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【社員紹介vol.2】『イッテQ!』を10年以上担当する“レジェンドリサーチャー井上”とは?

日本テレビ系で放送されている人気番組『世界の果てまでイッテQ!』。深夜の時間帯からスタートしたこの番組は、番組立ち上げの時からフォーミュレーションがリサーチ業務に携わっています。
『イッテQ』を社内で担当しているのは、入社12年目になる井上集さん。先日、番組の打ち合わせに行った際、若手スタッフから「レジェンド」と呼ばれたんだとか。
今回は、そんな”レジェンドリサーチャー(?)”にお話をうかがうべく、リサーチャー今野と今井部長が井上さんを直撃!

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井上集(いのうえ・つどい)
1981年生まれ。福岡県出身。2009年に入社し、国際部にて海外リサーチを担当。現在は調査4部のセクションマネージャー(SM)を務める。主な担当番組は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、『それって!?実際どうなの課』(日本テレビ系)、『内村のツボる動画』(テレビ東京系)他。

今井:えーっとまずは自分で自分のことを「レジェンド」と言うメンタルについてお伺いします。(笑)

井上:いやいや、僕が言ったわけじゃないですよ! 炎上しますよ(笑)
せめて”イケメンリサーチャー”にしておいてください。

――そっちの方が炎上しそう(笑)

■『イッテQ』のリサーチ(ロケ場所探し)

――ところで、12年リサーチしていると、今まで携わってきた番組はいっぱいありますよね。

井上:あるけど、一番長く、入社してすぐの時から今も担当しているのは『世界の果てまでイッテQ!』(以下、『イッテQ』)。別の担当者から引き継いで、10年以上やっています。

――『イッテQ』のリサーチはどういうものが多いんですか?

井上:基本的にはロケリサーチ。今はこういう時期だから国内が多いけど、本来は海外がメインで、世界中どこでも調べます。『イッテQ』の中にはいろんなコーナーがあって、それに向けたリサーチをします。
イモトアヤコさんのワールドツアーでは動物の生態を調べたり、「Qtube」っていう企画では海外のYouTuberを探すこともある。
定番どころでは、その時期にしか見れないような自然現象を探したり、珍人や達人を探したり、とにかく海外のあらゆるもの、多岐にわたるロケで使えるネタを探す感じです。だから動物とか自然現象とかにめちゃくちゃ詳しくなる。

――最近、リサーチしたものからOAされたネタを教えてください。

井上:みやぞんがイタリアで巨大カジキを仕留める回」ですかね。
みやぞんさんの「世界の果てまでイッタっきり」っていうロケの企画があって、8月末くらいの撮影を想定していたから、そのくらいの時期に体をはってロケできるネタのリサーチ依頼がきました。それでイタリアの伝統漁であるカジキマグロ突き漁を提案したら採用されて、実際にロケに行ってOAされた感じですね。

――すごーい! 私、見てました!


■『内村のツボる動画』のリサーチ(海外映像の許諾)

――『イッテQ』の他に担当しているという『内村のツボる動画』では、どんな仕事をしているんですか?

井上:毎回、海外のショートフッテージ(映像素材)を紹介している番組なので、テーマに沿った映像のリサーチから始まります。
例えば、「スゴ技」がテーマであれば、世界中のスゴ技動画を探します。その後、制作が選出した映像の許可取りを行います。もちろんすべてが英語が通じる国ではないので、なんとか英語できる人がいないか、片言の他言語でつないでもらう事もあります。グーグル翻訳で電話しながら翻訳して自分の言いたいことだけ伝えて、何とか英語ができる人を探したり、メールを見てもらうように頼んだり・・・。それでも、結構うまくいくんですよね。

――言語の障壁があってやりとりできなかったことはないんですか?

