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腰椎椎間板ヘルニアの理学療法〜動作パターンの改善と生活指導に着目したアプローチ〜【サブスク】

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はじめに

このnoteは、誰にでもお役に立てるわけではありません。

ですが、以下に当てはまる理学療法士の方は、必ず読んでみてください。

✅椎間板ヘルニアの病態を理解したい
✅腰椎椎間板ヘルニアの特徴や診断方法を知りたい

✅腰椎椎間板ヘルニアに対する理学療法評価やアプローチを学びたい
✅腰椎椎間板ヘルニア症例に対する動作分析・生活指導を具体的に学びたい

✅腰椎椎間板ヘルニア由来の痛みに対応できるセラピストになりたい

もうすこし具体的に・・・

🔖ヘルニアなら腰椎伸展を促せばいいというわけではないが、その理由を自信を持って説明できない
🔖ヘルニアの診断でkempテストが陽性の場合、どんなことに気をつけたらいいのか知りたい
🔖ヘルニアに対して特別な徒手スキルがなくても理学療法士ができることをきちんと押さえておきたい

上記を今すぐ解決できる内容を記載しています。

このnoteを読むことで、

腰椎椎間板ヘルニア由来の疼痛に対してどう対処していいかわからないところから、的確な評価ができるようになったり、自信を持って対応できるようになることを目標に作成しています。

腰椎椎間板ヘルニアに関する知識と臨床で確かな効果を実感しているアプローチ方法について、一からしっかり整理しようとした結果、15000字以上と過去最大ボリュームのnoteになりました。

臨床力を高めるいちきっかけとなれば幸いです。

by Louis


自己紹介

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はじめまして、forPTのLouis(ルイ)です。理学療法士免許を取得し、現在は整形外科クリニックに勤務しています。

forPTとは、理学療法士の臨床と発信を支援するために2019年に発足されたコミュニティです。

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・限定noteの販売


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臨床に役立つ知識や技術を提供し続け、現在では理学療法士だけでなく、セラピスト全般、理学療法士学生、柔道整復師、スポーツトレーナーなど幅広い職種の方にもシェアいただいています。

それでは以下より、『腰椎椎間板ヘルニアの理学療法』になります。

椎間板の解剖学

椎間板は、中心部の髄核と周辺を囲む繊維輪の2つの要素から構成されます。椎間板の上端と下端にはそれぞれ、脊椎端板と呼ばれる椎体と椎間板を隔てる軟骨層が存在します(図1)。

椎間板の主な機能は、椎体間の動きを生み出し、椎体間に負荷を伝えることです。

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図1 椎間板の構造
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1176.pdf
より画像引用一部改変

髄核は、圧迫を受けて風船のように変形し、あらゆる方向に圧力を伝えます。繊維輪とともに体重支持に寄与します。

繊維輪は、10〜20枚のコラーゲン繊維が層板として連なった構造となっています。短時間の荷重であれば繊維輪だけでも十分な体重支持が可能¹⁾ですが、持続的な荷重により押しつぶされてしまうため、容積の圧縮を受けない髄核が付加的な支持機構を提供しています²⁾。

脊椎端板は、厚さ0.6〜1mmの軟骨層であり、髄核の全体と繊維輪の一部を覆っています。髄核からの圧力は、負荷の一部を脊椎端板が椎体に伝えます。また、繊維輪が潰れるのを防ぐ役割があります。

椎間板の成分

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http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1176.pdf
より画像引用

髄核の主な成分は、水分、プロテオグリカン、コラーゲン繊維です。水分が約70〜90%を占めますが、年齢により割合は異なります。
髄核に流体特性を与えているのは水分であり、プロテオグリカンが厚さ、コラーゲン繊維が粘性に関連します²⁾。

