【沢山の人の前で意見を言う】ことに性格も頭の良さも関係ない。
みなさんは、「人前で自分の意見を言う」ことがすんなりできるお子さんでしたか? 私は大の苦手でした。こうしてnoteを書くことも、いまだに苦手意識があります。大抵担任の先生からは、「もっと挙手しましょう」と言われていましたね。同じように、発言が苦手だったイトコが、自分の担任の先生から、「こういうのも性格だからね」と理解を示してもらったという話を聞いて、「世の中にはなんていい先生がいるんだ・・・」と感動したのを覚えています。
とはいえ! いまはSNSで自分や会社の広報をすることはベーシックな仕事の1つになりましたし、「自分の考えとか別に言いたくない・・・」などとモジモジしているわけにもいきません。
しかも、今の子どもたちは、学習指導要領に「表現力」という項目ができたそうで、人前で堂々と意見を述べることが必修なのだとか。「性格なんだからしょうがないでしょ」「頭も良くないしいちいち意見なんかないよ」などと言ってはいられないようです。
そんな自分の意思を表明することが苦手な人に向けて、
人前で気持ちや考えを表すことに「性格」も「頭の良さ」も関係ない!
と気持ちよく喝破してくれる方が現れました。
それは、テレビでもおなじみ齋藤 孝さんです。
たくさんのベストセラーを著され、文化人としてテレビはもちろんのこと、多くのメディアで活躍されていますが、現役の明治大学文学部教授でもいらっしゃる齋藤先生。本業は、中学・高校の教員を目指す学生が履修する教職課程にて教鞭を執る教師だという齋藤先生は、現代の教育現場にも精通。学生たちをどう育成したらいいのか、頭の中はアイデアでいっぱい。齋藤先生は実際の授業でも、自分の頭で考え、他者に伝えることを重視してらっしゃるそうです。
そんな齋藤先生の教育者としての長年の知見をもとに、【伝える力】について伺いたい!と思ったことをきっかけに、1冊の本が生まれました。
本日は、齋藤先生の最新刊『10歳からの伝える力』から、「はじめに」を抜粋・編集してご紹介します。
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はじめに 「伝える力」は誰でものびる!
みなさんは、クラスのみんなの前で発表をしたことはありますか? たくさんの人の前で、自分の意見を言ったことは?
「緊張するし、恥ずかしいからやりたくない」
という子は多いんじゃないかな?
「発表したことあるけどうまくいかなくて、それ以来苦手になっちゃった」
という子や、漫画のなかのユウキのように、
「何か聞かれても、特に意見なんてないし・・・」
という子もいると思います。
大人でも、うまく考えをまとめられなかったり、自分の意見に反対されるかもしれないと不安になったりして、「発表が苦手」な人はたくさんいます。
でもね、今の時代、自分の意見を人前で表現するというのはとてもとても重要なことなんです。
国際社会では、自分の考えや意見を伝えられない人は評価に値しないとみなされます。世界的に見て日本人は、公の場で発言したり、議論に参加したりすることがとても少なく、いい言い方をすれば「奥ゆかしい」のかもしれないですが、世界の人たちから見ると、
「全然自分の意見を言わないなんて、何を考えていて何を伝えたいのかさっぱりわからない。自分の考えを持っていないの? 理解できていないの? ひょっとして日本人はあまり頭が良くないの・・・?」
という悲惨な評価になってしまうんです。
もちろんみんな自分の考えは持っていますし、一対一で話してみるとちゃんと話せます。だからこそ、その考えや思いを、「恥ずかしい」とか「緊張するから」と言って、みんなの前で表現しないのはとてももったいない。どんなにすばらしいアイデアや意見を持っていても、それをみんなに伝えられなければ、アイデアも意見もその人のなかにうもれたままになってしまいますから。
「だったら、『伝える力』をみんなが身につけられるようにしよう!」。日本の文部科学省もそう考え、二〇二〇年度からの新しい「学習指導要領」(※全国どの学校でも一定の水準を保てるように文部科学省が定めているカリキュラムの基準。みなさんの教科書や時間割のもとになっているものです)に、学ぶべきものとして「表現力」を入れました。もう少し詳しく言いますと、新しい時代を生きる子どもたちに必要な力として、
