働く私をサポートしてくれる街
先日、まだ小さい子供を連れての離婚を計画している女性と、テレワークで人と会う機会が減り、気が滅入っているというシングル女性のセッションをしました。
そこで先々の話をしていて、ポイントになったのが「街」。
仕事をしながら子育てするなら、そしてシングルマザーなら、自分が留守の時間帯に子供を見てもらえる環境があるかどうかや、街の治安、使い勝手の良いスーパーやドラッグストアなどの商業施設が普段の導線上にあるか、会社までの所要時間、行政の単身子育て世帯への対応などを総合的に見て、住む場所を決める必要があるでしょう。
また、シングルで「ほぼ完全テレワーク。だけど、リアルでも人と関わりたい」人の場合は、家の周囲に仕事ができる(仕事してる人が多い)カフェや、コワーキング施設がある方がいいですよね。
近所になくても、ドア to ドアで30分以内くらいのところに、そうした施設があるとか、快適なスポーツジムがあるとか、客筋が良くて居心地のよいビストロがあるとかさ。
「ここに行けば、なんとなくの顔見知りに会える。深い話はしなくても、ちょこっと雑談できる」みたいな場所がいくつかあれば、テレワークは快適な仕事形態になると思う。
また、めっちゃ仕事が忙しいシングルや、夫婦ともに忙しい共働きで未就学児がいる方などは、生活圏内や通勤の導線上に「ほどほどの値段で、食べると気分が上がる健康的なお惣菜屋&テイクアウト可能店」のバラエティが欲しいと思うし、クリーニング店は遅くまで開いてて欲しいでしょ?
そんな感じで、ライフスタイルによって「快適な街」ってぜんぜん違うし、自分の日々の生活を「サポートしてくれる店やサービス(行政サービス含む)」があるかどうかによって、人のHappy度は大きく変わると思うんですよ。
これからは住む場所も多様化していくでしょうけど、高齢化社会だし、なかなかアップデートが進まないので、街も「働く世代が集まる活気のある街」と「高齢者ばかりの街」に二極化するような気がするんですよね。
私はいろんな街を見て歩くのも、移り住むのも好きで、文教都市、郊外ベッドタウンから東京のはずれ、クリエイターが多い街、いわゆるリゾート系の高級住宅地、急速に発展中の街などなど、あちこち住んできました。
それで、特にパンデミックになってからなんだけど、時代の変化に対応するのが早い街と、全然ついて行けない街の差が激しいなぁと思うのです。
例えば、私が絶賛コロナ中に住んでいたエリアは、テレワーク民が多かったせいか、あっという間にスーパーやグローサリー系がお惣菜とお弁当の品ぞろえを増やし、その界隈の「名店」の人気メニューやお弁当が1か所で買えるようになりました。バイヤーさん、ブラボー!!!
そこが大人気で、お昼も夕方も大繁盛。周辺のお店も負けじと頑張って、どんなに忙しい時でも、そこそこの値段で美味しい食事は保証される環境になりました。
この「忙しくても、そこそこの値段で美味しい食事が保証されていて、家事に時間がかからない環境」って、大きいと思いません?
カフェもママ友会仕様な店が多かったのに、あっという間にテレワーク仕様に。ショッピングモールのフードコートは下校後に自習する子供と退勤後のパパ、ママが待ち合わせてご飯を食べるダイニングになっていったし、なんかこう……街の「働く人(特に女性)サポート機能」が充実していたのです。
ひるがえって私の実家がある街は、現役世代の女性をサポートしてくれる店やサービスがめっちゃ少ない。女性にとって魅力が薄い。
スーパーの品ぞろえや、お惣菜&テイクアウトできるものの種類、お店の営業時間の幅、働く女性がちょこっと立ち寄って気分転換できる飲食店やカフェにヒーリングサロンの類、行政の対応とデジタル化(行政手続きって地味に時間かかるでしょ?)、カルチャー等々、いろんな意味で足らん!
