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【FPと一緒に考える】相談を受ける難しさ

FPの主な仕事に「相談」がありますが、これが意外と難しいんです。お金に関する個人的な相談は、どこまでプライバシーに踏み込んでいいのか。実際に相談を受けていて、モヤっとしたことはありませんか?
FPこみなみは、FPのみなさんと一緒に考えてみたいと思います。


日本FP協会大阪支部のイベント「無料個人相談会」にて

私は日本FP協会大阪支部に所属するAFP(提案書作成研修を修了した2級ファイナンシャルプランニング技能士)。最近では、大阪支部のイベント「ライフプランセミナー」「無料個人相談会」などで相談員をすることがあります。

日本FP協会大阪支部の個人相談会

個人相談会は予約制。相談員と相談補助員の2人のFPが、50分間で相談者に対応します。
元々家計運営に興味があって、FP資格を取る前から30年間で2,000件以上の「FP家計診断」を分析してきましたが、相談の経験数では、銀行や保険の窓口で毎日相談を受けている金融や保険の先輩FPにはかないません。
「こみなみさんは、すぐに補助金の話をする」と笑われながらも、相談者アンケートでは高評価を取り続けています。
これも、先輩FPのサポートがあってのことで、本当にありがたいです。

モヤモヤしてること

日本FP協会の個別相談は「相談者の利益になることを提案する」「客観的な意見を述べる」「個別商品を勧めない」「無理に提案しない」「最後は相談者の判断に任せる」などの厳しいルールをふまえた上で行います。
事前予約制なので、真剣に相談に来る人ばかりですが、源泉徴収票や保険証券などの資料を拝見しながらのプライベートなお金の相談。
アンケートは高評価ですが、時間制限があることだし、本当はどこまでアドバイスすれば、相談者に納得してもらえたのか……相談会が終わった後、モヤモヤした気分が残ることがあります。

自分なりにボーダーラインを決める

看護師FPⓇ・黒田ちはる先生

2023年3月15日に開催されたFP協会のZOOMセミナー「CFP資格の魅力と活用方法」に参加しました。講師はCFPの黒田ちはる氏。元看護師で子育てしながらFP資格を取得して、現在では医療費に悩む患者さんのお金の相談などを専門にされている方です。
お話はCFP(国際的なFP認定資格)の勉強法が中心でしたが、その中で、「相談の範囲を決める」というお話が出てきました。

「人を助けたい気持ちはわかるけれども、FPができるのは、生活困窮者支援の手前まで。家賃を滞納して家を追い出されたり、自己破産していたりする人は助けられない。心のどこかで線を引いておかないと、FP自身の心身を守ることができません」

そうなんです。
「儲けたい」より「助けたい」気持ちが強いから、FPになってるんです。
弁護士や税理士、公認会計士など、もっと儲かる資格はたくさんあります。
それに、一口に「お金の相談」といっても、「家計相談」「保険の見直し」「相続対策」「年金相談」「奨学金借入」「住宅ローン」「資産運用」「不動産投資」など、非常に範囲が広いので、どこまでアドバイスするべきなのか迷うことがあります。
黒田先生の「生活困窮者支援の手前まで」という定義は画期的だと思いました。

心の中で線を引く

X(旧Twitter)でこの話をツイートしたところ、黒田先生ご本人のアカウントから返信がありました。

『患者さんにとっても、FPが中途半端に関わることで解決が遠回りしてしまうことは不利益となります。なので、FPとして関われる部分を決めておくことがお互いにとって有益ではないかと考えながら日々取り組んでいます。』

病気で働けないことで即「生活困窮」に陥ってしまう患者さんの場合、家計を見直すことよりも、障害年金や生活保護の受給が優先。
生活困窮者支援施設で対応してもらった方が、患者さんのためにもなり、FPもムダに時間やエネルギーを費やすことがありません。
合理的だと思いました。

自分の「範囲」を決めることの難しさ

専門から相談範囲を決めるのは簡単

私は、夫の会社が倒産した時にファイナンシャルプランニングと出会い、家計再建に成功。「ライフスキルとしてのファイナンシャルプランニング(パーソナルファイナンス)」を追っているFPです。

「ライフスキルとしてのファイナンシャルプランニング」では、「チーム・リタイア」を作り、給付・補助・助成金額は年額1,000万円。3年で金融資産を600万円増やしたところ。
まだまだ勉強が必要ですね。

まだ専門分野がない時、どうする?


FPの学校に通ってFPになった私と違って、保険や銀行、士業などの仕事をしていて、仕事上必要があってFP資格を取った人は、「自分の相談範囲」について迷いがありません。
でも、「FP資格を授業の一環で取得した学生」「FP資格に興味があって独学で取得した社会人」……そんな人々には、「どんな人の相談を受けたらいいのか」「FPとして稼ぐにはどうしたらいいのか」というのは悩みの種。
黒田先生の「生活困窮者支援の手前まで」という線引きは、非常にありがたいものでした。

私は「FP資格を取って稼ぎたい」というより「FP資格と知識を活用して豊かになりたい」という意識が強く、仕事は執筆が中心。
企業年金の試算や経理事務の仕事をしていたので「ライフプランニング」分野のFPということになりますが、Web制作の仕事では「注文住宅と補助金」について執筆することが多く、福祉住環境コーディネーター2級の資格、そして、宅建士の資格を取ろうと思っています。

最初に「私の専門はこれ!」と決めて、そこだけに絞って、エネルギーと時間を投入するのもいいですが、FPの世界は変化が激しい世界。
まずは自分が興味のあるところ、得意だと思ったところから、はじめていけばいいと思います。

それでは、またお目にかかりましょう。

*ここでは、FPこみなみ(AFP認定者)が、独自の目線で、お金に関する話題について解説しています。あくまで個人的見解で、日本FP協会の見解ではないことをご了承ください。(写真:Yuka Shimamura)





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