寡占なのに利益が減る?ゲーム理論 世界標準の経営理論#3
今回は入山章栄さんの『世界標準の経営理論』の中でも8章と9章にあたる、ゲーム理論について紹介します。名前だけは聞いたことがあるというゲーム理論のをわかりやすく解説されていますのでその内容を引用を交えて紹介します。
ゲーム理論とは
ゲーム理論とは、例えば「相手がある行動を取ったら、自分はどう行動するか」あるいは「自分がある行動を取ったら、それに対して相手はどう行動するか」といった、相手の行動を合理的に予想しながら、互いの意思決定・行動の相互依存関係メカニズムと、その帰結を分析するものだ。
互いの意思決定を「読み合った」結果として何が起きるかを考えるのが、競争戦略でのゲーム理論の中心課題である。
ざっくりいうと市場に2人以上プレイヤーがいて(たいていのケースは2人)、ある条件下でのそのプレイヤーたちの合理的な動きを考えるものです。囚人のジレンマなんかが良く例として出されますね。
ベルトラン競争
まずはベルトラン競争について解説します。ベルトラン競争では価格を扱う同時ゲームです。同時ゲームとはじゃんけんのようなもので、同時に選んだ行動をします。
反対にチェスのように一手づつやるゲームを逐次ゲームといいます(今回は省略します。)ちなみに価格ではなく数量を扱うクルーノー競争というものもあるのですが、これも今回は省略します。気になる方はwikiなどで調べてください。
話を戻します。まずは以下の図を見てください。
(引用:『世界標準の経営理論』)
説明します。市場にはA社とB社の2社がプレイヤーとして存在していて、双方は現状維持か価格引き下げのどちらか一方を選択できます。そして数字はその選択をした時の利益を表しています。このとき、どのような選択をすべきなのかというのがゲーム理論の基本です。
例えばA社もB社も現状維持を選択したシナリオ1だと、互いの利益は15億ドルづつになります。しかしこのとき、B社の視点から見ると、価格を引き下げたら利益が15→20になりますから、価格を引き下げるという選択をしたほうが合理的です。(シナリオ2)
というか、B社はA社がどちらの選択をしようと、価格引き下げを選択したほうが利益が高くなります(シナリオ1(15) VS シナリオ2(20))(シナリオ3(5) VS シナリオ4(7))。
このように相手の行動が何であろうと自分の行動が一つに絞りこめられる場合、それを支配戦略と呼びます。
ただ、それはA社から見ても同じなので、どちらも支配戦略をとった結果シナリオ4になります。このように双方が合理的な選択をして最終的に定まる結果のことをナッシュ均衡と呼びます。
ちなみにナッシュ均衡は必ずしも良いものとは限りません。今回のケースではシナリオ1は合計30憶ドルの利益が上げられるのに対し、ナッシュ均衡のシナリオ4は合計12億ドルです。つまり価格競争が起こり、双方の利益を削りあっているのです。
ベルトラン・パラドックス
上の例で疑問に思った方もいるかもしれませんが、ベルトラン競争下では寡占(プレイヤーが2人)なのに価格競争が起こっています。直感的にも、SCP理論でも独占に近づくほど利益を得やすいはずなのに起きてしまうこの現象をベルトラン・パラドックスといいます。
このように、本来は利益率が高いはずの寡占状態で、ベルトラン競争の結果として、完全競争と同じような水準まで利益率が下がっていくことを「ベルトラン・パラドックス」と呼ぶ。
これを避けるには、十分な差別化が重要です。なぜなら十分に差別化されていればライバルの価格に影響を受けないようになるからです。同じ業界内でも圧倒的に違えば価格の競争には巻き込まれません。
例えばスターバックスはあの空間を売っているというのは有名な話です。たとえほかのコーヒーチェーンが値下げ競争をしても、差別化ができていれば巻き込まれません。
また差別化かと思うかもしれませんが、様々な理論が結論付けるほど、差別化は重要なのです。ちなみに差別化をする上ではロジカルシンキングよりアートシンキングが有効だと最近言われています。ぜひ以下の記事も読んでみてください。
見落としている視点
しかしベルトラン・パラドックスには見落としている重大なポイントがあります。それは、1回きりのゲームという前提があるという点です。書いていてもわかりづらいので補足すると、上に出てきたA社もB社も現実的には1度きりでライバル関係が終わるという前提の下で選択をしていました。
しかし1度きりで終わるとは現実的には考えにくく、たとえ値下げした後でも来年も再来年も何回もライバル関係であると考えるほうが現実的です。
今までの、1回きりという前提のゲームを有限繰り返しゲームと呼ぶのに対し、ずっと続く関係のゲームを無限繰り返しゲームと呼びます。
ではこの無限繰り返しゲームのとき、価格競争は続くのでしょうか?もし両社が合理的なら無限に利益を落とし続けるのは非合理的だと考え、相手もそう考えているだろうと判断して価格を下げなくなるはずです。この帰結をフォーク定理と呼びます。
無限繰り返しゲームでは、これからも延々と続く関係を前提に、「互いに傷つけ合うのは合理的でないから、こちらも攻撃しないし、相手も攻撃しないだろう」という、言わば 相手を合理的に信頼する 状況が起きているのだ。
まとめ
・ゲーム理論とは相手の行動を読んで合理的に意思決定をすることについて
・やっぱり差別化が大事
・無限繰り返しゲームでは相手を合理的に信頼という状態になる
以上が入山章栄さんの『世界標準の経営理論』の、ゲーム理論についてのまとめです。逐次ゲームについてやフォーク定理の例など、かなり省いたところもありますので、疑問点等ありましたらコメントしていただくか、是非書籍を買ってみてください。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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