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【フォレスト出版チャンネル#259 】売れるブックデザインの秘訣

このnoteは2021年11月10日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。本日も、昨日に引き続いて、株式会社tobufuneの代表であり、売れっ子ブックデザイナーの小口翔平さんに来ていただきました。小口さん、よろしくお願いします。

小口:よろしくお願いします。

渡部:寺崎さんも、昨日に引き続きよろしくお願いします。

寺崎:よろしくお願いします。

渡部:はい。今日は遅い時間の収録ということで、時刻は23時をまわり、そろそろ日付が変わりそうなところになってきましたので、僕らもテンションを上げてお届けしてまいりましょう。聞いてくださっている方は、朝かもしれません。昨日は小口さんが、ブックデザイナーとして歩まれて来た経緯、そして現在までのご活躍ぶり、ベストセラー作品にすごくたくさん携わっていらっしゃいましたけど、そんなお話をさせていただきました。是非、昨日の放送もチェックしてみていただければと思います。
今日は売れっ子ブックデザイナーが考える、売れるデザイン、そして日々どのようなインプットをデザインに落としこんでいるのか、という点についてお伺いしていきたいと思います。今日はブックデザイナーとして小口さんが、売れっ子たる秘訣について語っていただきたいと思います。では、寺崎さんから、小口さんに根掘り葉掘り聞いていただきたいと思います。


デザインに落とし込むプロセス

寺崎:はい。まずをお聞きしたいなと思っていたのが、出版社の編集者から依頼を受けて、それからだいたい数パターンのラフ案に落とし込んで・・・っていう過程があると思うんですけど、そろプロセスをどんな感じで進めていて、また、何を意識してやっているのか、そのあたりの舞台裏を知りたいなと思ったんですよ。

小口:変わったことはしないんですけど、うちはスタッフが1冊の本に大体3人ぐらい入るんですよ。カバーに関して言うと、最初に表1案を出すんですけど、その3人が全員つくる。1人2案つくるんですけど、その全員がつくったやつをブラッシュアップして出す。もちろんそこに僕が入ることもありますし、僕が修正だけに入ることもあるっていう感じですね。
で、気をつけているのは、色んな方向性を全部出していきたいと思っていますね。どの方向性が正解なのかは、判断しかねると言うか、分からないので、「この方向性ならこういうデザインがありえるな」とか、「この方向性でいけば、これはありえるな」みたいなのを広めにつくっておきたいみたいなのがあって、それを踏まえて、編集者の方とか、営業の方とか、著者の方とかで、考えてもらえる方がいいのかなっていうのはありますね。僕が色んな方向を見たいっていうのもあります。

寺崎:あー。小口さん自身が。

小口:そう。若い頃から仕事がずっとあったわけではないので、仕事でつくっていいんだから、つくりたいなみたいな(笑)。仕事でデザインできるって結構贅沢なことなので、せっかくつくれるんだから、いっぱいつくっておけみたいところもあって、それで色々見たいから、 色々とつくるっていうことはありますね。

寺崎:なるほど。他のデザイン事務所と比べると、小口さんのところって、案のバリエーションが多いですよね。いつもね。

小口:そうですね。それは、複数でやっているのが、大きいですね。

寺崎:その場合、「うちとしては、この案でいきたい」みたいなのはあったりするんですか?

小口:個人的な感じでは、まあ、あるんですけど、それはあまり言わないようにはしています。

寺崎:なるほど。いつもABCDEFGとか色んな案が送られてくるじゃないですか。僕は、A案が推しなのかなってなんとなく思っちゃって(笑)。

小口:あー、そうでもなかったりするんですけど、でも、ABの方が好みではあったりするかな。

寺崎:じゃあ、やっぱりAから順に推しではあるんですね。

小口:僕の好みにはなっているかもしれないです。好み順にはなっているかもしれないけれど、そこまで気にはしていないです。でも、僕がめちゃくちゃ好きなデザインってあんまり売れないので(笑)。

寺崎:そうなんですか?それは最終的にはどっちを優先するんですか?

