私が「フォーチュンボックス」を通じて作りたい世界
いつもフォーチュンボックスを応援してくださる皆様、本当にありがとうございます。
たくさんの記事の中からこの記事に、そして"謎の箱"に興味を持ってくださった皆様も、ありがとうございます。
この記事では、自分の考えが流されていかないように、知らず知らず変わってしまわないように、私が「フォーチュンボックス」を通じて作りたい世界、見てみたい世界について書きました。
いつか私自身の考えが変わることは仕方がなくても、少なくとも、現時点での考えを書いておき、いつでも照らし合わせられるようにしておくことは大切だと思います。
また、フォーチュンボックスを応援しようとしてくださる方にも読んでもらえる形にしておくことには意味があると思いました。「思っている」だけではなくて、このように発信していくことで、見たい世界に近づきやすくなるとも思います。
.フォーチュンボックスとは?
「フォーチュンボックス」とは、食品や日用雑貨を中心とする平均5~8種類の商品が入っている、通販で買える"謎の箱"です。
中身として何が入っているか、購入者があらかじめ知ることはできません。リクエストなども受け付けることはありません。
果たしてこんなものが売れるのか、という疑問を抱きながらのスタートでしたが、価格は数千円~1万円程度と設定し、2017年11月の発売から累計2,200個以上を購入していただいており、少なからず需要はあったのだと確信するようになりました。
また、アンケート調査での満足度も非常に高く、一定の確率でリピートしてくださっているお客様もいます。「お客様に質の高い喜び(商品との出会い、体験)を提供する」ということを目標にしていますので、喜んでいただけることは何よりも嬉しいことです。
※起業するまで、起業してからのストーリーはこちらをお読みください
.フォーチュンボックスを通じて作りたい世界
私は「フォーチュンボックス」を通じて、「選ぶ必要がない」という価値、利便性を市場にもっと広げていきたいと考えています。
フォーチュンボックスは自分で選ばないことで、想像もしていなかった商品が自分のものとなります。偶然の恩恵、セレンディピティです。
いつもの凝り固まった消費行動パターンに変化をもたらす可能性があると思っています。
その意味で「選ばない消費」に様々なネーミングを考えました。
「フォーチュン通販(セールス)」「キュレーション通販(セールス)」「サプライズ通販(セールス)」「セレンディピティ通販(セールス)」「ミステリー通販(セールス)」「ギャンブル通販(セールス)」など。
ちょっと変わったところでは「リラックス通販(セールス)」なども。お金を出す以上、「下手な物はつかまされないぞ!」といった緊張状態での買い物へのアンチテーゼです。
フォーチュンボックスに自分で使わない物が入っていても、アレルギーなどで食べられない物が入っていても、それはそれでいい、だれかにプレゼントしたらいい、と思えるようなリラックスした状態での消費パターン(流通パターン)もあっていいと思いました。
私たちは、日々、気づかないうちに、偶然の恩恵を受けています。それは買い物、消費行動においても同じです。たとえば、ギフトとしてもらった物、使わないからと譲ってもらった物、出張先で偶然見つけた飲食店など。いつも主体性を発揮して買い物をしているわけではありません。
リクエストしたものが必ず出てくるということの恩恵は大きいですが、逆に何が入っているかわかりきった福袋などは「楽しくない」と言って買わない消費者も一定数存在するはずです。一種の安心感の中でのギャンブル、スリルを楽しみたいという消費行動と言えば納得してくださる人もいると思います。
いずれにせよ、このような「今までになかったサービス」がフォーチュンボックスであり、その市場を切り開いていき、評価の基準を作っていくのが当社の役割だと思っています。
また、後半に書きましたが、メーカーが物を作ることにもっと集中できている世界も見てみたいです。
今日の段階では、初期のテスト段階です。フォーチュンボックスの販売というビジネスモデルはしばらくプロダクトアウト型で突っ走ろうと思っていますので、必要最低限のご意見などは検討、吸収しながらも、本来の価値を変えることなく、あと1年ほどで「特定の人々の具体的な悩みを解決している」という世間の評価をもらえるようなサービスへと昇華させていきたいです。
.もっとも緊張する瞬間
事業は経営者の器を超えて大きくなることはあまりないと思いますので、「まだまだテスト段階」という考え方が知識不足、経験不足の私自身をリラックスさせてくれていますし、「お客様に質の高い喜び(商品を使った満足、体験)を提供する」というシンプルな目標(KFS)だけに集中することができます。
初期の顧客になっていただける方はたいへんありがたい存在ですし、そういう人々に「フォーチュンボックス」を届けた後に喜んでもらえない以上は、「よかったよ!(もう買わないけど)」という状態から次の段階に進んでもらえることはないと思います。
