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事業課題を捉え「予算なし」から地道な改善を続け売上アップを実現した営業施策

「これ以上お金は出せない」


広告営業として、とあるA社のB事業部を担当させていただきました。

ご挨拶に伺った際に先方担当者Y課長から言われた一言。

「うちに来てもらっても、これ以上広告費は出せないよ?」

前任から顧客との関係性は良かったため会ってはくれますが、これ以上の進展は難しそうな状況。

介在や提案の余地を探ったとしても、この状況では話も聞いてくれない。
そんな印象を持ちました。

提案を受けていただいたり、会社のこと含め自己開示いただくためには「信用できる奴」と思っていただかないといけない。

「信用できる奴」になるためには、その前段階である「役に立つ奴」にならなければならない。

それからはまずは自分が「役に立つ奴」になれるように動きました。

まずは自分自信の勉強と、お金がかからない範囲で「Give=与えること」を行いました。

1.顧客が置かれているマーケットを知る。
  →ネットや業界新聞、同じ業界に属する友人から話を聞いて情報を得る
2.顧客の商品の強み・弱みを知る。
  →強みを10個言えるようになる。
3.顧客の仕事内容を知る。
  →現場を見に行かせてもらう。肌で感じて、頭で理解する。

ただこの程度は最低限のこと。

さらにもっと深く介在できるように、顧客のエース営業に同席させていただき、学ばせていただきました。
そして勝手ながらその結果をレポートにし、Y課長へ提出しました。

下記はレポートの一例ですが、例えば○○を提案する時エース営業の方はこのような話の組み立て方をされていました。

 1.自分の経験則で訴求する
  「実は私も当初は□□を検討していたんですけど、○○にしたんですよ」
 2.感情・定性面で訴求する
  「現物を見てみると〜〜だったんです」
 3. 論理で訴求
  「実際に計算してみると△年で計算した時にxxx円お得でした」

このパターンをY課長に横展開していただきました。
「実践しやすい」と、ローキャリアの営業の方にも好評だったと聞きました。

もし自分の経験則がなければ、他の顧客事例や社内メンバーの事例を用いて話すようにしていただくよう念押ししました。

こういったことを続けていくうちに、少しずつ「役に立つ奴」と思われ始めた実感がありました。

それと同時に、これまでY課長としか接点がありませんでしたが、様々なレイヤーの営業と接点を持つことができ、顔と名前が一致する社員が増えてきました。

現場の営業社員との会話で感じた違和感


これまでは、いわゆる「マネージャー職」の方との接点が多く気づかなかったこともありました。
現場の営業と会話させていただく機会が増えるにつれて、気づいたことがありました。

それは現場の営業ほど仕事へのモチベーションが低いことでした。

他の事業部は活気があるのに、このB事業部では前向きな雰囲気が感じられませんでした。

なぜだろう?と気になって再びY課長と話してみました。

Y課長曰く、
「全社の業績に占める割合のうち、B事業部の売上インパクトが小さかったからではないか?」
ということでした。
しかもそのインパクトは売上だけではなく、利益率において最低水準でした。

これを聞いて私は、モチベーションの低下にはB事業部の根本的な構造に課題があると感じました。
そして「役に立つ奴」の次に、この課題を解決したいと思い動き始めました。

「課題の特定」と「打ち手の策定」


ず着目したのは最低水準になっていた利益率でした。
利益率の低下には2つの理由がありました。

1.広告宣伝費を下げていたので、その分問い合わせが減る。
  ただ成約件数は担保したいので値引きを行い利益を圧迫している。

2.値引きという戦略だけでは仕入れた商品を販売しきれず売れ残っており 
   その管理コストが利益を圧迫している。

完全に負のループだと感じました。

また現在行っている値引き率を算出していただいたところ
約20%値引きしている事が判明しました。
金額にすると数千万分です。

加えて値引きには利益率圧迫に加え、以下のようなデメリットが生じてしまいます。

・ブランド価値の低下(安売り感が出てしまう)
・過去購入者の心象悪化

このようなリスクをとっているにも関わらず、仕入れ商品を捌き切れず在庫コストが生じている状況…
今の値引きという戦略では、これ以上工夫の余地がないと感じました。

値引きも広告費も同じコストなはず。

値引きしている金額の一部を広告費に充て、問い合わせ数と成約数を最大化させ
今の負のループから抜け出せられるような提案をしようと考えました。

費用対効果のラフ案をY課長に提示し提案。
納得していただき、決裁者であるS事業部長に提案してみることで合意しました。

「信用できる奴」にステップアップしたなと感じました。

より提案内容を具体化するためにY課長と作戦会議をしました。

1.現在のB事業部の課題認識を言語化。
2.過去の成約者アンケート500枚を分析。広告の方向性を決める。
3.各商品ごとの値引きの上限額を精緻に設定。

数回打ち合わせを行い、もはや実施する前提で内容を詰め、いざS事業部長に提案。

「内容はわかった。しかし広告費を増やしただけで成約まで増えるとは限らない。

 …ただここまで準備してくれているとは思わなかった。提案にのろう。

S事業部長も同じ課題認識をお持ちで、何か変えないといけないというお考えでした。

初日に訪問した時には「これ以上広告費は出せないよ」と言われた会社から
当時の広告費の1.8倍にもなる追加投資をいただけました。

これでやっとスタートラインに立てました。

ここからはA社の営業の皆様と一緒になって試行錯誤を行います。

・お客様からの問い合わせの内容を振り返り、どういう対応や提案が良かったのか?を考えたり…

・先ほどご紹介した「○○を提案したい場合…」のパターンであれば
「こういうエピソードの方がお客様に深く理解いただけた」など、成功事例を共有いただく時間を設けたり…

・トップセールスの実際の営業を動画化して共有したり…

・値引きを求められるケースをパターン化し、切り返しトークを型化したり…

「認知→問い合わせ→接客→成約」全てのプロセスに介在しました

また他社の取り組み内容やマーケット状況、現在の予実計画の進捗などを
メルマガにして私から営業全員に発信。一体感を強めました。

結果として実施した1支店で成約件数、利益率ともに改善することができました。

今回は私が介在をさせていただきましたが、取り組みを自社で内製化しつつ他の5店舗でも実施いただきました。

成果と今後について


これらの結果をY課長からS事業部長に報告し、
Y課長は社内で大きく評価されたとご報告をいただきました。

「モチベーション」とはなかなか定量で計測しづらい概念ではありますが、私が訪問する中で

「問い合わせが来るようになり、接客〜成約に繋がるのが嬉しい」
「成約数・利益率アップで微力ながら会社に貢献している実感があります」

と嬉しいお声もいただきました。

今後の展望としては、会社として売上インパクトは小さいB事業部ですが
人員の増加や、B事業部がなかった支店にB事業部を新設する計画も動いておられるようです。
引き続き業績に向上に伴走させていただく予定をしております。


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