TTPとPDDSで仕事を高速回転させる
フォレスト出版編集部の寺崎です。
今日はひとつ「全ビジネスパーソン」が知っておいて損はない、ちょっとしたビジネス思想的なスキルをご紹介します。
「TTP」という言葉をご存じでしょうか。
TTP=Time なんちゃらかんちゃらポーテーション?
違います。
TTPとは「徹底的にパクる」の略語です。
リクルート・グループの現場から生まれた言葉だそうです。元リクルートの中尾隆一郎さんによる『最高の成果を生み出すビジネススキル・プリンシプル』から詳しくひもといてみましょう。
ビジネスは徹底的にパクって進化させればいい
そもそも、TTP(徹底的にパクる)という言葉はどういった背景で生まれたのでしょうか?
私がリクルート時代に担当していた事業運営から学んだ話です。
この事業は全国に店舗を構えています。そして、顧客がどの店に来店されても、あるいは誰が接客担当になっても一定水準以上のサービスを提供したいと考えていました。
全国一律のサービス、標準化。口で言うのは簡単ですが、実現するのは難しいものです。常に進化させながら、全国で一定水準以上のサービスを実現するには、コツが必要なのです。そのコツとは、ある地域の接客担当が開発した満足度の高いツールや接客方法を、他の地域や店の接客担当が学び、実践する仕組み作りです。
以前流行った言葉で言うと「ナレッジマネジメント」の仕組みです。
このナレッジマネジメントを実現するためのコンセプトがTTPです。ナレッジマネジメントとは、他者、それもハイパフォーマー(好業績者)の行動から学ぶという意味です。
「学ぶ」という言葉は、もともと「真似をする→真似ぶ」からできたと言われています。つまり、「学ぶ」とは、ハイパフォーマーの「真似」をするということなのです。
ところが、実際のビジネスの場面で、このハイパフォーマーの真似をしなさいと言うと、言われた人は知らず知らずのうちに拒否反応を示します。その拒否反応の理由は、自分は他の人とは違う、個性的でありたいということだったり、指示されたハイパフォーマーではなく、自分自身の周りにいる聞きやすい身近な人から、簡単に真似できることだけを学ぼうとすることなどです。
そこで、登場するのがTTPです。
私のいた組織は、言葉遊びが好きで、言葉やフレーズを略するのが大好きな集団でした。「初心者や若手は、先輩やハイパフォーマーの仕事をTTPしなさい!」というように使います。そして、しばらくすると「そろそろTTPSをしてみなさい!」とアドバイスを受けます。
TTP=「徹底的にパクる」
TTPS=「徹底的にパクって進化させる」
言葉にして開くと、真似をするどころか、「パクる」ですから、もっと下品ですね。ただ、「TTPする」「TTPSする」と表現すると、なんだか語感や音がかわいくないでしょうか? 若手メンバーにとって、日報を書くとき、日常でコミュニケーションするとき、語感もいいし、略語なので簡単に使えるのです。つまり、心理的な拒否反応が一気に減るのです。
「ナレッジマネジメント」といわれると難しそうですが、TTP、TTPSはキャッチ―ですね。この「ハイパフォーマーのナレッジを共有する」って、けっこうできていないことだと思います。
出版社でも「最近ヒット飛ばして調子いいよねアイツ」という編集者が循環サイクルで現れるのですが、そのナレッジを共有することはできていません。
TTPしないと。
TTPをうまく回すための仕組み作り
では、それぞれの組織でTTPをうまく実現するためにはどうしたらいいのか。
ちなみに、TTPでは「徹底的」という部分が重要です。単に「真似しやすい部分だけ」をパクるのではなく、ハイパフォーマーのやり方を「徹底的」に真似するというのがTTPなのです。
スポーツであればハイパフォーマーのやり方を真似することは称賛されます。ところが、仕事の場面では、基礎を「真似る」重要性が軽視されているケースが散見されます。
そこで私が担当していた組織では、少し工夫をしました。このTTP、TTPSという言葉を使った上、具体的には、全国のハイパフォーマーの仕事を認定し、その仕事をTTPすることを称賛したのです。
さらに、TTPしたメンバーから、具体的に「○○さんの仕事をTTPしてお客様に喜んでいただけました」というフィードバックの仕組みも作りました。
すると、ノウハウを提供したTTP元へのリスペクトも表現できます。
SNSの「いいね!」のようなものですね。
