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【あなたは大丈夫?】資産継承を先送りするとふりかかる、大きな代償にご用心!

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
親族間における資産継承、いわゆる相続に関する話を、あなたのご家族は進めていますか?
 
事前にちゃんと進めている方は問題ないと思いますが、デリケートな話だけについつい先送りにしてしまう家族も多いようです。
 
でも、資産継承を先送りしてしまうと、いざというとき、とんでもない大きな代償がふりかかることをご存じでしょうか?

その代償がふりかかる先は、相続する側です。特に、親御さんや親族が不動産を持っている場合、注意が必要なようです。

空き家・古家再生のスペシャリストである三木章裕さんは、新刊『実家の「空き家」超有効活用術』の中で、資産継承を先送りにする危険性を、ご自身の体験談を交えながら具体的に語ってくれています。今回は、同書の中から該当箇所を一部編集して全文公開します。


空き家を生み出さないために、すぐにすべきこと

 現在の加速度的な空き家の増加は、高齢者が自分の家に住めなくなることで生み出されています。不幸にしてお亡くなりになられることだけが空き家を増やしているわけではありません。
 例えば、高齢で身体の衰えが顕著で、自宅では暮らせないため、生活の支援が受けられる高齢者住宅や高齢者施設に入居してしまう。
 また、身体の老化で病気やケガにより入院を余儀なくされる。
 その上、昨今の長寿化社会では、身体は元気なのに認知症を発症して、まともに日常生活が送れなくなり、高齢者施設や入院を余儀なくされている人もいます。
 このように、本人が生きている間でも、空き家を生み出してしまう時代なのです。
 では、人が住まなくなった家が長く放置される空き家にしないようにするには、どのようにすればいいのでしょうか。
 それは、相続が発生するまで待っていると、何十年後になるかもわかりません。それでは遅いのです。
 その前に、その家の相続時に引き継ぐであろう人たちが、高齢者に代わっていろいろな裁量を自分たちに与えてもらって判断し、売却や物件を担保にした融資を受けたり、賃貸住宅として貸したりなど、契約などの法律行為を行なうことができる権限を得ることです。
 認知症や寝たきりになると、本人が契約書にサインして、法律行為を行なうことはできなくなります。
 こうなると、みすみす今売却すれば高く売れる自宅も売れず、いい条件で賃貸として貸し出せるのに賃貸契約が結べず、解体してコインパーキングなどの有効活用もできず、多額の入院費や施設費をまかなうために、自宅を担保にして融資を受けることもできません。
 また、本人が確認できなければ、預貯金の引き出しもできません。まさに、今、面倒を見ている人にすべての負担がのしかかるのです。
 このような問題を回避するために、相続を待つのではなく、高齢者が元気なうちに、権限を信頼できる家族・親族に託せる制度があります。
 このような制度を活用することで、生前から空き家を有効に、家族や社会のために役立てることができるようになります。

