見出し画像

ある伝説の経営者が重要視した「決断力」の中身

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

日本には、松下幸之助、本田宗一郎、小倉昌男など、名だたる大企業を一から築き、繁栄させた伝説の創業者、経営者が多くいますが、その一人として挙げるにふさわしい方に藤田田(ふじた・でん)という人物がいます。
※いわば歴史的人物のため、織田信長と同じく、ここでは敬称略で失礼します。

まだ日本にハンバーガーが普及していない時代、アメリカからハンバーガーを持ち込んだ人物、そう、日本マクドナルドの創業者です。人まねではなく、独自の経営哲学や生き様を貫き、まさにベンチャー精神の真髄を体現した方です。

彼の経営哲学やベンチャー精神は、大ベストセラー『ユダヤの商法』をはじめとした著作で伝えられ、多くの経営者に影響を与えています。2019年には『ユダヤの商法』新装版が発売され、再注目されています。

初版本の発売当時、高校生だった孫正義さんが『ユダヤの商法』を読んで感銘を受け、藤田さん本人に直接会いに行ったというエピソードは有名なので、ご存じの方も多いでしょう。

藤田さんの強大なるエネルギーや金言は、私個人としては著作でしか味わえませんでしたが、日本マクドナルド創業間もないころから、部下として、ブレーンとして、藤田流の知恵と行動を教え込まれてきた人物がいます。ジーン・中園さんです。

ジーン・中園 Gene Nakazono
ハピネス・サクセス・コンサルタント。1949年大阪生まれ。大学時代1年間休学し、自転車で米国大陸をサンフランシスコからニューヨークまでを横断。帰国後、卒業して、1973年、創業したばかりの日本マクドナルド社に入社。現場の第一線で活躍し、創業者・藤田田の元ブレーンとして、日本国内外に実力を発揮。類まれなる的確さと決断力で頭角を現す。その決断力は、第二の人生目標「海外移住」の達成にも生かされる。創業当時初期から18年間勤めた同社を去り、1990年家族とともにオーストラリア・ゴールドコーストにある新規日本レストラン支配人として移住、成功を収める。その後、拠点をシドニーに移し、米国系大手野菜製造加工工場QA(品質保証)部マネージャーおよび食品コンサルタントとして活躍した。工場経営では、年間最優秀工場(サプライヤー・オブ・ザ・イヤー)を3年間連続で各社から贈られ、その他の各種表彰も多々経験する。その後、食肉加工工場の新規立ち上げに日本から招請され、2009年より6年間日本に逆単身赴任して、取締役工場長として世界基準の工場をつくりあげた。その間、総務大臣賞(ふるさと大賞)受賞の栄誉に浴する。日本各地での講演活動も実践する。1997年には、豪州市民権を取得してオーストラリア人となる。2016年1月より、シドニーに戻り、フリーランス作家・翻訳者・通訳。主な著書に、『小さな飲食店をつくって成功する法』『藤田田の頭の中』などがある。

ジーンさんは、創業まもない日本マクドナルドに入社して以来、18年にわたって藤田田さんに仕え、経営哲学から導き出された知恵と行動を体得してきました。

そんなジーンさんが藤田さんから教わってきた「お金」「時間」「人間関係」「ビジネス」に関する思考法や実践法を、実際の事例を交えながら58のルールにまとめた新刊『藤田田から教わったお金と時間の不変のルール』がいよいよ9月10日に発売されるんです。

今回は、本書発売に先立ち、同書で取り上げている全58のルールの中から「『朝令朝改』が成功を加速させる」の原稿を全文公開します。

今でも多くの経営者やビジネスパーソンが藤田さんのビジネス哲学に魅了される理由の一端を感じられると思います。

 朝令暮改(ちょうれいぼかい)という熟語がある。
「朝出された命令が夕方には改められる意。法令などがすぐに変更されて一定せずあてにならぬこと」(大辞林)
 つまり、朝にこのようにすると出した命令を、夕方になったら不都合になったので、それを取りやめるということを表現した言葉である。
 これを実践していたのが藤田田氏であった。私はマクドナルドの黎明期に入社したので、周囲では新しいことがどんどんと発生し、またどんどんと改善されていくのを毎日目の当たりにしていた。
 例えば、店舗で使用される帳票である。現代ならコンピューターがあるので在庫の数値などもキーボードを使って打ち込めばいいのだが、当時はまだそんな便利なものはなかった。今ではお目にかかることのないB3サイズの用紙に印刷された在庫表が店舗に配布されていた。配送の都度、その日の食品入荷数量を手書きで記入していたものである。すべての帳票は手書きが標準であった。その計算には電卓が使われて、帳票から拾ってきた数字を順番に足したり、引いたりしていたのが普通だった。手計算だから、ちょっとしたミスで計算間違いが起こる。すると数字が合わないので、幾度となくやり直すという手間のかかることを連綿とやっていた。
 これらの数字も配送される個数や単位が異なったり、あるいは業者が変更になったりすると用紙がまったく使い物にならなくなるのは日常茶飯の出来事であった。そのたびに、帳票用紙はゴミ箱行きになって、新しい用紙が本部から送られてきた。もったいないなと思いながらも、それらを指示に従って廃棄していた。

