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【要約】この先どうなる?『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』

今回は大野和基さんの『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』を紹介します。この本は著者による8人の「世界の知のトップランナー」へのインタビューを通してこれからの世界を予測し未来への不安を軽減する目的で書かれた本です。

その8人とは『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンド氏や『サピエンス前史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏、『LIFE SHIFT』のリンダ・グラットン教授に『スーパーインテリジェンス』のニック・ボストロム氏など錚々たるメンバーです。表紙を見ただけでも興味をそそられます。

今回はそのインタビューの中でも個人的に興味深い内容をいくつか抜粋、要約して紹介します。

人口減少は喜ぶべき?

カリフォルニア大学教授のジャレド・ダイアモンド氏は日本の人口減少という問題について悪いことではなく喜ぶべきだと言っています。

その理由は資源の確保のしやすさです。これからの未来を予測する話でよく騒がれている、世界単位での水の奪い合い。気になる方は調べてもらえれば詳しくわかりますが、一説によると地球上の資源のうち淡水はわずか2.5%、そのうち飲料や農業で使えるレベルの水は全体の0.01%しかないそうです。

海水を飲み水に変える大きな技術革新がない限りこの水を奪い合う未来は見えています。そうした状況の中で、人口が少なければ少ない資源で国家を存続させられるという意味で、人口減少は喜ばしいのです。

高齢者の活用

ですが人口減少に伴って進行する高齢化は話が別です。ダイアモンド氏は日本の定年退職の制度などに対し、こう提言しています。

定年退職制という馬鹿げた制度を続けるのではなく、働き続けたいと思う高齢者の雇用機会を確保し、彼らを最大限に活用する方法を見つけるべきです。肉体労働で高齢者を雇うのではなく、管理者やアドバイザー、監督など、自我が仕事の妨げにならないところで高齢者の能力を活かせばいいのです。

高齢者のいいところは若者に比べて自我がないこと、つまりある程度目標を達成しているので野心に駆り立てられて人を踏みにじったりしないことだといいます。肉体的なデメリットを考慮したうえでこのような職の機会を増やすことが良いと語っています。

またこのテーマについてはリンダ・グラットン氏も語っており、日本が活用できていない資産として高齢者女性、そして移民を挙げています。このような大きい資産を活用する場を作り出すことが今の日本には必要なようです。

「役立たず階級」の大量発生

話は変わり、次はテクノロジーと人類についてです。ユヴァル・ノア・ハラリ氏は今後、AIをはじめとするコンピュータ技術の発展により「役立たず階級(Useless Class)」が出現すると予測しています。

もちろん家庭から見たり、個人単位などミクロの視点で見れば役立たずでないかもしれませんが、社会、経済、政治、軍事システムなどマクロの視点から見ると役立たずだといえます。なぜなら技術が発展した世界ではもはや彼らは雇用されなく、経済的価値がない状態になるからです。

ハラリ氏の専門は軍事史ということもあり、これを軍事に例えてこのように説明しています。

軍事分野では、すでにほとんどの人が役立たずになっています。二十世紀の軍隊は、何百万人の人を兵士としてリクルートする必要がありました。このようにして、第一次世界大戦や第二次世界大戦の、大軍隊が作られたのです。一方、今日の軍隊は、少数の、高度プロフェッショナル兵士と、ドローンやロボット、サイバー攻撃に精通したテクノロジストが必要になります。今後、自動化がますます進んでいくでしょう。
もし同じことが民間の経済で起きれば、何十億人という人が経済的価値を失います。

確かに昔の戦は人員で引っ張っていましたが、今はそうではありません。また技術の進歩によってドローン操縦士やプログラマーなど新しい職が生まれたとする反論もありますが、職の絶対数が減ったことに間違いはありません。

その対策としてベーシックインカムの導入が良く上げられますがハラリ氏は様々な問題点を挙げそれを否定します。人類はどうすべきなのか、ハラリ氏は狩猟民族に学ぶべきといいます。

自分たちの願望に合うように環境を変えるのではなく、自分自身を環境に適応させることです。狩猟民族は絶えず、自分たちの力では環境を変えることができない世界で生きていました。だから、現代人よりもはるかに柔軟性や適応力があります。これこそ、われわれが学びたいスキルです。

変化に柔軟であることはよく言われていますがここでも出てきました。多くの人が口を酸っぱく言うほど大事なスキルなんですね。

ポストヒューマン、成熟したAI

技術の進歩に割と悲観的なハラリ氏と対象に楽観的な考え方をするのがニック・ボストロム氏です。

汎用人工知能が実現し、ガバナンスの問題も解決できるとなるとすべての人が恩恵を受けるといいます。極端に楽観的に考えればAIは丙をのためだけに使われ、人間は煩わしい労働から解放されるシナリオは確かに想像に難くありません。しかしそんなユートピアにも問題はあります。それは、人間の労働や努力が余剰になる世界における人間の役割は何かという点です。

このような世界が実現した際には「人間とは何か」という根源的な問題に揺さぶられます。ボストロム氏はこの問題に対し次のように語っています。

一家の大黒柱になることや社会に貢献することで自尊心を得る今の人間の志向を、子どもが小さなことで喜びを得ることを奨励するような、娯楽文化を深める方向に変えていくのです。

今こそ基本に立ち戻って、本当にわれわれが欲するものは何かを考える必要があります。本当にわれわれが欲するものは何か、「すること自体が目的になっている」ことがなくなったとき、本当にしたいことは何か? こういうことは追究すべき興味深い問いだと思います。

上の言葉から、これからの人類のキーワードは「遊び」や「余暇」、「マインドフルネス」だといえそうです。個人的にはどんなシナリオが来ようと必要になってくると思います。未来が不安な方はこのキーワードについて知見を深めると多少和らぐかもしれません。

まとめ

・来る資源争奪について考えよう

・高齢者や女性に活躍の場を増やそう

・環境の変化に対応できる柔軟性を身に着けよう

・自分が本当にしたいことは何か追求しよう

以上が大野和基さんの『未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか』の紹介になります。他にも遺伝子改変についてやテクノロジーと格差、米中衝突など現在の世界を取り巻く様々な問題を扱っていますので是非読んでみてください。

最後に今回紹介した方々の著書のリンクも貼っておくので是非読んでみてください。個人的には『サピエンス全史』と『LIFE SHIFT』がすごくお勧めです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。またツイッターでは読書中の本や短い考えを発信していますのでそちらもフォローよろしくお願いします。




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