「学んだことを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力、人間性など」
「実際の社会や生活で生きて働く知識及び技能」
「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力など」
この3つを教育方針の柱に定めたんです。
今の時代の変化は非常に速いです。インターネットや人工知能(AI)の急速な進化によって、求められる力もどんどん変わってきています。それだけではありません。地球温暖化問題や、新型コロナウイルスなど未知のウイルスの発生、その他さまざまな災害。僕たちは、いつどんなことが起こるかわからない日々を生きています。
そんな毎日のなかで、この学習指導要領の3つの柱のうち、「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力」は特に大切になってくると僕は思っています。自分で考えて、判断して、表現する。その力をつけることが、みなさんがこれからの世界で生き抜いていくための大事な武器になるはずです。
特に「表現力」。
英語で「表現する」ことを「Express(エクスプレス)」と言いますが、その語源はラテン語の「Ex(外)+Press(押し出す)」です。つまり、「表現する=自分の外に出していく」ということ。臆することなく勇気を持って、自分の意見やアイデアをどんどん外に出していくことが、世のなかを変えたり、みなさんの人生をおもしろくしたりするんです。
その「表現力」をみなさんが学校で学ぶときに中心となるのが、「教室での発表」です。
「そうはいっても、自分は内気だし、性格的に人前で話すのは向いていないから・・・」
「人前に出るとすぐにあがっちゃうこの性格は直せない」
「人前での発表なんて、もともと明るい性格の人の方が有利なんだから、表現力で学力を見られるのは不公平なんじゃない?」
みなさんのなかには、そう考える人もいるでしょう。でも、ちょっとまわりを見まわしてみてください。ふだんはとても内気でおとなしいのに、みんなの前でピアノを弾いたり、歌を歌ったりするときは、人が変わったような表現力を発揮するお友だちっていませんか? お笑い芸人さんなんかも、テレビや舞台ではものすごくおもしろくて堂々としているけど、楽屋やふだんの生活ではとってもおとなしい人って多いんです。
逆に、ふだん友達とワイワイ明るく話していても、みんなの前に立つとしどろもどろになったりする人、いますよね?
そう、発表に性格はあまり関係ないんです。
ではなぜ、発表が得意な人とそうじゃない人がいるのだと思いますか?
答えはとても簡単。それは単に発表を「習ったことがあるかないかの差」なんです。そして「練習しているかどうか」。ピアノや歌と同じです。ピアノが弾けるようになるのは習うから。習ってもいないのに、みんなの前で突然弾けるという人はあまりいないですよね。弾き方をちゃんと習って、ふだんから同じ曲を何回も練習しているから、人前でも弾けるようになる。お笑い芸人さんだって、お笑い養成所に通って、同じネタや台本を何回も練習しているから、テレビや舞台で堂々と演じることができる。つまり、みんなの前で発表する勇気というのは、練習すれば誰でも身につくものなんです。
この本では、どの練習の秘訣をみなさんにお伝えします。この本に出てくる小学生のユウキと理子も、いきなり授業参観で研究発表をすることになり、とまどっています。ユウキは「自分の意見がないこと」、理子は「恥ずかしくて人前で自分の考えを言えないこと」に悩んでいます。ユウキと理子は、それぞれの悩みを乗り越え、みんなの前で無事発表することができるのでしょうか? みなさんもユウキと理子と一緒に、「発表する勇気」の秘訣を知って、自分の考えを「表現する力・伝える力」を身につけましょう!
突然、先生が「研究発表会をやる」と言い出した!
人前で話をするのが苦手な理子はパニックに
そんな理子に、「理子が発表して!」と追い打ちをかけるユウキ。理子とユウキの研究発表はどうなる!?
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(編集部 杉浦)
Photo by Kane Reinholdtsen on Unsplash
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