井上:あったよ。そういう時は現地の言葉が通じるコーディネーターさんに頼んだりして対応してます。
動画の使用が決まれば、契約書を作成したり、マスター(映像データ)を発注したり、詳細情報を調べたり、海外への支払いをしたりします。
他には、この番組では海外YouTuberとzoomロケがありました。もともと僕が連絡してつないだ人だったので、zoomロケも立ち会うことになって。ロケの通訳は別の方にお願いして、それまでの準備段階だったり、打ち合わせだったりは僕が通訳して、情報をまとめたりとかバタバタと大変でした。

――へえ! 珍しい経験ですね。どんなYouTuberの方だったんですか?

井上:毎週、ギネス記録に挑戦しているっていうおじさん。結構ぶっ飛んでましたよ(笑) 錦鯉の長谷川さんと対決するっていうロケを見守ってました。



■仕事での失敗談(100万円未入金騒動)&成功談(世界一長い洞窟に行くロケを成功へ導く)

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――仕事で失敗した経験とかありますか?

井上:入社1年目の時に担当した特番の仕事で、メキシコのとある場所のロケをしたいからその交渉をしてくれって言われたことがあって。
メキシコだからスペイン語だったけど、英語しかできないけどとりあえずやってみてOKはもらえた。で、実際に制作スタッフがロケに行って、現地ではコーディネーターが誘導してくれたんだけど、その人がまあ適当な人で全然話が進まないと。夜中にディレクターから電話がかかってきて「井上さん、助けてください」って言われて、僕が現地の人とやり取りをして、なんとかロケはうまくいきました。なんだけど、費用のやりとりをした時に、メキシコから受け取るはずの料金がきちんと振り込まれなかったんですよね。

――え、いくらだったんですか?

井上:100万円

――えー!!

井上:うちの成果報酬は確保してたんだけどね。そんなことがありましたね。

――逆に自分のリサーチが貢献できたと感じたことってありましたか?

井上:ロケの仕込みを何度かやったことがあって。フジテレビの特番で、ベトナムにある世界一長い洞窟にロケに行きたいっていうことで、向こうの担当者とやり取りして、申請書とか書類関係も全部手配してなんとかギリギリ間に合って、それで一本大ネタが成立しました。
「一緒にロケ行きますか」って言われて、すごい行きたかったけど、他の仕事がどうしても調整できなかったから、行けなかったんだけどね。でも、そこまで全部やったのが初めてだったからすごい感謝もされたし、自分としてもやったなって思いました


■リサーチ会社に入社した理由(フランスでの映像の買い付けがきっかけ)

――フォーミュレーションに入社したきっかけは何だったんですか?

井上:元々、高校を出てからアメリカに行ってずっとダンスをやっていて。帰ってきてそういう仕事をしていこうと思っていたけど、なかなか食っていけないから、バイトとか、コールセンターに派遣社員で働いたりしてた。その時に親父が倒れて「このままじゃだめだ、ちゃんと働かなきゃな」と思って、仕事を探していた時にたまたまフォーミュレーションの求人を見つけて。
「MIP」(※)っていう、フランスのカンヌ国際映画祭の1週間前にやっているテレビ向けの、ドキュメンタリーとか番組用の映像祭があるんだけど、当時フォーミュレーションはその買い付けに行っていて。その頃いたアメリカ人の上司と一緒に行きませんか? っていう募集があって。

(※)MIP(Marche Internationale des Programmes )とは、毎年春と秋にフランス・カンヌで開催される番組見本市で、世界中から番組のバイヤーが集まって各国のテレビ用のコンテンツを売買する一大イベント。
出典:https://www.nhk-ep.co.jp/mip-20171110/

今井:初耳だよ、そんな求人募集の仕方してたって。

井上:そう。で、「これおもしろそうだな」と思って。映画も好きだったし、配給みたいなことは興味があったからやってみたいなと思って、28歳の時に面接を受けて採用してもらいました

――「MIP」って年に何回もあるんですか?

