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ドル経済はどうなる? 1/2

先月(3月)、露のプーチン大統領は西側諸国を中心に執行されている対露制裁に言及し、この状況を『経済戦争』と称した。更に、この経済戦争がウクライナへの特別軍事作戦開始への反応として発表されたものではなく、長年に分かって繰り広げられていると主張。本当にそうなのか?少し考えてみたい。

ドル経済の現状

1944年ブレットン・ヴッズ条約締結され、IMF(国際通貨基金)、つまり米ドルを中心とした世界金融システムが誕生し、それが今までも有効で米の国力・影響力に多いに貢献している。では大所の指標を見てみるとどうか?例えば、PPP(Purchasing Power Parity 和:購買力平価)を見ると、米は中国に次いで2位ではあるものの、全体の割合は16%にも満たなくなっている(2020年CIA推定)。一方、世界各国の外貨準備高総額の59%弱を、国際取引額の40%程度を米ドルがしめる。これは何を意味するかというと、世界中の国が自国の外貨準備高を維持したり、国際取引を実施するために米ドル(若しくは比較的低金利の米国債)を調達したりしないといけない。米ドルそのものを買っても何ら設けは無いし、米国債を買っても自国の高金利国際(例:投稿時点の国債金利は、ブラジル11%強、インド7%強、メキシコ9%弱、露11%弱・・・ これに対し、米2.8%程度)を売って、損してまで米国債を買わないといけない。つまり子の仕組は、他国の成長を鈍くさせて、世界の冨が米に再配分されるように出来ている。米はこれで家計を成り立たせていると言って差し支えないだろう。

中露の台頭

上述のPPPでも触れた様に、今は世界一の購買力を誇るのは中国。実は、もう8年間もこの指標で世界一の座を維持している。貧富の格差とか、地域制とか、汚職とか、民族問題とか色々言われるけど、結果はこの通り。そして中国は減速するつもりはないだろう(当然ながら課題は山積みだが)。昨今は、中国のハイテクの開発投資も目立つがそれの8%を基礎研究にかけているし、なんなら今や新規パテント申請でも世界一位で、着実に将来を見据えた政策を実行しているのではないだろうか。それに人民元もIMFの特別引出件(SDR)の通貨バスケットにも追加され(2015年)、通貨を見ても台頭してきている。米からするとこれは勿論、懸念材料だろう。それは経済面での最大の敵としてみなされても仕方ない。

一方軍事面では、この世から米を消滅させられる国は一つ、露しかない。核弾頭の数で米を上回るのは露だけ。最新鋭の武器でも米に勝るとしたら露しかいない。これは米の専門家はちゃんと理解している筈。つまり、中露が手を組んで、脱ドルを進めると、米の国民生活水準も何もかもが著しく低下し、今までまかり通ってきた常識も通じなくなる、つまり国家存続の危機だろう。あちこちからこの2国が結託したら米を倒せてしまうと言われているのはこういうことだろう。米はこんなシナリオを想像もしたくないだろう。故に、今の様なヒステリックな態度になってしまうのだろう。だからこそ、経済戦争でまず露を倒し、その次に(武力戦争で?)中国を倒そうとしているのではないかと。

米の本当の戦争相手

実に、米にとって存続の危機と認められなければ、どんな政権だろうとどんな国だろうと付き合えると示す事例はいくらでもある。よって今回は、ウクライナなんかはただの弾丸の餌食で、米露の戦いそのものだ。そして次は中国の番なのだ(NATOのストルテンベルグ事務総長が既に中国をNATOにとっての脅威と安全保障ドクトリン内に位置付けている。)。ここを再度強調すべきだろう。

経済戦争で弾丸の餌食になる欧州

もう一つ、米露の経済戦争で弾丸の餌食になっているのは欧州なのだ。経済制裁の影響を最も受けているのは欧州なのだから。大陸側の欧州では、天然ガスが無い(若しくはあまりに高い)と、例えばドイツの産業(例えばBASF社)もそれに紐づいている下請やサービスも、肥料を作る工場も(そもそも肥料の大半を露とウクライナから買っている欧州なんだが)、従って農業も、従って食料も全て影響を受けるわけだから(ちなみに、米は露の肥料を制裁対象から外している)。

島国の英では、英中央銀行のベイリー総裁が、オイルショックぶりの危機が待ち伏せていると話している。インフレ率の急上昇電気代からガソリン代等々の上昇が既に一般消費者を苦しめているのは確かだ。例えば、英ではエネルギー会社が消費者に電気ブランケットを配賦し、エネルギー供給難を凌ごうとしている程くだらない会話になってきている。これは確かに経済危機の臭いがする。

そして本番がまだ始まってすらいない予感すらする。中央銀行の中央銀行と言われるBIS(Bank of International Settlements 和:国際決済銀行)のカルステンス総裁に言わせると、世界がもうすぐ、長くて予見不能なインフレの時代に突入するそうだ。同氏は更に、世界のサプライチェーンが変わり始め、今までの様な世界中に散らばっている構成から自前主義に移行し、この新な構成が出来上がるまで長期間を要する。一方、上述のインフレ(ドル経済のインフレ)を少しでも抑止するには利上げをせざるを得ないとも言っている。こんな状況で利上げしたら当然経済が成長どころか状況が悪化するのではないか。ウクライナはこれらの流れを加速したのかもしれないが、決して主要因とはなっていない。軽々と準備高を米に差し押さえられることを知ってしまった(例えばインドという)国は、今後もドル貯金をし続けるべきか、今一度考え直すだろう。

今日はここまで。


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