見出し画像

辛いだけじゃない! 調理におけるスパイスの4つの働き

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

料理に「スパイス」を使うと聞くと、一般的には、「辛い」「香りが強い」といったイメージを持つ人が多いようです。ファーストフードやコンビニ商品などで「スパイシー」と名がつく商品がおおむね「辛い」というイメージで使われているため、余計にそのイメージが強くなっているのかもしれませんね。

でも、スパイスを少しでも知っている人にとっては当たり前なのですが、スパイスは辛いものだけではありません。辛くないものもたくさんあります。

スパイスコーディネーター協会の理事長としてスパイス活用の普及に努め、日本国内はもちろん、欧米諸国のスパイス研究者に高く評価されている、日本におけるスパイス研究の第一人者として知られている武政三男さんは、監修した書籍『スパイス活用超健康法』の中で、調理におけるスパイスの4つの働きについてわかりやすく解説しています。今回は、本書の中から該当箇所を一部抜粋・編集して紹介いたします。

スパイスの基本作用

 スパイスと医学が古くから密接だったというお話をしました。
 しかし、考えようによっては、人工的に薬物をつくるノウハウなどない時代ですから、自然界にある植物を病気の治癒、体調管理に利用するのは当然の発想だったのかもしれません。現代流にいえば、フィトケミカルといったところでしょう。
 古代から薬理作用、抗菌作用、抗カビ作用が認められていたスパイスですが、時代が中世、近世と進むと、次第に食文化が発展し、スパイスに求められる役割も幅を広げていきます。
 調理の際にスパイスに求められる効果は、「香りづけ作用」「辛味作用」「臭い消し作用」「着色作用」にまとめられます。

p.28図

『スパイス活用超健康法』p.28より

 これらは、現在、調理の目的に合わせた「スパイスの基本作用」と呼ばれています。
 香りづけ作用は、ヨーロッパでは特に尊重する傾向にあります。フランスの煮込み料理に用いられるブーケガルニはその代表で、さわやかな香りで料理を引き立ててくれます。また、台所でカレーをつくっていると、「今日はカレーだな」と嗅覚が刺激され、食欲をかき立てられますね。空気中に漂う香りは味覚よりも早く脳に達するため、ある意味、人への影響力が大きいのです。
 なお、食用になるハーブは、すべてスパイスの仲間です。スパイスの多くは香りに特徴があるのです。

▼スパイスとハーブの違いについてはこちら

独特の辛味は、痛覚で感じる

 辛味作用は、それぞれのスパイスが持つ刺激的なピリ辛風味です。
 甘味、酸味、塩味、苦味、旨味は味の「五味」と呼ばれ、舌で感知しますが、辛味や苦味は喉や口腔内の皮膚感覚でとらえるという違いがあります。
 さらにいうと、辛味は「熱さ」「痛さ」を感じるのと同じ痛覚で感じ取ります。英語のHOTという単語は、熱さと辛さの両方の意味がありますね。
 コショウ(ペパー)にはピペリン、トウガラシ(レッドペパー)にはカプサイシン、ショウガ(ジンジャー)にはショウガオールとジンゲロン、ニンニク(ガーリック)にはアリシン、ワサビにはアリルイソチオシアネートと、ひと口に辛味といっても、その成分・性質はさまざまで個性があります。これらをブレンドして奥深い味を出すことこそ、スパイスを楽しむ醍醐味なのです。
 1種類の辛さだけを突出して効かせる使い方は、正しいとはいえません。
 臭い消し作用があるスパイスの代表がセージです。
 古いドイツ語で豚肉(雌豚の塩漬け肉)をソーといい、腸詰めにするときひき肉の生臭さを消すためにセージを使いました。こうしてできた料理がソーセージです。セージはそのほかの肉料理にもよく使われます。
 セージと並んで矯臭・脱臭作用が強いものにクローブ、タイム、オレガノなどがあります。どれも肉料理、魚料理に登場する、馴染みのあるスパイスですね。
 当時は今ほど衛生環境も良くなく、流通する肉や魚の下処理も不十分で生臭かったのでしょう。それぞれのスパイスの香りを楽しむと同時に、素材の生臭さを消す役割として重宝していたと想像されます。

食欲を増進する、鮮やかな色の演出

 着色作用の代表としては、ターメリック(ウコン)の黄色、サフランの黄金色、パプリカの赤色が挙げられます。いずれも香り、辛味は少ないスパイスですが、鮮やかな色は食欲を増進させてくれます。
 カレーの黄色、パエリアの黄金色、ハンガリーの赤いスープは、料理そのものを象徴しています。
 また、緑のパセリは料理の脇に添えたり、みじん切りにしてソテーの飾りにしますね。これを「彩どり効果」と呼びます。
 スパイスのブレンドは、香りづけ、辛味、臭い消し、着色のそれぞれの作用を生かすために行なう作業です。ブレンドされたスパイスは料理をおいしくするいろいろな効果を総合的に持つことになります。

いかがでしたか?

武政さんが監修した『スパイス活用超健康法』では、スパイスの効用を活用した健康法をスパイス別、効能別でわかりやすく解説しています。興味のある方はチェックしてみてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?