「箱を開けて、実際に商品を使ったりした後の満足」をできるだけ高めていき、「気が向いたらまた買いたい」と思ってもらえるようにすることを唯一の目標としています。
ですから、今の私がもっとも緊張するのは、フォーチュンボックスをお届けした直後です。それはお客様が自宅に届いたフォーチュンボックスを開ける瞬間でもあり、その瞬間が売り手と買い手のいずれもがもっとも緊張する瞬間だと思います。
.商品選びの指標
「お客様に質の高い喜び(商品を使った満足、体験)を提供する」こと(だけ)を目指す私にとって一番怖いのは、せっかく購入してくださったお客様をガッカリさせてしまうことです。
そのため、まずは最低限の基準を作って中身を厳選しようと決めました。
<こんな商品は売らない(7つのルール)>
・ルール1「ありふれたものは売らない」
・ルール2「品質実感が難しい、品質が低いものは売らない」
・ルール3「自己満足で熱くなって冷静になったら後悔するようなものは売らない」
・ルール4「自分が知らないだけでみんなが知っているものは売らない」
・ルール5「理由もなく売れ残りや在庫処分品は売らない」
・ルール6「法律違反や公序良俗違反になるものは売らない」
・ルール7「宗教や思想、個人的趣味が強いものは売らない」
.間違った期待をされないための工夫
フォーチュンボックスには「フォーチュンボックス No.005」というように通し番号を振っています。そして、たとえば「No.005」と「No.006」では、中身がまったく違います。
また、あまりにも中身のヒントがなさ過ぎるために、そのときに販売する「フォーチュンボックス」の特徴を私の主観で5段階評価しています。
"謎の箱"フォーチュンボックスは、中身の商品がわからないため、私が想像だにしていないような期待をされたりするおそれがあり、それが理由でガッカリされては申し訳ないという思いからの工夫です。
<フォーチュンボックスの特徴(8項目評価)>
・新体験度
新しい体験や五感の刺激、SNSでの話題性があるか、話のタネになるか
・学び度
それを使うことで知識やうんちくが増えたり子供と一緒に学んだりできるか
・レア度
限定品など入手困難な物か
・チャレンジ応援・社会貢献度
メーカーさんのチャレンジを応援するようなことや社会貢献につながるか
・実用性
目的が明確で具体的な問題や悩みを解決するために役立つ商品か
・使いやすさ
使いやすいか、特別な道具や調理器具を必要としたり、やたら大きかったり、重かったり、保管しにくかったりしないか
・プレゼントしやすさ
もし自分では絶対に使わない物であったときなどに他人にプレゼントしやすいか、その商品で喜んでくれる人が見つかりやすいか
・お得度
通常販売価格よりも安いか。メーカーさんの協力などで卸価格を安くしていただいたときなど
これらの評価基準は、フォーチュンボックスへの期待の方向性を調整する役割を果たすと同時に、購入するかどうかを決める、もしくは購入する目的を探すヒントになっていると思っています。
.「学べる通販」というもう1つのコンセプト
フォーチュンボックスには「学べる通販」というもう1つのコンセプト(サブコンセプト)があります。スタートの現段階では、こちらのコンセプトはサブとしての扱いにしています。
ただし、この学びは「お客様に質の高い喜び(商品を使った満足、体験)を提供する」という目標(KFS)に直結しますので、私の中ではかなり重要視しています。
単なる消費ではなく、その背景にあるストーリーも知っていただき、購入者様に少しでも生活上手になって欲しいという思い、狙いがあります。
たとえば「人間には塩辛いものを食べるとすぐに飲み込みたくなる反射が備わっているので、この○○は少しずつゆっくり味わってください」というようなコメント(商品解説文)をつけて商品を送っています。すると、その人は、もしかしたら塩辛い物を食べる量が減って、高血圧にならなくて済むかもしれません。「学べる通販」として、そんなベネフィットにつながる情報を提供していきたいと考えています。
この狙いが達成したと実感できたのが、たとえば、次のような感想をいただいたときでした。
※いずれも「フォーチュンボックス父の日スペシャル2018」のご感想です
・「(父は)普段食べつけないものは好まない傾向があるのですが、次々と箱から出てくる珍しい食べ物にこれは?これは?と反応し、テーブルに並べて喜んでいました。」
・「普段から何かしら文句を言う父にプレゼントしたところ、一切文句を言うどころか嬉しそうに1つ1つ手に取り、同封されていた説明書を丁寧に読むなど大変喜んでもらえました。とても良い父の日になりました」
最近よく出てくるこれからの商品のキーワード「モノ消費からコト消費へ」ということをある程度具現化できるのがフォーチュンボックスだと思っています。
ほとんどの購入者にとってまったく知らない、未知の物を手にするわけですから、その物への警戒心も含め、興味を抱いてもらえるのだと思います。逆に、日頃買う商品は「知っている」という先入観から、それ以上知ろうとはしないはずです。
人はフォーチュンボックスを購入するときに「学ぶ機会」をも得ていると思いますので、そのチャンスにいろんな情報を提供していきたいです。