 もっと大きなものでは4分の1ポンド(約113グラム)の牛肉を挟んだ「クォーターパウンダー」を導入したときだった。創業から数年しか経過していないその当時は、肉類のハンバーガーは、肉1枚入った普通のハンバーガーと肉が2枚入ったビッグマックだけであった。まだハンバーガーも世間一般では熟知される以前の未成熟のときだった。
 そんなとき、藤田田氏は「これからは大型ハンバーガーの時代になる」と言って、クォーターパウンダーを全店的に採用したのである。そのために、必要器具や機械類を準備しなければならなかった。そこで各店ベースでかなりの金額を投資して、その新製品を発売することにしたのである。それだけではない。メニューから広告宣伝のマテリアル、原材料の調達と配送など、関連するシステムも半端ではない。
 しかしながら、結果としては時期があまりにも早すぎた。1個当たりの販売金額も高価だし、肉が厚い分だけハンバーガーに比べて3倍くらいの時間をかけなければ、商品として出すことができなかった。当時、注文を受けてからの提供時間は32秒としていたので、クォーターパウンダーを注文した顧客がしびれを切らしてしまったのである。
 要するに、そんな簡単に出せる商品ではなかったことが実施していくことで判明した。結果、数年ほどしてクォーターパウンダーはメニューから外されることが決定した。その後始末として、新たに投資した器具類はそのままゴミ箱行きとあいなったのである。
 藤田田氏は全社員に対して次のように説明した。
「大型ハンバーガーは日本には時期尚早であることがこれで明らかになった。日本人がもっとハンバーガーを食べる時機が到来したら、これに再度挑戦する」
 また、「朝令暮改はよろしくないというのはこれまでの常識だった。しかし、常識も時代と共に変わっていくものである。だから、常識もどんどんも変えていかなければ時代に取り残されてしまう。時によっては、必要とあらば朝令朝改でもいいのである」と続けた。
 藤田田氏は、時間とビジネスとその決定をこのように述べている。この考えがベースとなってビジネスが展開されていく。
 新型コロナをきっかけに、ニューノーマル時代に生きる私たちは、当時以上に時代や社会の環境変化にすぐに対応していくことが求められている。「今日の常識は、明日の非常識になる」ぐらいのスピードでの変化。まさに「朝令朝改」が当たり前の時代になったといっても過言ではない。この基本をもとに時間のとらえ方がどのようになっているのかを、この章で詳しく説いていきたい。

 ところで後日談がある。
 クォーターパウンダーがメニューからはずされてから四半世紀が経過した2008年11月に、関東地方の店舗でこのハンバーガーがレギュラーメニューとして登場したのである。当時、大々的な宣伝効果もあり、このバーガーは爆発的に売れに売れて人気商品になってしまった。その後、全国の店舗でも販売されるようになるのは言うまでもない。
 やはり、朝令暮改でダメだったらすぐに撤退し、次の機会を狙うことが必要であることを如実に物語る実例だ。

いかがでしたか?

ニューノーマル時代で激しい環境変化の対応が求められる中、『藤田田から教わったお金と時間の不変のルール』で取り上げるルールはいずれも、今回ご紹介した「『朝令朝改』が成功を加速させる」と同じく、どんな時代でも通用する、不変的なものを厳選しています。

たとえば、以下のとおりです。

◎78対22の法則を活用せよ
◎すべては1からスタートする
◎ツキは能力にまさる
◎時間販売業・節約業たれ
◎カラスは白いを証明せよ
◎お金の喜ぶパーティを開け
◎先に出すことを考えよ
◎お金が好きならお金を集めろ
◎性悪説で対処せよ
◎沈黙は金を知っておけ
◎明日から今日を行動せよ
◎日本一の給与を払え
◎手柄は部下のものとせよ
◎ポジティブがポジティブを生む
◎メモは偉大な力を発揮する

などなど、全58のルールを、藤田さんに18年間仕えてきた元ブレーンの著者だからこそ書けるエピソードを交えながら、わかりやすく解説しています。

「知っていること」とバカにする人ほど、わかっていない(行動していない)――。

そんな藤田田の声が思わず聞こえてきそうな、珠玉のルールが詰まった1冊となってます。興味のある方はチェックしてみてください。

▼関連記事もどうぞ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?