繊維輪の主な成分は、水分とコラーゲン繊維であり、層板の隙間にはプロテオグリカンで満たされています。水分は約60〜70%を占めるとされています。

脊椎端板の主な成分は、プロテオグリカンとコラーゲン繊維です。椎体に近い部分では、より多くのコラーゲン繊維を含み、髄核に近い部分ではプロテオグリカンと水分を多く含みます。

椎間板において水分はとても重要です。
上述の通り、成分の中でもかなり大きな割合を占めています。
髄核が乾燥して繊維化するにつれて流体特性が徐々に失われ、体重を伝達できなくなり、繊維輪へのストレスが増大してしまいます。

腰椎椎間板ヘルニアの病態と分類

腰椎椎間板ヘルニアの病態

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腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の変性髄核が線維輪を穿破し、椎間板組織が脊柱管内に脱出、もしくは突出して神経の直接圧迫により腰痛や神経症状が出現したもの³⁾とされています。ただし、実際の臨床では、画像所見で見られる椎間板の脱出と症状が一致しないことも少なくありません。

椎間板の脱出があっても無症候の場合もあれば、なかには、椎間板脱出の所見がみられてかつ腰痛があったとしても、その腰痛の原因が椎間板ヘルニアではないケースも存在します。(これに関して「腰椎椎間板ヘルニアの診断基準」の項も合わせてご参照ください)

腰椎椎間板ヘルニアの有病率約1%で、好発高位L4/5(50.6%)L5/S(40.8%)³⁾と報告されています。

💡腰椎椎間板ヘルニアの病態については、以下の動画が非常にイメージしやすいのでチェックしてみてください。


腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類

腰椎椎間板ヘルニアは、1980年にAAOS(American Academy of Orthopaedic Surgeons)によって、ヘルニアの形態から以下の4つに分類されています(図2)。

【腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類】³⁾
・髄核膨隆(intraspongy nuclear herniationまたは bulging type)
・髄核突出(protrusion type)
・髄核脱出(extrusion type)
・髄核分離(sequestration type)

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図2 腰椎椎間板ヘルニアの形態による分類
a.髄核膨隆 b.髄核突出 c.髄核脱出 d.髄核分離
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1176.pdf
より画像引用

髄核脱出はさらに、後縦靱帯の穿破していないsubligamentous extrusion type と後縦靱帯を穿破しているtransligamentous extrusion typeに分けられます。

髄核脱出と髄核分離は髄核膨隆や髄核突出と比較して有意に自然退縮*が起こりやすく、髄核分離は髄核脱出より完全消失しやすい³⁾とされています。
つまり、髄核が繊維輪から穿破している方が吸収されやすいと解釈することができます。
✳︎退縮とは、ヘルニアが縮小するまたは髄核が通常の容積に戻ることを意味します。

また、髄核脱出や髄核分離は髄核突出と比較して SLRテストの陽性率や障害神経根領域の運動・感覚障害がより高度である⁴⁾と報告されています。

MEMO 腰椎椎間板ヘルニアの吸収期間
ヘルニアの吸収は46%が3ヶ月以内に観察された³⁾と報告されています。また、韓国の研究では、505例中の486例(96.2%)が平均1年の経過観察でヘルニアの吸収が認められた³⁾との報告もあります。
そのため、治療においてはまずは保存的加療が第一選択となることが多いです。


腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類

腰椎椎間板ヘルニアは、横断面における脱出部位によって以下の4つ分けられます(図3)。

【腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類】⁵⁾
・後正中型(Central type)
・後外側型(Subarticular type)
・椎間孔内外側型(Foraminal type)
・椎間孔外外側型(Extraforaminal type)

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図3 腰椎椎間板ヘルニアの局在による分類
A.後正中型(Central type)
B.後外側型(Subarticular type)
C.椎間孔内外側型(Foraminal type)
D.椎間孔外外側型(Extraforaminal type)
6)より画像引用