小口:なので、皆さんで決めてもらうぐらいの方が、角度がよくなると言うか。デザイナーが好きなデザインよりも、ちょっと隙があると言うか、そういう方がいいのかなと。尖りすぎていると広がらないのもあって。

寺崎:なるほど。

小口:本当に好き放題デザインしたら、多分めちゃくちゃ尖っているのを出すでしょうね(笑)。

寺崎:(笑)。

小口:デザイナー向けの本だったらいいんですけど。デザイナー向けと言うか、そういうのが好きな人向けならいいんですけど、基本的には広く取りたいので。だから、わからないんですよね。ただ、色んな方向を出したいのは出したい。このコピーが大きい方が売れるのか、こっちが大きい方が売れるのか。それをどっちも見せて、考えてもらいたいですね。

判断基準は「売れるかどうか」

寺崎:やっぱり判断基準は売れるかどうか、なんですよね。

小口:それはもう。僕は完全にそうです。もうちょっと「読者に届く」みたいな言い方をしたほうがよかったのかな(笑)。

寺崎・渡部:(笑)。

小口:まあ、でも僕が関わる本は売れて欲しいなあって。

寺崎:いや、いいと思います。売れるイコール読者に届くですから。

小口:部数が増えていってくれると、著者も編集者も周りもみんな楽しそうなんですけど、売れてないと全然楽しそうじゃないっていう(笑)。

寺崎:(笑)。

小口:できれば仕事で関わる人は楽しくいてほしい(笑)。

売れる書籍デザインの法則①著者に忖度しない

寺崎:いいと思います(笑)。渡部さん、以前tobufuneさんが事務所を引っ越しされたんですよ。その時に、でっかい本棚があって、「あれ、いいな」と思っていたんですけど、Facebookに「もらいに来てくれれば、譲ります」って。

渡部:本棚をですか?

寺崎:そう。それで、僕もらったんですよ。

渡部:あ、そうなんですか?

寺崎:そう。結構高いんだよ、あれ。

渡部:すごい。

寺崎:で、それですぐ連絡して「行きます」って言って、そしたら、運送業者さんが1時間ぐらい到着が遅れたんだよね。それで、もう全部取っ払って、何もない事務所で、タバコ吸いながら1時間ぐらい、小口さんの話を聞くっていう、すげえラッキーな経験があったんですよ。
で、その時に聞いた話がめちゃくちゃ面白くて、1番印象に残っているのは、デザイナーさんって本の内容とか気にすると思ったんですよ。そしたら、「いや、中身は読まない」と。で、「著者にも会いません」と。「え!なんでですか?」って言ったら、「忖度して遠慮しちゃうから、カバーとか帯のデザインが弱くなっちゃうんですよね」みたいなことを言っていて。

渡部:へー。

小口:そうですね。全部読まないわけではないですけど(笑)。小説とか漫画とかは、読んでデザインします。ビジネスとか実用とかは、時間がないのもありますけど、あんまり読まない方がうまくいくなあっていう実感があります。著者も会わないと言うか、会いに来てくださる方には喜んで会いますけど、気を使わないようにはしたい。(著者と会うと)行儀のいいデザインというか、いいデザインにしたくなってしまって。その本に合うデザインと言うか。そうすると、あんまり書店で引っかからなくなっちゃうというか。帯とかでちょっと大げさに煽るコピーとかを、それに乗っかって大きくデザインするみたいなことはよくやるんですけど、そういうのを、著者がいい人で、すごく優しい本で、ってなると、やりたくなくなっちゃうんですね(笑)。

寺崎:あー、気をつかって。

小口:そうそうそう(笑)。距離感がある方が、デザインだけを考えられるから、僕の場合はその方がいいです。ただ、これは人によるので、絶対本を読むデザイナーもいっぱいいますし、理解しないとデザインできないと言う友人もいます。本当にこれはデザイナーによってもそれぞれ違うと思います。

渡部:正解っていうのがあるわけではないのかもしれないですけど、小口さんがおっしゃっていたのは、より多くの読者に届くっていうところを一番の目的にされているっていうようなことだと思うので、それはもう書店でどれだけの読者の人にまずは手に取ってもらうか、その最初の出会いを演出する上で、タイトル含めて、どういうデザインがいいのかっていうのを一番メインに考えてらっしゃるってことなんですね。逆に中身とか、著者のキャラクターに引っ張られないように。

