見出し画像

【フォレスト出版チャンネル#224】ゲスト|DX時代、世界のルールづくりに日本はどう参入するか?

このnoteは2021年9月22日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。
 

世界のルールづくりに、日本は入っていけない!?

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日も昨日に引き続いて素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。株式会社GVEのCEO、房広治さんと、株式会社ライフシフトのCEOであり、多摩大学・ルール形成戦略研究所・副所長も務めていらっしゃいます、徳岡晃一郎さん、フォレスト出版・編集部の貝瀬さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
房・徳岡:よろしくお願いします。
 
今井:昨日から房さんと徳岡さんのご著書、『デジタルマネー戦争』についてお聞きしています。昨日の番組の最後に、お金のデジタル化を制する者が未来の世界の覇権握るというお話が出ましたが、その辺りについて詳しくお聞きしていきたいと思います。徳岡先生、よろしくお願いいたします。

書影をクリックすると、Amazonページに飛びます。

徳岡:はい。未来の覇権を握るという、ルール形成になりますけれども、昨日ちょっとお話したみたいにルールっていうのは非常に世の中の根幹を成しているわけですけど、最近、特に注目を浴びているんですね。で、元々ルールっていうのはグローバル社会をきちんと整流化していくための、いろんな通貨、経済の仕組みだったり、技術標準だったり、TPPなんて、少しありましたけど、ああいうのもそうです。そういう、グローバル社会を成り立たせるっていう意味とか、それから最近よく話題になっている人権問題ですね。個人情報保護とか、こういう理念に基づく、人類社会の理念というものをどうするかっていうのも、ルールなんですね。
特に最近重要なルールでフォーカスされているのが3つありまして、1つが「地球環境問題」ですね。脱炭素とか、気候変動とか、そういうところのルールどうするか。それから、「経済安全保障」ですね。今、中国とアメリカの戦いがありますけれども、貿易制裁という領域、稀少鉱物の取り扱いどうするのかとか。それから、最後は「イノベーション」ですね。AIとか自動運転とかドローンとか、いろんな新しいものが出てきたときに、どうやって規制をするか。そうしないと、みんな勝手にやりますから。そういうような領域があります。
で、こういったものを「どうやって誰がつくっていくの?」というところなんですね。そのときに、1つは勝手に武力で脅してつくっていくこともあるわけですけど、それだとみんな納得しないし、長続きしないので、やっぱり世の中のため、「共通善」と言いますけども、本当にみんなが納得するような、いいことのためにルールをつくらないといけないねということが、重要なんですね。なので、当然つくる側のメリットっていうのもあるわけですけれども、そればっかりじゃなくて、世の中のためにみんながよりよく発展できるようにするための、ルールメイキングっていうことをしていかないといけないなので、覇権と言うと、ちょっとおどろおどろしい感じもあるんですけれども、結果的にみんなが本当によくなるものをつくっていけば、つくった側が感謝されるっていう意味で覇権が取れるという、そんなふうに思う必要があるんじゃないかなと思います。
中国なんかだと少し覇権色が強すぎるような気がするんですけども、結果的にみんながよくなるためのルールっていうのが、皆が従ってくれるってなるわけですね。そのときに、日本がどうしても世界でルールをつくるのに遅れてしまうのが、皆さんも感じているところだと思うんですけども、それはルールをつくるのは、さっき言ったみたいに共通善、世の中みんなのために何がいいのかって考える視点が重要なんですね。
でも、日本の人たちは、私も含めてですけども、理念追求というよりも現実対応型で、今何ができるんだろうかっていう発想からいくんですけども、ルールをつくるときは、「何が人類社会にとってあるべき姿なんだろうか」ってことから発想していかないといけないんだけど、そこはちょっと弱いんですね、我々(日本人)は。そういう意味で、なかなかそういうことを議論する場に入っていけないっていうので、日本人はルールが発想しにくい。どちらかと言うと、日本っていうのは「ルールをつくってくれたら従いますよ」と。「いろんな技術力で解決していっちゃいますよ」っていう立場であって、ルールをつくるのは欧米の人たちっていう。あと、英語がダメっていうのもあるんですけどね。なかなか英語ができないっていうのもちょっと弱みだと思います。

