として「純然であるべき行為の楽しみが冒涜されているため」といった主張が大衆的である。 行為は楽しみを

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【キミが吠えるための歌を、 1/3】

          夜は短し歩けよ乙女 読書感想 2/2

          「初めて言葉を交わしたあの日から、彼女は我が魂を鷲摑みにし、そのたぐいまれなる魅力は加茂川の源流のごとく滾々と湧き出して尽きることがない。」 「雲霞の如く発生する即席恋敵たちに私の苛立ちは募り、彼らの方を摑んで『彼女はおまえらなど眼中にない!』と宣言したくなったが、相手へ放つ毒舌の矢はより勢いを増してこちらへ跳ね返る。 『チクショウ、俺も彼女の眼中にない!』と私は呻いた。」 感想1/2で紹介した「地平線上に~」と同様、この2つの文章もまた森見節の発動であるといえよう。「加

          夜は短し歩けよ乙女 読書感想 2/2

          夜は短し歩けよ乙女 読書感想 1/2

          「敬愛する作家はいますか」と問われた際、皆さんは誰の名を挙げるだろうか。 私がイの一番に挙げる作家の一人が、森見登美彦である。 森見の小説の何がスバラシイかというと、ずばりその文調と言える。 軽やかでありながら印象的に、誇大でありながら適切に紡がれる言葉の調べはまさに「森見節」としか言い表すことが出来ぬ代物である。 私が森見登美彦を知ったのは13歳の頃であった。 担任の先生が貸してくれた森見の小説は中学生の私にとって手に余る多字長文であり、ついぞ読み終えることが出来なか

          夜は短し歩けよ乙女 読書感想 1/2

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【スピカをつかまえて2/2】

          閲覧注意 この記事では百合オタクに過ぎぬ矮小な人間が一人思うところを勝手無遠慮に吐き散らしている。 それも1・2話しか読まずに、である。 そのためこの記事では人を不愉快にさせてしまう可能性が高い。 的外れな批評は極力避けるように心がけるが、もし不快になるようであればそれは非常に申し訳ないことである。 私はこの作品の1・2話を読む中で、どうしても深く考えずにはいられない設定があった。 それは、「主人公が奨学金を手に入れるために頑張って勉強するするも、嫌いな女が1位の座に

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【スピカをつかまえて2/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【スピカをつかまえて 1/2】

          8月の末。 20℃台の夜がしれっと増え始め、夜明けがしれっと4時から4時半へと延長される。 永遠を危惧された夏が終わる。 友人が「清のバカちんが『夏は夜』とかぬかしおって、普通に考えて夏は昼やろがい」と憤っていたが、これには私も同感である。 夏は明らかに昼の顔をしている。 害意すら感じ得る熱線を全身に受け、相手不在のソロ根競べをするのも一興。 十分に熱帯を堪能した後、数秒前までの根競べを完全に忘れてクーラー下に逃げ込むのもまた一興。 とは言え平安時代には猛暑もクーラーも

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【スピカをつかまえて 1/2】

          百合アンソロジー紹介【リリーアンドアイビー】

          百合作品は連載作品のみにあらず。 百合というジャンルは遠い過去からとある文学形態と道のりを共にしてきた。 それはアンソロジー(短編作品集)である。 作品に一貫するテーマをあらかじめ設定し、そのテーマに沿った数本の作品を一冊の本にするのがアンソロジーの特徴である。 今日に至るまで数多くの作品が出版されているが、その中でも『つぼみ』や『エクレア』などは大御所作品であるため深く認知されているかもしれない。 然し傑作として歴史に名を連ねる連載作品はあれども、アンソロジーから名

          百合アンソロジー紹介【リリーアンドアイビー】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【平良深姉妹はどっちも病んでる 2/2】

          書いていて実感するのは、前回の『踊り場にスカートが鳴る』との圧倒的な差である。 前回のようにリアリティーのある作品と違って、こちらはメッセージ性などをほとんど考慮することなく、どこまでも手放しで女の子のかわいらしさに触れられる点が強みである。 こういった作品を内包して初めて、百合文学は百合文学たりえるのである。 前編では基本設定とその意外性に言及したが、後編では作中で発せられる台詞に着目していきたい。 それでは早速。 「ほぁ~ッッ!!?」 「愛を行動で示されたら 嬉

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【平良深姉妹はどっちも病んでる 2/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【平良深姉妹はどっちも病んでる 1/2】

          先日父から「社会において、人はパソコンを使えるようにならねば人として使えない」という旨の警告を受け、試しに携帯のキーボードをローマ字入力に変えてみた。 打ちにくい。 至極不全的である。 仮名ボードの場合一度のタップで1文字を出力出来るが、それがローマ字の場合単純に2倍の労力を要求されることになる。 いつか私が身体的に老い始めるとき、このような閉塞感を感じるのであろうかと思うと恐ろしい。 今から老人性振戦が起こりそうである。 前置きはさておき、『平良深姉妹はどっちも

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【平良深姉妹はどっちも病んでる 1/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートがなる 3/2】

          踊り場にスカートが鳴る2/2に目を通してくれた読者であればこの「3/2」という珍妙な文字列の意味を理解できるであろう。 自分事ながら己の計画性のなさに驚かされることが度々ある。 3/2とはまさにその表象である。 前語りが長くなってしまうと前回と同じ轍を踏むことになってしまいかねないので、 早速。 「……知ってたよ」 「ききは昔から あたまのほうが好きなこと」 ききのパートナー役である、紫苑の台詞。 「たいやきのあたまが好きかしっぽが好きか」という二元論的な議題を用いて

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートがなる 3/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートが鳴る 2/2】

          前編では物語のメッセージ性や主人公の内面的な描写などに言及したが、後半では視点を変えて主に「表現」に着目していきたい。 私は百合という文学形態を堪能するとき、人一倍に表現には真摯に向き合わねばならぬと銘じている。 百合でこそ可能な表現、百合でしかできない表現というものは確かに存在する。 この物語が男女の関係では成立しない所以を求め、 早速。 「先輩 私のパートナーになってください」 「彼女のまるでプロポーズのような言葉を 私は生涯忘れないだろうと思った」 1話冒頭か

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートが鳴る 2/2】

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートが鳴る 1/2】

          百合が読みたい。 私は四六時中そう思っている。 しかし、百合を読むには金と時間が要る。 我々は良い作品に会遇するために、出来るだけ多くの作品を読み漁さらねばならない。 依然金と時間が必要である。 そこで我々は如何にすべきか。 名答しよう。 作品に優先順位をつけるべきである。 まず様々な作品に浅く触れてみて、その中で自分の琴線に触れた作品に時間と金を十分に充てる。 そうするための場が、我々には設けられているではないか。 そう、「試し読み」ページに違いない。 私は

          無料で百合を読もうとする乞食の戯言讃歌【踊り場にスカートが鳴る 1/2】

          彼女は頭が悪いから 読了 3/3 最悪の文学的価値観

          3、最悪の文学的価値観    私はこの本を読む中で、自身の醜悪さを認識し、中程度の自己嫌悪に陥った。  そうなった原因とは何か。  それこそが当書の最悪の文学的価値観である。  約450ページある当書は、登場人物達を内面的な心情と外環境的な人間関係を至極綿密に描写した文学作品である。  主要な登場人物は中学生時点から時間をかけて描写され、その人物像がどのように形成されたのか、その人物は周囲にどのように認識されているのかという点の描写において一切の余念がない。  

          彼女は頭が悪いから 読了 3/3 最悪の文学的価値観