隣町は若い市長に代わってから行政も変わり、続々と若い共働き世代が流入してきて、新しいお店や実験的なサービスが次々出てきてるけど、こっちは残念なムードだね……
という話を父にしたところ「え、でも、あのスーパーは22時までやってるし、飲食店は確かに少ないけど、お父さんは〇〇とか△△とか好きだよ」と、のどかな反応。
「だから22時までやってればOKって話じゃなくて、し・な・ぞ・ろ・え。トキメク商品が売られてない。そして、〇〇とか△△とか、女性がいくと、嬉々として面白くもない話を自慢気に語りかけてくるおじさんとお爺さんばかりの飲み屋に、行きたいと思うわけないでしょ!」と、私がブチ切れる展開となりました。
そして、さらに言えば、美味しく新鮮な産直店や素敵なカフェもあるにはあるのだけど、一点一点が離れているのと、営業時間が短くて、働きながらではなかなかたどり着けない。「買い物や用足しは、時間的余裕のある主婦が昼間にする」前提で、今もサービスが展開されてるのです。
(子供がいれば、主婦の時間的余裕は無いけどね)
これは以前、リゾート系の高級住宅地に住んだ時にも思ったこと。
そこに住んでいる中高年層の男性と話すと、居住満足度がとても高いのだけど、既婚女性は「こんな不便なところ……」と、吐き捨てるように言う人が多かったです。
そこは風光明媚なんだけど、バブル時代の転入者が多く、街の設計が昭和のまま。令和の最晩年でも、いろんなサービスが「夫が稼ぎ、妻は専業主婦でハウスキーパー」という前提のもとに運営されてる感じでした。
だから、気の利いたデリや半加工品のような便利な食品があまり売られていないし、飲食店は「よそゆきなお店」とおじさん向け酒場中心。
まあ、お金を持っているのはおじさんで、おじさんに決定権があるわけだから、おじさんが喜ぶ店が増えるのは当然なんですが、日常のダイニングとして使える店は少ないし、基本的に食事は自宅でイチから手作りするのが当たり前なムード。さまざまなサービスの営業時間も「働きながらどうやってその時間に行くんだ?」。
私はその当時、仕事が忙しかったので、リタイア組にはいいけど、ハウスキーパーを保持していない多忙な人には向かない街と判断して、さらに忙しくなったタイミングで都内に戻りました。
でね、その街では知り合いが結構できたんだけど、中高年層の既婚男性には「私にはここ、ちょっと不便」と話しても、ぜんっぜん理解されなかったんですよ。
三食作ると時間がかかるとか、各店舗の短い営業時間のうちに用事を済ませないといけないから仕事が片付かなくて困るとか話しても、「なんでそんなに時間がないの?」って反応。
彼らは自分で家事をしない人たちだったので、食事の準備とか、消耗品の補充とか、細かいゴミの分別にどれだけ時間がかかるのか、分からないのだと思いますが、キミらには想像力が装備されてないのか?
それとも、はなから自分と属性が違う人の話を理解する気がないのか?
そして、困ったことにそういう人たちが街の行政サービスや、商業態の根幹を担っていたりするのです。そりゃあ、変わるわけない。
ということで、私はこの間、父と話したときに、家事は時間がかかるってことが全然分かってない高級住宅地のオジたちを思い出して、イラッとしたわけです。当人たちに悪気がないのが、さらにたちが悪い。
この想像力の無さっていうのは、もうどうしようもなくて、妻が亡くなって自力で家事をせざるを得なくなるとか、店主の高齢化によりお気に入りの飲み屋が消滅するとか、人口が減少してゴミ収集の回数が減るとか、自分の身に「不便」が差し迫ってくるまで変わらないんだろうな。
でも、スピーディーな令和社会で働くものとしては、昭和につきあってQOL(クオリティオブライフ)が下がるのは勘弁。私と同じように考えている人、想像以上に多いと思うんですけど、皆さんはどうですか?
だから、これからますます「昭和なままの街」は引退した高齢者ばかりになり、働く人をサポートする要素が多い「令和シフトした街」に現役の人々が集まって、そこでまた新しいビジネスが生まれたりするんじゃないかと、私は見ています。
「昭和なままの街」にも、シニアのシニアによるシニアのための互助会的なサービス等が生まれてくれば活性化するし、次の世代や、昭和テイストが好きな若者が流入してくるかもしれないですけどね。
住む場所って大事。やっぱり人も街も、魅力が大事ですよ。
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