4つのSとSTEM教育

徳岡:でも、房さんの会社のように技術を持っているところっていっぱいあるんで、それを活かす手段がないのかなっていうふうに考えました。それが、この本でも言っている「4S」っていうところでありまして、この「4S」をもう一回、ちゃんと頑張ればいい筋は持っているわけなので、日本は大丈夫なんじゃないかと思っています。「4つのS」っていうのは、シナリオ、スピード、セキュリティ、サイエンスという、この4つのSですね。
で、この4つのSで、例えばシナリオは「未来をつくっていく」っていう、未来を構想するっていう意味なんですけど、そうすると、トヨタみたいに、今の時代は電気自動車がこれからは主流になっていかざるを得ないですね。二酸化炭素の問題があって。そうすると、未来のシナリオっていうのは、「これはやっぱり完全電気でしょ」っていうふうに腹をくくれるのか、「いや、まだハイブリッドでガソリンもなんとかいけるんです。そっちを頑張ればいいじゃないですか。電気自動車なんてまだまだ実用化できないんだし」って、腹をくくれないと、未来のシナリオって描きにくいんですね。腹をくくれるかどうか。
スピードもそうですよね。やっぱり脱原発っていうのは一気に欧州が決めちゃうわけですね。日本の場合は「なかなかこれはできないんだよね」ということで、スピードが遅いと。
それから、セキュリティもそうですね。セキュリティは、いろんな国と一緒にいろんなことをやろうとすると、どうしても安全をちゃんと気にしておかないと、悪いことをされるかもしれないし、裏をかかれたりとか、非常に危なっかしいわけですね。結局、日本は世界のみんなとやる癖がないから、自分だけでやっているから安全を気にしなくてもいいっていう。そういうところがちょっと弱いですね。
それから最後がサイエンスですけれども、これはもう決め手で、やっぱり科学がないと、結局、妄想とか迷信とか、しがらみとか、上の人が言ったからとか、そういうようなことで左右されちゃう。サイエンスは世界言語ですから、みんなを説得することができにくいっていうっていう話になるんですね。
だから、4つのSさえ、我々もきちっとやれれば、日本の培ってきたいろんな技術だったり、資源っていうのが使えるんじゃないかって思っています。そんなようなことで見てみると、さっき言った、テスラとトヨタとか、Appleとドコモとか、比較してみると、みんな結局その「4S」で負けちゃうんですね。
じゃあ、どうしたらいいのかということで、我々が考えているのが、「STEM」っていう。これは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティックスですね。科学とか技術とか工学、それから数学、これの略なんですけども、要するに「科学的な知見っていうのを伸ばしたいよね」っていうことなんですね。やっぱり日本人って、理科系ってあんまり人気がなくなったりして、文系に行っちゃったりとか、理科系は難しいよねっていうので、文系に逃げちゃったりするわけですけど、実はサイエンスっていうのをもっと我々は突き詰めていかないと、勉強していかないとダメで、学校でもこの教育っていうのはもっとやってほしいなって思っていますね。
そのあたりを実際に体現しているのが、イギリスの教育で、オックスフォードでも学んだわけですけど、やっぱり文系と理系の融合ですね。「文理融合」。で、幅広い教養になるようなかたちでSTEMっていうのを、皆さんは身につけている。そういう世界と我々は、ルール形成の現場で戦っていかないといけないっていうので、STEM教育は推進してほしいし、我々一人一人も興味を持つべきだなって思っています。という感じでいかがでしょうか。

マイナンバー制度は、次世代セキュリティに逆行している!?

貝瀬:ありがとうございます。STEMもそうですけど、その前に徳岡先生がおっしゃった、セキュリティに関しては、実は房社長のご専門の領域なので、そのあたりのお話を聞かせていただけるとありがたいんですけども。
 