井上:年に2回やっていて、うちの会社は年に1回だけ春に行ってました。
最初の1年目に「MIP」に連れて行ってもらったんだけど、次の年くらいに今の社長が来て「行かなくていんじゃないの?」って言われて、わずか1年で入社理由が消えるっていう(笑)
入社の理由はその買い付けですね。人と話すのが好きで交渉事とか好きだったから、すごくいいなと思って入りました。


■英語を習得した経緯(ダンサーを目指しアメリカへ留学)

――英語は海外に留学していた時に学んだんですか?

井上:そうです。最初は全然しゃべれなくて、大学の付属の語学学校に入ってTOEICのテストを受けて、基準に達したら大学に入れるっていう仕組みで、半年くらい英語の勉強をしていました。
大学はダンスのクラスがメインだったから、言葉がわからなくても動きを覚えればいいからなんとかなった。日本人が自分しかいなかったから、みんなすごいよくしてくれて。クラスメイトと仲良くなってから英語がどんどん聞こえるようになって、そのあとしゃべれるようになって。短大で2年通ったけど、卒業する頃には普通に会話するようになってました

――ダンスは何ダンスをしていたんですか?

井上:タップダンス。大学はダンス科だから、ヒップホップもジャズダンスも全部やる感じ。メインはタップ。

――なにがきっかけでタップダンサーを目指されたんですか?

井上:元々、小学生の時に劇団四季の「キャッツ」を観てからミュージカルにハマって。人前で何かするのが好きだったから、ミュージカルに連れて行ってもらううちにそういうことがやりたいなーと思ってました。
ミュージカルで使うダンスって、バレエ、ジャズ、タップがあるんですけど、タップはどこでもできるし音楽なくてもできるし、自分でリズムをつくるって超かっこいいじゃんって思って、高校2年生の時かな、ダンススタジオに初めて行ってタップやり始めたらハマって。高校3年生の時にダンスの大会に出たら準優勝したの。

――すごい!

井上:で、初めて賞金をもらって「おもしろいな、こういう生き方」って思って。ダンスをやりたいって言ったら親とすごいもめたけど、結局「じゃあ本場に行ってやって来い」って言われて。福岡に住んでたから、「東京?」って聞いたら「いやアメリカ」って言われて、アメリカ行かせてもらってタップをしっかりやったっていう感じです。


■最近ハマっていること(キャンプ)

――趣味や好きなものはなんですか?

井上:今はキャンプにハマってます。もともとアウトドアが好きで、登山とかしていて。というのも、うちの高校(福岡県)が変わってて、月に一回登山があったの。毎月、高校の近くにある山に必ず登らなきゃいけなくて、3年間で36回、絶対登らされる。36回登るとエベレストより高い標高になるから、「塵も積もれば山となる」を体現している、変な伝統があったんです。
それから気晴らしに登山に行くようになって、キャンプも始めたらどハマりした感じ。今は毎月行ってますね。余計なことを考えないで没頭できるのがいい。
自然が好きだし、自然という過酷な状況に身を置くことが好き。だからスパルタンレースとか好きだし。山の中で野営みたいなことをして、鹿と一緒に寝たりとか。そういうところで過ごすのが好き。

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妻がハンドメイドでいろいろ作る人で、最近はキャンプグッズを一緒に考えて作っていて、ペグ(テントなど地面に固定するために打ち込む杭)を入れるケースとか、薪を運ぶバッグとかを縫って作ってメルカリで売ったりしてますね。


■リサーチのおもしろさ(好奇心を満たしてくれる&海外に知り合いが増える)

――リサーチの仕事のおもしろさってどういうところにありますか?