講演会などで当時の仕組みを披露することがあるのですが、このTTPやTTPSは、その後色々な組織で使ってもらえているようです。
なるほど。TTP元へのリスペクトを表現する仕組みをつくる。パクられた方もうれしいし、パクったほうは結果が出せてうれしい。で、会社も業績があがってうれしい。
三方よしです。
PDCAよりも使いやすい「PDDS」
このTTPですが、PDCA的な仕組みを組み合わせると最強です。
PDCA=Plan→Do→Check→Action
ところが、PDCAよりも有効なサイクルがあるらしいです。
何度か触れていますが、進化は螺旋的に起きます。
進化の螺旋を横から見ると、上に上がっているように見えますが、それを上から見ると円、もしも矢印を付加すると回転しているように見えます。進化をけん引するその回転がPDCA(Plan→Do→Check→Action)です。私の場合、これを改良してPDDS(Plan→Dicide→Do→See)と表現しています。この回転が「振り返り」です。振り返りが回転を起こし、それが進化を生んでいるのです。
振り返りをきちんとできる組織(つまり学習する組織)は進化しやすいといえます。
すでにこの振り返りが実行されている組織であればPDCAを意識すればよいのですが、振り返りがうまく機能していない組織では、PDDSを意識した方がよいです。その理由について説明します。
最も重要なのは振り返りの「S= See」
「PDDS」とは、あまり聞いたことがない概念ですね。世の中では「PDCA」が席巻してます。
PDCAにしてもPDDSにしても、Pから読み始めるので勘違いされるのですが、PDDSのS、つまり「振り返り」が重要なのです。ある施策をきちんと「振り返る」ためには、「実行したけれどうまくいかなかった」ことと「実行しなかったのでうまくいかなかった」ことが混じっては困ります。正確に振り返ることができません。
同じく、施策を「実行しなかったけれどうまくいった」ことと「実行したからうまくいった」ことが混在すると正確に振り返れません。
ところが、現場では、よくこのような「施策を実行しない」ことが起きます。特に本部が、現場に複数の施策を依頼したときに起きがちです。複数の施策を依頼されると、現場が取捨選択を行うからです。
しかし、施策を取捨選択したことを本部に報告することは稀です。結果、施策は実行された前提で振り返りがされます。そして、正しくない振り返りが実行されるのです。これでは正しく進化できません。
では、どうすればよいのでしょうか?
簡単です。施策を絞ればよいのです。
確実に振り返るために、施策を1つに絞ります。そのステップを付加しているのが、PDDSなのです。PDDSは、Plan→Decide→Do→Seeです。日本語では、次のように訳しています。「よく考え→すばやく絞り込み→徹底的に実行し→きちんと振り返る」。この2つ目のD=Decide(すばやく絞り込み)のステップを強く意識することが、PDCAあるいはPDDSをきちんと回しだすきっかけになるのです。
PDCAがうまく回っていない組織は、まずPDDSを意識してください。その際、「振り返る」習慣をつけるための有効な方法の1つがKPIマネジメントです。
計画して(Plan)動き出す(Do)前に、決める(Decide)ことを強く意識する。PDCAのCheck(振り返り)がおろそかになるのは、みなさん体感されるところですよね。
「失敗したことはなかったことにしたい」
「闇に葬りたい」
わかります。すごくよくわかります。
でも、それでは個人も組織も成長できない。したがって、「S(振り返り)」が必須ですよ、ここにフォーカスしましょうという話です。
徹底的にパクって進化させるTTPS、そしてこのPDDSは、個人の人生レベルでも応用できる概念だと思っています。ぜひぜひ、ご活用ください。
※珠玉のビジネススキルを78本厳選網羅した『最高の成果を生み出すビジネススキル・プリンシプル』(中尾隆一郎・著)から一部ご紹介しました。
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年収が上がる実践ビジネススキル① 生産性を上げる方程式ほか
年収が上がる実践ビジネススキル② KPIマネジメント
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