売れる書籍デザインの法則②読者感覚を大事にする

小口:実際、小説とか漫画は原稿がなくてデザインすることって、あんまりないんですけど、ビジネス、実用は原稿がまだできていないけど、デザインすることもよくあるので、現実的に読むものがなくてデザインをやっていることもあるんですけど、それよりも読者感覚を残したいっていうのもちょっとありますね。何もわかってない状態で、表紙を見て、買う。普通はそうだと思うんですけど、その感覚を持っていたいっていうのもありますね。

寺崎:なるほど。そこ、結構重要なポイントかもしれないですね。

渡部:確かにそうですね。読者は内容を知らないで、手に取るわけですもんね。

小口:編集者の方は、すごくたくさんの情報を表紙に詰めたいですよね。著者の方も。本って、自分の子どもみたいなものなので。すごく時間をかけて作業されているので。でも、正直、そんなにたくさんは詰め込めないんですよ。こっちはこれもこれも伝えたいけれど、実はそんなには伝わらない。表1だけでは。読んでもらったら、わかりますけど、表1だけでは、ある程度、取捨選択が必要になるので、その辺のバランスをとりたいとかもありますね。

売れる書籍デザインの法則③「違和感」を狙ってつくる

寺崎:度々カバーデザインのキーワードとして出てくる言葉で、“違和感”っていうのがあるんですけど、事例として面白いのが、ヤニス・バルファキスさんが著者の『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』っていう、ダイヤモンド社さんの本があるんですけど。

渡部:これもタイトル、長いですね。

寺崎:これタイトル、長いんですけど、帯が異様なんですよ。「異様に面白い」っていう文言が異様にデカい!

小口:そうですね(笑)。

渡部:タイトルより、デカい(笑)。

寺崎:これやっぱり違和感を生み出すことを狙っているんですか?

小口:そうですね。これは、打ち合わせの時に編集者の方もタイトルがそんなに個性がないみたいな話をされていて、(タイトルが)長いので、全部は(大きく)もちろん見せられないので、「普通に選ぶと“父が娘に語る”“経済の話”(を大きくすること)になりますね」って話をしていたんですけど、「それだけじゃ弱いですね」みたいな話をしていたんですね。
それで、打ち合わせ中にずっと原稿を読んでいて、「異様に面白い」っていう言葉があって、それで僕が「“異様に面白い”っていい言葉ですね。」って。「どんな本でも当てはめていいし、“異様に面白い”って書かれたら、気になると思います」って言って、それで「これを立たせる案を一案つくってみますね」って言って、つくったのがこのデザインですね。ただの“経済の話”だと、ピンと来ないというか、手に取らないかもしれないですけど、“異様に面白い経済の話”って言われると、ちょっとパラパラって見たくなるかなって考えて。もちろん案を出す時は、“異様に面白い”という文言を普通の文字サイズで扱っている案も基本で出すんですけど、ただ1案、“異様に面白い”を大きくしたものをつくって、それが実際に採用されて、結果これは売れたので、本当によかったですね。

寺崎:いやー、大成功ですよね。売れましたもんね。あとね、もう1つ、その時にお話を聞いて面白かったのが、かんき出版さんから出ている、メンタリストDaiGoの『自分を操る超集中力』っていう本が、これもすごく売れた本なんですけど、この写真の話あったじゃないですか。

小口:はいはい。

寺崎:これもまさに“違和感”の話ですよね。

小口:そうですね。

寺崎:最初は普通に帯に(写真が)入っていて。

小口:そうです、そうです。元は三森がつくったデザインなんですけど、三森健太っていう、うちにいた、今はJUNGLEっていう事務所をやっているんですけど。

寺崎:三森健太さんですね。

小口:そうです、そうです。その写真部分が、よくある、ちょっと斜めに構えたDaiGoさんのバストアップみたいな写真で、それがカバー部分に入っていて、「よく見るな」と。うちでもDaiGoさんの本はよくつくっていたので。その写真を変えてみたのを、確か三森が隣に座っていたので、指示を出してつくってもらったか、僕がやったかなんですけど、座っている写真をカバーに大きく入れると、個人的な感覚なんですけど、気持ち悪いなと思ったんですね(笑)。座っている、この写真を帯にちょっと小さく入れると似合うんですよ。