井上:当たり前だけど、すごく物事に詳しくなる。僕は『イッテQ』をやっているから、動物の生態とかめちゃくちゃ詳しくて、子供と動物園に行くとだいたい解説できる。その場で動物を見てパッと思い出したりした情報を教えてあげてますね。
例えば「キリンって寝るとき、首を巻いて寝るんだよ」とか「シマウマってワンって吠えるんだよ」とか。動物園の説明に書いてなかったり、実際にはなかなか見れない生態なんかは、教えてあげると喜びますね。個人的にはゴリラが一番好きですけど。ゴリラのドラミング(胸を叩く行為)って、グーじゃなくてパーなんです。
そういうことを子供がすごい嬉しそうに聞いてくるから、よかったなって思います。妻は「よく知ってんね」ってあきれてるけど(笑)
好奇心がある人はすごくいい仕事だと思います。「知りたい」っていう欲求を満たしてくれる仕事だから、すごい楽しいです。

――海外のリサーチ特有のおもしろさってありますか?

井上:正直、リサーチに関しては国内も海外もそんなに変わらないけど、単純に人とコンタクトを取る時に文化の違いを感じるというか。全然取り合ってくれない人もいるけど、わざわざ日本から連絡してきてくれたってことですごく親切にしてくれる人もいたりする。それがきっかけで仲良くなった人もいて、家族の写真を送ってくれたり、1回ロケをお願いしただけなんだけどお菓子送ってきてくれたり、クリスマスカードくれたり、優しいなって感じることが多いですね。
あとは、海外に知り合いが増えました。たまに「どう?」ってメールすると返事をくれる人もいるし、「旅行に行ったら会いに行くよ」みたいなこと言ってるんだけど、今はなかなか行けなくて。でも会いたい人はいっぱいいる。そういう知り合いがいっぱいできた感じですかね。フィンランド、メキシコ、オーストラリアとかトルコにもいるし。


■一緒に働きたい人物像(なんでも楽しめる、好奇心旺盛な人)

――どんな人に入社してきてほしいと思いますか?

井上:昔は黙々と与えられた仕事をこなすので必死でしたけど、最近は時代の流れが速いというか、テレビ以外のメディアもたくさん増えたので、柔軟な頭で広い視野を持つ・・・難しい言い方はやめて、好奇心旺盛な人がいいです。何事にも興味を持って「やってみる」という行動力があれば、僕も刺激を受けますし、新しいことが一緒にできるんじゃないかなと思います。
あとは、なんでも楽しんでくれる人がいいです。仕事もプライベートも、楽しい方がいいに決まってるんで。

■将来の夢(日本と海外をつなげる仕事がしたい)

――今後の夢や目標はありますか?

井上:せっかく海外の人たちと話をしたりして、自分の中での交渉術とか身についたものがあるし、リサーチをしている中で知った世界とかもあるから、リサーチ業だけではなくこの能力を生かした新しいビジネスをやりたいと常に思っています。
YouTubeとかは可能性があると思っていて。日本人のYouTuberは山ほどいるからここに参入しても難しい。けど、日本に住んでいる外国人のYouTuberってそんなにまだいない。彼らはたぶん、やろうと思えばやれる人はいるんだけど、おもしろいネタを作れない。逆に、リサーチャーは日本に関してはなんでも知っているわけで。おもしろいお店も知っているし、おもしろいアトラクション、イベントも知っているから、そういうのを協力して作れないかなと思っています。
彼らには日本人に向けてではなく、自分の国に向けて発信して日本をPRしてほしい。日本で撮った映像で日本の魅力を海外に発信してもらう。そういう、日本と海外の人をつなげるような仕事をしたいと思ってます。

ラスト差し込み


英語のリサーチが必要になると引っ張りだこの井上さん。社内では「ゴリラ」の愛称で親しまれていますが、仕事の話をうかがうと熟練のリサーチャーだということが伝わってきます。
筋トレ好きで体格のイカツいおじさん(←スミマセンっ!)かと思いきや、ダンサーを目指していた過去があったなんて驚き! ダンサーからテレビリサーチャーへの転身も、「観る人にワクワクを与える」点でつながっているような気がしました。


(文・今野ひとみ)

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