発生頻度としては、後外側型が最も多い(70〜80%)とされています。

後正中型では、馬尾神経の圧迫を受けて、両側の下肢症状や歩行障害、排尿障害を生じる可能性があります。ただし、後縦靱帯が厚く存在する部位のため、ヘルニア発生頻度は後外側型に比べて多くはありません。

椎間孔内外側型は、ヘルニア全体の約5〜10%と発生頻度こそ多くはありませんが、後根神経節(感覚線維)が圧迫を受けて、強い痛み、坐骨神経痛、神経細胞の損傷などを引き起こす可能性があります。

MEMO 腰椎椎間板ヘルニア患者における脊柱アライメントの特徴
腰椎椎間板ヘルニアを有する患者は、非ヘルニア患者と比較して、仙骨、骨盤、腰椎の前傾角度が小さく、胸椎後弯角度とSVA*(sagittal vertical axis)が大きい⁷⁾と報告されています。ただし、脊柱アライメントの影響で腰椎椎間板ヘルニアを引き起こすメカニズムに関するエビデンスは明らかではありません。
✳︎SVAとは、C7 椎体中央を通る垂直線と S1 後上縁との前後距離を指します(図4)。

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図4 SVA
C7 椎体中央を通る垂直線と S1 後上縁との前後距離
7)より画像引用

腰椎椎間板ヘルニアの診断基準

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腰椎椎間板ヘルニアを単独で診断できるような精度の高い方法は存在しません。そのため、実際には、MRI上の椎間板ヘルニア(椎間板の膨隆や脱出)と病歴臨床所見などを照らし合わせて診断が行われます。

腰椎椎間板ヘルニアには、有用性が報告されている4つの特徴的な病歴があります。

【腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な病歴³⁾⁸⁾】
・下腿に放散する疼痛
・神経根デルマトームに一致する疼痛
・咳・くしゃみによる疼痛の悪化
・発作性疼痛

特に、咳・くしゃみによる下肢痛の悪化は椎間板ヘルニアを示唆する重要な病歴⁹⁾とも言われています。

また、椎間板ヘルニアは激痛を伴う突然の発症が特徴の一つに挙げられています。ただし、実際の臨床では疼痛の程度は個人差がある印象を受けます。必ずしも激痛=椎間板ヘルニアではないので、他の所見も踏まえ総合的な判断ができると良いでしょう。

腰椎椎間板ヘルニアを診断するうえでは、前述したようにMRIの画像所見や病歴だけではなく、臨床所見(身体所見)も非常に大切になります。

以下に、腰椎椎間板ヘルニアでみられる臨床所見を列挙します。

【腰椎椎間板ヘルニアでみられる臨床所見】
・各疼痛誘発テスト(SLRテスト・Lasègue テスト、交差SLRテスト、大腿神経伸展テスト(FNST))陽性
・疼痛放散領域
・筋力低下
・感覚障害
・深部腱反射の低下、消失

各疼痛誘発テストについては後述の「腰椎椎間板ヘルニアの疼痛誘発テスト」の項目をご参照ください。

疼痛放散領域は、問診によって神経根デルマトームに一致した放散痛がみられるか聴取します。

筋力低下感覚障害深部腱反射は、障害神経根領域を考慮して合わせて評価します(図5)。

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図5 腰椎椎間板ヘルニアにより障害を受ける筋肉、感覚、深部腱反射
a.L4神経根障害 b.L5神経根障害 c.S1神経根障害
10)より画像引用

また、若年者においては、体幹前屈制限ハムストリングスの短縮ヘルニア存在側凸の側弯が特徴的な臨床所見として挙げられています³⁾¹¹⁾。

以上のような、腰椎椎間板ヘルニアでみられやすい特徴や臨床所見をもとに総合的に判断し診断がされます。

臨床(身体)所見は、もちろんながら理学療法評価においてとても重要なため、しっかりとその特徴を押さえておきましょう。


腰椎椎間板ヘルニアの疼痛誘発テスト

SLRテスト/Lasègue テスト

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