寺崎:“違和感”がないんですね。

小口:そうです。この写真、カバーに大きく入ると変なんです。

寺崎:今は大きくカバーに入っていますもんね。

小口:そうです、そうです(笑)。そうなると、なんか変なんですよ。そういう気が僕はして、その方がいいなと思って。変な方が引っかかる気がしたっていうのがあって、あとは、これはタイトルが大きかったので、写真の顔がそこまで大きくなくても、書店では映えるだろうっていうものあります。

寺崎:なるほど。これも結果的には大成功ということで。

小口:そうですね。これも売れたので、よかったですね。

寺崎:やっぱりその“違和感”の引っかかりっていうのが、手に取らせたんでしょうね。

小口:どうですかね(笑)。それは証明が出来ないんですけど、やっぱりごくごく王道でつくって、手に取ってもらえるのが1番いいんですけど、それだけじゃ、戦えない場合も多いので、そういうワンポイント、何か引っかかるものを入れたいっていうのは、いつも考えていますね。

tobufune出身デザイナーの活躍ぶり

寺崎:今、“戦えない”っていうキーワードが出ましたけど、同業他社というか、他のデザイナーさんの仕事を見たりとか、実際に他の人が手がけた、売れている本が、ライバルとして気になったりとかするんですか?

小口:それはしますね。めっちゃ見ます。本屋にはもちろんよく行くので、いいデザインだと、クレジットを見るので、凹んでばっかですね(笑)。うまいなと思って(笑)。それこそ最近、うちのOBのやつもよく見ますけど、うまいなと思って(笑)。

寺崎:tobufuneさんは卒業生も、みなさん、大活躍なんですよね。

小口:ありがたいですね、本当に。みんなちゃんとしていて。

寺崎:krranの西垂水さん、先ほど名前も出たJUNGLEの三森健太さん、エントツの喜來さん、この間、Voicyに出ていただいたOKIKATAの山之口さん、最近だと、岩永さんも独立されて。

小口:そうですね。あとは上坊奈々子かな。

ベストセラーのデザインから学ぶ姿勢

寺崎:渡部さん、小口さんって、デザイナーさんの中でちょっと特殊だなと思っていて、例えば打ち合わせで、小口さんがデザインした書籍が売れていたりすると、「これ、今、売れていますよ」なんて言うと、「いやー、競合書籍よりもなんとか目立つようにしたかったんですよ」って言って、競合する商品をものすごく意識して、デザインに取り組んでいるのに、僕は感動したんですよ。

小口:まあ、それはそうじゃないですか、やっぱり。類書で売れている本は、知っておかないといけないかなと思っていますね。あと、ベストセラーってやっぱりすごいので、学びが多いですね。だから、「なんで、その本がベストセラーなんだろう?」みたいなのを、中身以外で考えるんです。中身がいいのは間違いないので、他で。「最初に何かこれにはきっかけがあったんだろう」とか、「それはなんだったんだろうか」とか、それをマネしたりとか、差別化したりとかする時のヒントにしたりするので、「これはこの帯コピーでもしかしたら火がついたのかな」とか、「これ、帯が変わった瞬間に急に跳ねたな」とか、そういうの考えながら見るので。

寺崎:なるほど。最近だとそういうので、何か事例ってあるんですか?「これ、やべーぞ」みたいな。

小口:最近、コロナで本があんまり出ていなかったので、あれですけど、最近、上坊がやっていたやつは、よくできているなと思ったんですよね。てぃ先生の『子育てで困ったら、これやってみ!』と。

寺崎:あー、てぃ先生ね。

小口:はい。あと、『ぶっちゃけ会計のことがまったくわかりません…』。この2つは両方ともうちにいた、上坊なんですけど、方向性が似ているんですけど、どっちもすごく書店で映えるんですよね。