房:今年の3月から私はアストン大学という、日本で言うと東工大、アメリカで言うとMITのようなイギリスの大学で、バーミンガムにあり、昔、バーミンガムが今の中国のように世界の工場というふうに言われた1900年頃ですね。ビクトリア時代、イギリスの全盛期の頃に栄えた工学が中心の大学があるんですが、そこの大学のサイバーセキュリティ・イノベーションセンターの教授をやらせていただいています。
そこで、セキュリティに関して言うと、やはりイギリスの、そういう大学のセキュリティに関する概念と、日本で言われているセキュリティの専門家の間に非常に隔たりがあります。どういうことかと言うと、例えば日本で今、マイナンバー制度というものを考えていらっしゃいますが、これは、イギリスの今考えているものから言うと10年前、20年前の概念で考えていらっしゃるということで、今や量子コンピューターが出てきていますから、これが世界でハッキング部隊を国が持っている北朝鮮とか、ロシアとか、こういうところが量子コンピューターを持つようになれば、今のPKIと言われている、それなりに優れていると思われていたものが非常に危なくなるというようなことがあるので、次世代セキュリティというのを考えております。
アストン大学のセキュリティ・イベーションセンターはイギリスの政府など、海外の政府を含めて、結局はセキュリティというのは、概念的にどうすればいいのかということを根本から考えて、個人情報を隔離する方法というので、今の日本のマイナンバー制度は逆に全部カードの中に入れてしまうとか、情報銀行とか、反対のほうに行っているように見えるんですね。
この辺がセキュリティの概念について、進化しているということがあります。その中で、一つ我々がお金の技術の中で偽物ができない技術というのをGVEはすでに持っていましたので、ワクチン接種記録のリアルタイム閲覧システム、これも偽物がつくられてしまうと、世界の摂取を記録した国と、見る国で違うわけなので、どうしたらいいかというのをGVEの技術だと、それが偽物を排除できるというようなことが、例えばあると。そういうレベルにまで世界はきております。なので、セキュリティについては非常に重要で、私としましては客観的に見て24時間365日、オンラインの時代がきたらセキュリティが重要だと思ったときに、どの分野でセキュリティが高いのかと見ますと、これは軍事レベルであり、あるいはリアルタイムでのお金の決済、ここが……やはり決算についてはハッキングすればハッカーが一番実利がありますので、狙ってくると思うんですね。そこで、世界中のどこのシステムが今までハッキングされてないかというふうに見たときに、お金のシステムだと、2016年時点でのリサーチなんですけれども、世界に2つしかなかったと。世界で使われているSWIFT(スイフト)とかは全部ハッキングされちゃったんですね。どこが残っているかと言うと、香港のオクトパスと、日本のスイカですね。
これが残っていて、これは両方とも元ソニーのエンジニアの日下部進さんが、アドバイスをして、運用をやっているというとこなので、もちろん日下部さんが、おつくりになったフェリカも、おサイフケータイなどでも使われているんですが、これはNTTドコモさんで去年の9月にハッキングされたように、運用の仕方では同じものを使っていてもダメだったケースももちろんあるんですが、基本的にはハッキングされていないことが世界では珍しいので、それを参考にして。
あと立石さんという方が『フェリカの真実』という本を出してらっしゃったので、それを参考にして、日下部さんにいろいろとセキュリティについてのレクチャーをいただき、今回ビジネスを始めたということになります。
また、徳岡先生の、「今なぜSTEMが必要なのか」という話の中で、今はやはりスマホとクラウドが発達したので、昔の5教科、例えば中学・高校で言いますと、国語・社会・英語・数学・理科という中で、国語・社会・英語というのは、クラウドとスマホで一生学べるわけですね。なので、学校で学ばなくてもいいということから、イギリスのシニアスクールと言われている13歳から18歳までの学生たちは、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング、マスマティックス、さっきおっしゃったSTEMですね。ここにみんなシフトしているということがあると思います。また「4つのS」スピードについてなんですが、これについても私がオックスフォード大学のオックスフォード・ワクチングループと言うものの、100%を傘下に収めています、小児医学部の特別戦略アドバイザーをやっているので、去年その実例を見ました。
どういうことかと言うと、日本は去年、ワクチン後進国になっちゃったとマスコミで騒がれたように、日本の当局も日本の製薬会社も、SARS、MERSの次の3番目のウイルスを意識してなかったんですね。ところが、オックスフォード・ワクチングループのポラード教授は、2回目のMERSが出たときに、「これは3回目も出てくるぞ」ということから、アメリカとヨーロッパとイギリスの当局に対して、「次きた時には緊急承認というものが必要です」と、5年以上前から用意、準備をしていたと。で、実際にそれが起こって、どうなったかと言うと、ワクチンというのは例えばポリオなどは、最初にワクチンが発見されてから、承認されるまで30年かかったんですね。他のワクチンでも早いものでも10年かかると言われていたのを、ポラード教授は、アメリカ、ヨーロッパ、イギリスの当局に対して「こういうやり方であれば、11カ月で終わるんじゃないか」ということを示して、それをやってしまったということなので、今までワクチンビジネスというのは、癌マーケットに比べて、1/40という非常にニッチな市場だったのが、ここにきてスピードが出ることによって、癌マーケット以上になるんじゃないかと言われている。
これが、まさにGAFA+マイクロソフトみたいなものが日本の企業の中から出てこないという1つの理由であり、基本的には日本の中にもさっきのSTEMの中のテクノロジー、エンジニアリング的なものとしては非常にいいものがあります。これを日本がまた世界でNo.1のテクノロジー大国と言われるためには、その中でもスピードが一番重要じゃないかと、そういうことだと思います。以上です。