一人暮らしの叔母のすべての支払いを立て替えた半年間

「おばさんが自宅で朦朧として即入院が必要です! すぐ来てください!」
 私が午前中、仕事をしていると、携帯に一人暮らしの叔母(当時80歳)を訪問看護している看護師さんからの電話がありました。
 その前日の夜は、例年になく記録的な寒さでした。
 叔母は石油ストーブを使っており、どうやら夜中に灯油が切れたようで、そのまま寝ている間に低体温症になって、朝、訪問看護師さんが来た頃には、簡単な応答はできるようでしたが、起き上がることさえできない状況でした。
 しかし、一人暮らしの叔母ですから、誰か身内の者がいないと、家から連れ出すことも、入院の手続きもできない状況なので、甥である私が急遽、叔母のもとに向かうことになったのです。
 家に着いてすぐ「おばさん!」と声をかけると、かすかな声で「これを預ける」と言って、自分の脇の棚にあった、犬のパッチワークのついた手提げカバンを指さしました。あまりにか弱く目線も定まっていない様子なので、寝ぼけているのかと思いましたが、そのカバンを覗いてみると、銀行の通帳や印鑑、キャッシュカードなどの貴重品らしきものが入っていました。
 とりあえずそれをだけを預かり、看護師さんとともに叔母を病院に運び込みました。その間も叔母は、声をかけても、うつらうつらしたような状況で、正気なのか、うわごとなのかわからない言葉で、私と看護師さんに何か話かけていました。
 病院に着くと、すぐ診察室に運び込まれ、2時間ほど、私は待合室で待たされました。診察室はかなり切迫していた感じで、看護師さんやお医者さんが入れ替わり立ち替わり出入りしているのが見えていました。
 もう叔母は持たないのかもしれないと思い始めた頃に、診察した医師から呼び出されました。
 医者が開口一番、
「今は、いつどうなってもおかしくない状況です。覚悟しておいてください。とりあえず今は、点滴を打って眠っています。肺も心臓も非常に弱っています。できるだけのことはしますが、1週間持たないかもしれません!」
 と言います。
 つい1週間前まで元気で電話で話していた叔母なのに、これほど激変するのかと、私は容態の急変に驚きました。
 少し容態が落ち着いているので、とにかく明日また病院に行くことにしました。
 とにかく、その日は入院手続きをして、「何かあれば、すぐに駆けつけます」と言って、いったん叔母の家の戸締りをし、近所の方に声かけをしました。
 妻にも様子を話しましたが、1週間前に叔母と電話で話していたのでびっくりしていました。しっかりした様子で受け答えして、今年の冬は寒くてかなわないと愚痴をこぼしていたので、元気だと思っていたようです。
 叔母は、私の亡くなった母の妹で、結婚もしていませんでしたので、本当に身内は私しかいないのです。
 そこから1週間は、毎日病院に見舞いに行きましたが、ただ寝ているだけで、それも、口には酸素吸入、全身にはいろいろな数値を検査する装置が取り付けられ、ずっとピッピピッピと鳴っていました。
 両腕もこれでもかというくらい、いろいろな点滴がぶら下がっていて、到底意識が戻りそうな様子ではなく、私も覚悟して、葬儀やお墓のことまで考えるようになっていました。
 それから2週間ほど経つとかなり状態は良くなり、意識も少し回復してきて、私が声をかけて笑いかけると、笑い返すようになってきました。
 最初に医師が言った、危険な状態からは脱しているようで、日に日に顔色も良くなってきているようでした。
 その頃になると私も冷静になってきて、叔母から預かったカバンの中身を確認することにしました。
 叔母の貯金はその時点で200万円ほど、年金が月15万円ほど、あとは自宅の不動産がすべての財産でした。
 この間も、私は病院の入院のための保証金や衣服代やおしめ代など、10万円以上立て替えて病院に支払っていました。
 そろそろ1カ月が過ぎようとした頃、病院の支払いもあるので、銀行に出金に行かなければならないと思い出したので、訪問看護に来ていた看護師さんに、
「入院代の支払い等があるのでお金を出したいのですが、もしかしてキャッシュカード番号とか聞いていますか?」
 と尋ねたのですが、知らないとのこと。
 そこで、カバンの中も調べたのですが、カード番号をメモ書きしているようなものもなく、カードによる引き出しは無理そうだと気づきました。
 そのとき、最初によぎった思いは「どうしよう……」でした。
 たとえ通帳と印鑑があっても、本人が窓口に行けない、本人が出金伝票にサインできない状況では、今の日本の金融機関ではお金を下ろすことができません。
 私は、一か八か、少しは意思表示ができる叔母に、「カードの番号とか覚えてる?」と話しかけましたが、目を閉じて首を横に振りました。
 もうすっかり記憶が混濁しており、本人も何がなんだかわからない状況になっていて、その場そのときだけ、なんとか反応している感じです。
 年齢的に認知症もあるだろうと医師や看護師さんは言ってくれるのですが、高齢者があれだけ危機的な身体的状況になれば、もうまともにいろいろなことに反応できなくなっているのではないかと思いました。
 とりあえず叔母の支払いは、私のほうで立て替えるしかないと覚悟して、病院の支払い等をし始めました。
 病院の入院費は毎月約18万円、家のほうに来る、電話代、上下水道代、ガス代、NHKの支払い、その他もすぐ停止しましたが、新聞代、保険料、生協費等諸会費、それと自宅の固定資産税で、月割りに計算しても合計毎月5万円くらいは別に支払うことになりました。
 この間も叔母は、酸素マスクをつけ続け、何も食べられず点滴の栄養だけで、小康状態で生き続けました。
 気持ち的に救われるのは、見舞いに行き、声をかけると笑顔を作ろうとすることです。どこまでわかっているのかは疑問ですが……。
 半年が経ちました。私が立て替えている金額も150万円を超えるくらいになりました。その間、叔母の銀行口座には、2カ月に一度支払われる年金が着々とプールされていましたが、手出しができません。
「2週間も持たない」と言われていた叔母ですが、点滴と酸素吸入だけで、かれこれ半年も生きており、まだまだこの状況が続きそうな感じでした。
 さすがにこれ以上長期の入院が続くのであれば、なんらかの手立てを打たなければならないと感じ始めて、法定後見人の申請を裁判所に出すことにしました。
 書類を作成して申請して面談を受けて法定後見人になるまでには、それから、まだ2カ月がかかりました。
 その間もずっと、私が叔母の支払いを立て替えていました。
 私は、なんとか立て替えることができましたが、普通のサラリーマンの家庭で突然こんなことになると、家計はめちゃくちゃになるのではないかと思いました。
 認知症になっていなくても、こんな急病や入院があると、高齢者は入院中にボケてしまう方が多く、正常な判断能力を失う方も多いと、病院の医師や看護師さんが言っていました。
 法定後見人になると、叔母の口座名義は変更され、後見人名義の銀行口座になります。そこでやっと、叔母のところに入ってくる年金から入院費や生活費を払えるようになりました。
 しかし、法定後見人は裁判所に選定されており、毎月の収支報告など、領収書とともに報告する義務が生じます。
 最近は、身内の後見人による横領が多いようで、かなり細かくチェック・監視されます。どちらかというと、とても窮屈な制度で、例えば、庭の木を植木屋さんに剪定を頼んでも、すぐ10万円は超えてしまいます。
 留守をして生え放題の雑草や木は、近隣に迷惑と環境の悪化を起こし、用心が悪くなります。
 しかし、年金でギリギリの生活の叔母の支払いでは、そのようなものはかなり高額で、裁判所はあまりお金をかけさせて、叔母のお金が減るのを嫌がります。そのため、必要と思われることも、あまりお金を使うこともできず、実は裁判所に言わず、私が費用を支払ったものも結構ありました。
 叔母が元気なら当然するであろうことでも、裁判所はそうは見てくれません。私が叔母のお金を好き勝手放題にしないよう監視の目は緩めません。
 裁判所に監視されているような日々が、なんと結局、法定相続人に選定されてからも半年近く続き、叔母は静かに病院のベッドで亡くなりました。その間一度も酸素マスクも外せず、1食も食事をとらず点滴だけで生きていました。1年以上、点滴だけで生きていたのです、
 もちろん会話もままならずやせ細ってしまいました。最後は静かに病院の天井を見つめながら、眠るように亡くなりました。
 病院に担ぎ込まれてからは、寝たきりで朦朧としたままでした。1年以上ずっと見舞いに来ていたこともわかっていたのかどうかわかりません。
 年がいってからも、元気で大きな声で笑っていた明るい人でしたが、もうそこにはその面影はなかったです。
 
