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「ハーゲンダッツ」と「ガリガリ君」、それぞれの戦い方を分析する

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
唯一無二のプレミアムリッチ商品・サービスを、全身全霊をかけて1点開発し、それを「ヒット商品」にし、収益を上げる――。
 
いわゆる「一点突破戦略」で成功しているビジネスは、すでに多く存在します。
 
超話題の人気商品本格ボロネーゼ専門メーカー「ビゴリ」のオーナーにして、事業創出・業務改革コンサルタントの石川潤治さんは、新刊『たった1つの商品で利益を上げる』の中で、すでに世の中で一定の支持を得て成功している一点突破戦略商品をいくつか紹介しています。その中の1つ、氷菓子の2大巨頭「ハーゲンダッツ」と「ガリガリ君」がなぜロングセラー商品として存在続けているのか、独自の視点から分析しています。
 
今回は、その該当箇所を一部編集して公開します。

異なるワンコンセプトで違う山の頂点に立つ
「ハーゲンダッツ」と「ガリガリ君」

「氷菓子」というカテゴリーの中で、細分化・特化したターゲットを設定し、潰し合うことなくそれぞれにヒット商品となった例が、「ハーゲンダッツ」と「ガリガリ君」です。
 どちらも氷菓子ではありますが、片方はアイスクリームで、もう一方はアイスキャンディー。さらに、それぞれのブランド戦略も商品ターゲットもまったく異なるこの2つの商品について深掘りしていきましょう。
 まず「ハーゲンダッツ」は、〝子どものおやつ〞だったアイスクリームを、「大人が楽しめ、大人が甘いもので幸せになれる」と変化させることで新しい市場を作りました。
 価格としては1つが300円近くしており、一般的なアイスクリームより2〜3倍高い価格設定になっています。必然的に買うのは、子どもよりもお金に余裕のある大人が多くなります。
 大人向けの商品だけあって、食べ方も店で買ってすぐに封を切ることは想定していません。家に帰って優雅に食事を楽しんだあとのデザートや、お風呂上がりのまったりとした時間を楽しむお供として設計されています。そのため、しっかりとしたカップに入ったアイスクリームをスプーンですくって食べる、という「食事的」な側面を持たせています。
 テレビCMも商品そのものをダイレクトに強調するようなものではありません。初期のCMであれば、ダンスをする男女のバックにフラメンコ調のBGMがかかり、男性が女性に食べさせてあげる官能的な演出になっています。
 一見すると何の商品CMかわからないようになっていることで、視聴者は商品認知よりもシチュエーションを先にイメージし、結果的にハーゲンダッツをそのシチュエーションに合ったフルネス度の高い存在と認識するようになるのです。
 
 一方で「ガリガリ君」は、本来は家に帰って両手を使って食べるものだったかき氷を、外で片手でも気軽に食べられるようにした商品です。
 子どもが大好きな昔ながらのアイスキャンディーのような見た目ですが、実際に食べてみると中は氷になっていて、サクッと食べて火照った体を冷やせる。価格も100円以下に抑えられていて、まさにファストフード感覚で、食べる回数を増やしてもらう戦略が見てとれます。
 ちなみに、ガリガリ君のターゲットは子どもだけだと思いきや、実はそれだけではありません。
 親世代に対しても、幼少期の懐かしさを感じさせる狙いもあるようです。親子で一緒に食べるシチュエーションもあるため、子どもから40代までの幅広いターゲットを設定しているようです。
 CMはきわめてシンプルでわかりやすい作りです。「ガリガリ君」という名前の少年が走ったり転んだりしながら(要するに外で遊びながら)汗をかき、その合間にアイスキャンディーを食べる。BGMもシンプルで商品名を何度も連呼するような、昭和のCMっぽさを前面に出しています。
 また、話題性のつくり方もおもしろいです。
 単一商品ながらも、消費者を飽きさせない工夫も着目ポイントです。ソーダやコーラやオレンジといった定番の味だけではなく、ヨーグルトやコーンポタージュ、梅、アイスコーヒーなど変わった味のものも多数出しており、その種類は150種類以上あるようです。味そのものというより味のバラエティが評判になり、広告予算をかけずに話題づくりに成功しました。
 この2つの商品が興味深いのは、さまざまな種類の味を出していながら、コンセプトはたった1つということです。長年にわたりコンセプトの軸をブラさずに商売をし続け、ヒット商品を作っているところです。
 しかも、狙っているコンセプトがお互いにまったく別なので争うこともなく、お客様自身がシチュエーションに合わせて、両方の商品を使い分けている状況が生まれているのです。
 この2商品の戦略は、商品開発におけるコンセプトの軸を持つ重要性がよくわかる事例です。

【著者プロフィール】
石川潤治(いしかわ・じゅんじ)

株式会社ジェイ・イシカワ 代表取締役社長。事業創出・業務改革コンサルタント。
1970年大阪府大阪市生まれ。学生時代に30種のアルバイトを経験。当時より、起業の夢を抱く。大学時代から起業したり会社員になったりを繰り返し、1999年、PCCW JAPAN(香港・通信事業者)に入社。ブロードバンド事業の創出をする新規事業開発室長を務める。2001年、株式会社ジェイ・イシカワを創業。自身が持つ特許(2002-320045)リース・管理および、事業創出コンサルの道を歩み始める。2002年、ワーナー・ブラザース・ジャパン(米国・映画メジャー)入社。部門のDX化を軸に業務改革を推し進め、クリエイティブシニアマネージャーを務める。2011年、株式会社ワールド(国内・アパレル)入社。業務改革推進本部・物流統括部長を務める。2016年、長年に渡るコンサルティングで軸としてきた「一点突破による売れない時代の売れる戦略」を具現化すべく、ボロネーゼ専門店ブランド「ビゴリ」を立ち上げ。ボロネーゼという単一メニューだけのフランチャイズで30店舗もの加盟店を有し、各大手メディアでも取り上げられる。現在、「中途半端を捨て一点突破」「ファンダムに不況なし」などをモットーに、40社を超えるさまざまな業界のコンサルティングを行なう傍らで、個人の方々に独立や転職を有利に進める実践的手法の勉強会を定期的に開催。社業理念は「スピード、柔軟性、一点突破力を発揮し、小よく大を制す」。

いかがでしたか?
 
この「一点突破戦略」は、飲食店オーナーはもちろん、中小メーカーや個人事業主、各サービス提供者など、多くのビジネスに活かすことができます。大手には決してできない、中小零細だからこそ可能なビジネス戦略の重要エッセンスを徹底解説したのが、新刊『たった1つの商品で利益を上げる』です。全国書店の「ビジネス」「起業・副業」「店舗経営」などのコーナーで絶賛発売中です。興味のある方はチェックしてみてください。

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