「お金のデジタル化」は経済だけではなく、あらゆる分野のルールを変える

今井:ありがとうございます。今回のこの本が生まれた背景には、本当にいろんな世界の教育であったりですとか、ワクチンであったりとか、さまざまな背景があって、大きな世界の覇権を巡る戦いがあってということだったんですね。特にお金のデジタル化っていうところと、コロナウイルスの話がこんなふうに関係してくるんだなって、すごく意外だなということでびっくりしました。
 
貝瀬:そうなんです。房社長から、お金のデジタル化ってお金だけの話じゃないっていうか、もっとコア・核になる、セキュリティの技術の話であり、でもそのセキュリティの技術っていうのは、今お話があったワクチンパスポートもそうですし、その他、普段、我々が使っている身分証明・IDみたいなものにもつながっています。ということは、お金のデジタル化=セキュリティ技術。これがもうどんどん進化していく、変わっていくことで、当然、我々の生活、仕事のみならず、あるいは世界の在り方そのものが変わってしまうんじゃないかということで、非常にこの本は勉強になるので、多くの方に読んでいただきたいなと思っております。
 
房:今、貝瀬さんからお話があったように基本的に今、日本の皆さんが興味があると思うのが、若い方でも老若男女でも、「いつこのコロナの渦から光が見えてくるのか」と「経済の再開」っていうようなことだと思うんですね。
その場合は、やっぱりワクチン接種もちろんなんですけど、ワクチン接種記録。ちゃんとした偽物じゃないものを水際対策で使えるような、本物だけ、偽物を排除できる、あるいはプライバシーを尊重できる、そういうシステムとセットであれば経済が開発できると。2019年には3119万人の訪日客がいまして4.5兆円を日本のインバウンドビジネスに貢献しているわけですね。これが今はほぼゼロの状況になっちゃっている。これを再開するには、ワクチン接種+ワクチンの接種記録が見えるワクチンパスポート。この2つが重要であると思っていまして、その中で私としては基本的にはテクノロジー、こういうものがどういうふうに役立っているかということを、若い人も政治家の方たちも政治に関心のある方たちに知ってもらい、日本をこれから変えていきたいと。
特に日本は1980年代後半から90年代の前半は、テクノロジーNo.1の国だったんですね。そこに戻りたいとお考えの方たちにぜひこの本を読んでいただきたいと思います。特に徳岡さんも言っています、4Sの内の1つ、シナリオ、または、ストーリーと呼んでいる、長期的な展望、これを持ちたいと思っている人に、ぜひこの本を読んでいただきたいと思っております。よろしくお願いします。
 
今井:ありがとうございます。 今、お話しを伺っていまして、ワクチンパスポート、すごく大切だと思いますし、STEM教育、サイエンスだったりっていうところもすごく大事だなと思うんですけど、どうしてもやっぱりワクチンを受けられないのっていう方も一部いらっしゃったりする現実もあるので、そういう方たちのことも考えながら、皆さんが幸せになれるルールづくりっていう、心の部分もすごくSTEM教育に加えて大事なのかなぁなんて思いました。
今回ご紹介した房さん、徳岡さんのご著書、『デジタルマネー戦争』、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。本日は房広治さんと、徳岡晃一郎さん、そしてフォレスト出版編集部の貝瀬さんに、お越しいただきました。どうもありがとうございました。
 
房・徳岡・貝瀬:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?