 私はつくづく思いました。
 これからの長寿社会では、ちょっとしたケガや入院、施設への入所から認知症の症状が出たり、寝たきりになるようなケースがますます増えてきます。私の叔母だって、1週間前までは、妻と冗談を言いながら電話していたのですから、突然想いも寄らない急変を高齢者は抱えているのです。
 このようなことは、皆さんの身の回りにも起こりうるということです。
 
 これからは、このような突然の出来事も起こりうると思って、事前にどのような手が打てるか、対処法を考えて学んでおかなければなりません。ちゃんとその対処法はありますので、私のようなとんでもないことにならないよう心掛けてください。
 私も事前にこの対処法をしていれば、かなりスムーズだったと思います。
 これからは、年齢とともに日常の生活ができなくなり、介護を受けたり入院したりして、そこで長く生き続けるようになります。
 衰えると、記憶の喪失や字も書けなくなりますので、いろいろなことを判断してサインすることや適切に応えることができなくなります。
 そんなときに、家族であるあなたはどう対処できますか。
 ハンコも押せないのですから、家の火災保険だって新しく契約できません。施設に入所して住まなくなった家だって、本人に意思決定能力がないと見なされると、自宅の処分さえできません。
 所有者が生きていても、判断能力がなく、物件を処分することができなかったり、人が住まないのに手がつけられなくて荒れ放題になってしまっている家もたくさん出てきています。
 相続が発生する前から、すでに手のつけられない家が生まれています。これは、長寿社会が現代の空き家の増加の大きな要因になっています。
 空き家問題は、このような状況になる前から事前に対処しておかないと解決できない問題です。
 相続してからなら相続人になれますが、まだ本人は存命で法律行為ができないと、すべての資産は、まるで凍結されたような状況で誰も手出しができなくなるのです。
 そのとき、あなたはどうしますか?

