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文豪たちの悪口が笑えるほど幼稚でした

こんにちは。
フォレスト出版・編集部の美馬です。

先週放送のアメトーーク!(テレビ朝日)『本屋で読書芸人』をリアルタイムで観ていました。読書好き芸人たちが今一押しの書籍を思い思いに語り合うこの回、大好きです。

今回、私が週1で通っている新宿紀伊国屋書店さんで収録されていたようです。放送翌日にも訪れてみたところ、もうすでにアメトーーク!で紹介された書籍のコーナーが設けられていました。もちろん、気になっていたものは即買いしました。

そのうちの1冊がこちら。
『文豪たちの悪口本』(彩図社)

Aマッソ加納さんが紹介されていたなかなかマニアックな書籍。気になりすぎて視聴中にAmazonのカートに入れてしまったほど。と言うのも、今、人気アニメ作品「文豪ストレイドッグス」にドはまりしているところだったからです!!(原作は漫画・KADOKAWAより)

太宰治、中島敦、芥川龍之介といった文豪たちがキャラクター化されストーリーが展開されていきます。それぞれの文豪にちなむ作品や、ペンネームなどの名を冠した異能力を用いて戦うアクション作品です。

作品について、原作者の朝霧カフカ氏は「文豪がイケメン化して能力バトルしたら絵になるんじゃないかと、編集と盛り上がったから」と話しています。いや、本当にその通り。めちゃくちゃ恰好良いんです。

作中に登場する織田作之助、坂口安吾、太宰治の切ない男の友情に感極まり、3人の関係図を調べ上げたほど。戦後に同じ「無頼派(新戯作派)」と呼ばれた3人。有名な話ですが、のちに座談会も催されていたようですね。 そのときのエピソードに、 織田と坂口ばかりを撮っていたカメラマンに対して、酔った太宰が「俺も撮れよ~!」と言って撮影されたのがあの有名な1枚なんだそう。

このエピソード、「ああ! アニメにも出てくるあのバーの話か!」とうれしくなりました。何かと影響されやすい私は、現在進行形で坂口安吾の『白痴』を読んでいるところです。

・・・

さて、そんなキャラクター化されてより一層人気を集めることになった文豪たちの、リアル悪口をみてみましょう。

まずは人間失格、クズ男と称される太宰治から。ちなみに、「文豪ストレイドッグス」の太宰治も超自由人。人を巻き込み困らせる天才ですが、周りからの信頼は厚くやるときはやる頼りになる男の位置付けです。

それは、太宰治から川端康成への悪口。(というより恐喝?笑)

「刺す」

太宰が『文芸通信』に投稿した川端に対する抗議文
『文豪たちの悪口本』(彩図社)より

この一言。なんとも言えない幼稚さと怨恨の念がひしひしと伝わる一言ではありませんか。「殺す」ではなく「刺す」。このたった2文字に太宰治らしさが詰め込まれていると思いませんか⁉ 

この「刺す」に至った経緯は芥川賞をめぐるトラブルが発端だったようです。第一回芥川賞に太宰の短篇「逆行」が候補作として選ばれていたようですが、選考委員だった川端が「私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」として別の作品を推薦したことによるものだったとのこと。それにしても、10歳も上の川端に「刺す」と言える度胸はある意味さすがです。

そんな太宰に対して志賀直哉が発した悪口がこちら。

とぼけて居るね。
あのポーズが好きになれない

雑誌社主催の広津和郎と志賀直哉の座談会にて
『文豪たちの悪口本』(彩図社)より

あのポーズとは……あのポーズです! あのポーズと言いつつ、きっと太宰治の存在自体が好きになれないのでは? 女子の悪口の言い方あるあるですね。あの子が嫌いとはストレートには言えないから、あの子の服装が嫌いとか、あの子のしゃべり方が嫌いとかなんとか。周りからチクチク攻めていくタイプの悪口です。

当時、太宰治、坂口安吾、織田作之助らが敵対視していた人物が、志賀直哉。先ほど述べた彼らの座談会も、志賀直哉に関する話題から始まっていたほど、バチバチだったわけですね。

そして、同じく志賀直哉が織田作之助に対して発した悪口。

織田作之助か、嫌だな僕は。
きたならしい

雑誌社主催の広津和郎と志賀直哉の座談会にて
『文豪たちの悪口本』(彩図社)より

普通に悪口!! ドストレートすぎる直球悪口です! 「文豪ストレイドッグス」作中のキャラクターのなかでも群を抜いて格好良すぎる織田作之助が(個人的な意見です)、「きたならしい」と言われているのはさすがにショックですが、志賀も何か考え合っての発言でしょう。(笑)

この発言をきっかけに、無頼派3人の志賀に対する嫌悪感が増したようですが、じわじわと文面上で悪口を言い合う姿も物書きならではです。そのやり取りについては、ぜひ『文豪たちの悪口本』(彩図社)で楽しんで読んでみてください。

最後に一つ、私がとびきり大好きな悪口を。

何だ、おめえは。
青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって。

中原中也が太宰治に絡んだ際に発した言葉
『文豪たちの悪口本』(彩図社)より

最後までお読みいただきありがとうございました。

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