.メーカーが「作ること」に集中できるために
年間200社以上、多くのメーカーさんに接して感じたのは、「セルフプロデュースできないとヤバイ」というような脅迫観念が漂っているのではないか、ということでした。そのため「しなくていい努力」をしているメーカーさんが多い気がしました。
「作り手はいつまでも作り手だけに甘んじていてはいけない。自分たちで売っていくべきだ」「売っていく力がないメーカーは淘汰されていく」というような論調がはびこっています。
私は、ゼネラリストばかりの世の中はつまらないので、スペシャリストはスペシャリストであり続けられるのも、選択肢が多い「豊かな社会」だと思います。
もちろん商品よりも作り手を売ろうとするのは1つの有効な手法ですし否定できる立場ではありませんが、作り手の出過ぎ、出し過ぎは逆に価値を壊すことにもつながりかねないという警戒心もどこかに置いておくべきだと思います。
また、メーカーさんは、メーカーとして本来の「作る」ことにできるだけ集中してもらい、「売る」ことはフォーチュンボックスをはじめとする当社のプロデュース機能に任せてもらえるような、そんな実力をつけていきたいと考えています。
チャレンジの連続ではありますが、粘り強くやりきる覚悟で取り組んでいます。
.安易に「苦労物語」「こだわり」に逃げない
「こんなに苦労したんです(だから買ってください)」「こんなにこだわっているんです(だから高くても買うでしょう?)」というような作り手、売り手の態度を目にすることがありますが、私はあまり共感できません。
展示会に通い始めたばかりの頃は、苦労話を聞かせてくれるメーカーさんを前に「こんなメーカーさんを応援したい!」と単純に熱くなっていた時期もありました。
しかし、試食してみるとおいしくない、というようなことが続いて、あくまでもユーザーに届けるのは商品本来の価値(たとえば、食品であれば美味しい、味が新しい)であって実力であるべきだ、と思うように変わっていきました。
同時に信頼できるあのメーカー、人が売っているから、というものに頼ろうとするのもどうかと思います。義理や人情に訴えるスタイルにも私はあまり関心を持てません。
ブランドの便利さを否定するつもりは毛頭ありませんが、ブランドはいつも裏切らないこととセットのはずですから、ブランドだけを先に高めようとする前にすべきことがたくさんある気がします。
いずれにせよ「苦労物語」「こだわり」という言葉や空気に必要以上に影響されて客観性を失うようなことがないようにしなければと思っています。
同時に感じたのは、失礼を承知で言わせていただくとすれば、地方の物産展やメーカーに訪問して思うのは、さほど研究や努力をしていないところが多いのではないか、ということです。
「地方の小規模なメーカーだから応援したい」という考えは私にはありません。むしろ大規模なメーカーさんの方がきっと多くの社員さんが努力しているはずですし、だからこそ今の地位があるとも思っています。
規模の大小よりも、消費者のことを見ているところ、もしくは、強いビジョンを持っている社長さんがいるところ、勉強、研究をしているところ、チャレンジ精神を持っているところに魅力を感じます。
そういうメーカーさんがやはり知名度が低くても、いい商品を作っていたりしますので、そんな商品を多くの人に教えてあげたいと思います。
結果として、おそらく多くの人が想像する以上にフォーチュンボックスの商品としての採用率は低いと思います。300社以上のメーカーが出展する展示会に2日間通っても、実際に採用してフォーチュンボックスの商品として取り扱える商品は1つか2つくらいしか見つかりません。成果0のときもあります。もちろん、たまに小さな規模の展示会などでも採用したい商品が見つかることもあります。
.フォーチュンボックスのこれから
フォーチュンボックスという商品、サービス、ビジネスモデルの価値をより高めていく方法はおぼろげながらわかってきました。
まだまだ間違いなくフォーチュンボックスは伸びていくと確信しています。自分の人生の一部をかけて取り組む価値があることだとも思えてきました。
現在は、この認知度をさらに高めていくような工夫をし、新規参入者を迎え入れていく方法も検討してみたくなるような、そんな感触を持っています。
もちろん、しばらくはできるだけ目の前のお客様の喜びのための活動を最優先しますが。
まだまだ課題も多いフォーチュンボックスですが、私らしく無理せずマイペースかつ着実に成長させていきたいと思っていますので、これからの展開に注目していただけましたら嬉しいです。
最後に、いつも応援してくださる皆様、本当にありがとうございます!これからも、どうか見放さず、よろしくお願いします。
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フォーチュンファクトリー株式会社 代表取締役。新潟出身。東京在住、20才。「CAMPFIRE AWARD 2017【特別賞】灯火賞」受賞。「フォーチュンボックス」や自社ブランド「五感プレミアム」シリーズを販売中。