いくつになっても財産管理ができるわけではない

 先ほどの私の経験では、叔母が身体上の問題、意思能力や判断能力の問題が起きて、その間、私に大きな負担がかかったことはおわかりいただけたと思いますが、これからは、このような出来事は皆さんにも当たり前のように降りかかります。
 平均寿命と健康寿命という言葉はご存じですか?
 平均寿命は生命として存在する年数です。また、健康寿命というのは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。
 現在は、長寿化のおかげで、この平均寿命と健康寿命との年数のギャップが大きくなってきています。短いケースで1年未満から3年程度、長いケースでは、なんと15〜20年の場合もあるようです。
 生きていても、日常生活が制限されて、意思能力を喪失してしまうと、財産の管理や処分といった行為ができなくなります。
 このような状況に高齢者がなる原因は、単に老化による衰えと、もう1つの原因が「認知症」の発症です。
 これが困るのです。
 
◎本人の代わりに預貯金が引き出せない。すなわち、家族や親族が支払いを立て替えなければならない。
◎本人名義の不動産を売れない、貸せない、直せない。
◎本人の財産を把握できない。
◎贈与や保険契約などの相続税対策が取れない。

 
 こうなるともう、相続対策をしようにも何も手が打てません。
 それどころか、その本人の財産に対して手出しもできません。
 長期にわたっての入院や介護とともに、経済的にも重く家族に負担を強いります。
 このような「認知症」に認定されたり、予備軍と呼ばれる方を含めると、平成27(2015)年の厚生労働省の推計では、862万人にものぼると言われています。
 これは、高齢者人口の4分の1、すなわち4人に1人が認知症になる可能性があるということです。あなたのご両親も十分に可能性があります。
 本人の意思能力や判断能力が失われた期間にどう対策するのか?
 これからは、相続対策でなく、生前対策、認知症対策です。このような対策に有効なのが「家族信託」という制度です。

※「家族信託」の詳しい解説は、今回紹介した書籍『実家の「空き家」超有効活用術』でご確認ください。

【著者プロフィール】
三木章裕(みき・あきひろ)
収益不動産経営コンサルタント。一般社団法人日本不動産コーディネーター協会理事長。一般社団法人全国古家再生推進協議会顧問。指導先の資産形成額が300億円以上にのぼる、不動産による資産づくりの専門家。
バブル絶頂期には不動産仲介で、1人で1億円以上稼ぎ出し仕事や遊びを謳歌するも、バブル崩壊とともにほとんどの資産を失い10数億円の借金を背負う。しかし、代々大阪商人の家系に育ち、言い伝えられた商人道と蓄財術を活用して復活を図る。
「不動産投資は一部のお金持ちのものでない。すべての人が経済的自立をするために、もっと取り入れるべきだ」という理念のもと、一般のサラリーマンでも無理なくできる資産形成としての不動産投資のノウハウを伝授している。特に、現在は全国に1000万戸を超えるといわれる「空き家」を活かして手軽に収益化するノウハウを提供。「空き家」という社会問題の解決し、住まいを確保することが困難な人々と投資家をマッチングして、たくさんの人を豊かで幸せにすることをミッションに日々邁進している。大阪商人に口伝で伝わった「長者教」伝承者。喜ばれる大家の会事務局長。著書に『空き家を買って、不動産投資で儲ける!』『儲かる! 空き家・古家不動産投資入門』(以上、フォレスト出版)などがある。

いかがでしたか?
 
何もしなければ金食い虫となってしまう実家の「空き家」ですが、上手に活用すれば金食い虫どころか、所有者にお金が残る、資産として潤してくれる“富動産”に変わるお宝になります。
 
【売る】【使う】【住む】【貸す】――。
 
日本で随一の古家・空き家再生、利活用のスペシャリストが、「負動産」を「富動産」に変える4つの目的別対処法をわかりやすく解説した新刊『実家の「空き家」超有効活用術』は、全国書店、ネット書店で発売中です。興味のある方はチェックしてみてください。

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▼新刊『実家の「空き家」超有効活用術』の「はじめに」「目次」の全文が読めます。

 
▼関連記事もあります。

▼今回紹介した新刊『実家の「空き家」超有効活用術』について、著者の三木章裕さんとトークしたVoicy音声はこちらです。
 

 
 
 


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