小口:特に、てぃ先生の本は本当に「これは売れるな」と思ったんですよね。『子育てで困ったら、これやってみ!』って言われたら、絶対子育てをしている人は手に取りたいと思うだろうなと思って。で、その言葉がこのデザインだとものすごく入ってくるんですよね。これは「この字の見せ方で、もう勝ちだな」と思いましたね。

寺崎:なるほど。じゃあ、それでまた研究するわけですね、小口さんは。

小口:そうですね(笑)。マネしたりします(笑)。

寺崎:(笑)。元部下の仕事も謙虚に学ぶみたいな。

小口:もちろん、もちろん(笑)。部下感はあまりないですね。もう対等じゃないですか、出ちゃったら。同じギャラもらうし。

寺崎:なるほど。そういう意味でも、戦っているんだなぁ。

小口:でも、OBはみんな仲がいいですよ。フリーになったOBのライングループがあるんですよ。

寺崎:あ、そうなんですか。

小口:そうそうそう。フリーになった人用の。そこで、情報共有をしたりとか、「このデザインよかったよ」とかもあるし、「この会社ってギャラいくらですか?」って聞かれたり(笑)。

寺崎:生々しいな(笑)。

小口:そうそう(笑)。だから、フリーランスになったやつだけのライングループで、質問とか、デザインの話をしたりとか。

寺崎:そこに小口さんも入っているんですか?

小口:そうです、そうです。僕が「これ、よかったよ」とか言ったりします。もうみんな、本屋でめっちゃ見るので。

渡部:日本のビジネス書界をリードしているグループですね。

寺崎:本当だよね。

小口:最近、本当にちょっとうちのOB、仕事しすぎじゃないかと思って(笑)。手に取ると、いつもうちのOBなので。ありがたいですね、本当に。仕事をいただけて。

寺崎:いや、でも売るための本をデザインするっていう、小口さんのDNAがみんなに受け継がれていますよね。そのOBの方とも最近、お仕事をさせてもらったりして。

小口:そうですか。ありがとうございます。「ありがとうございます」じゃないか(笑)。

寺崎・渡部:(笑)。

〆切は絶対に守る

寺崎:あと、売れっ子ブックデザイナーたる所以の、すごく実務的な理由が1つあって、小口さんのところって、〆切を絶対守るんですよ。1回も〆切が遅れたことはないですね。多分、ここがビジネス書の版元の絶大な信頼を得ているところなんじゃないかなと思って。なんなら、最近だと締切前にラフがきたりするんですよね。

小口:最近は、そうですね。1~2日前に送るようにしていますね。

寺崎:仕事のスピードと質が半端ない。

小口:まあ、〆切を守るのは普通だと思っていますけど。送り忘れて、遅れちゃったことは何回かあるんですけれど、ただつくってなくて、遅れたことはないです。つくったまま、送るのを忘れて、「あ!」ってなることはあるんですけれど。それはうちから出た人たちも、ちゃんとやっていると思うけど・・・。

寺崎:みんな、受け継いでいますよ。

小口:まあ、「デザインがいいよりも、仕事をしやすい人の方が、絶対に仕事が来るよ」っていうことはずっと言っていて。だから、「仕事がしやすい人でいるように」とはずっと言っています。メールのやり取りも、スケジュール管理とか、打ち合わせとか。経験として、めちゃくちゃデザインはいいけれど、全然仕事がなくて困っている人たちもいっぱいいて、デザインはめちゃくちゃ個性出しているとかではないけれど、ずっといるねっていう人もいっぱいいて、絶対に後者の方が楽しそう(笑)。
仕事がないのは、やっぱりしんどいですね。結構社内でも、それは言っていますね。だから締め切り守るのは・・・、守れないなら、断る。だから、最初に「ここまでに出して」って言われて、無理な時は「無理」って言う。無理したら出せるみたいな感じでは、受けないようにはしています。

渡部:お話を伺っていて、本がきっちり売れるっていうところと、当然、本が並んで手に取るのは読者なんですけれど、一緒に仕事をしている人っていうと、出版社なり、編集者なので、そこの相手の考えと言うか、その人たちのことも意識してお仕事されているので、本当にプロフェッショナルだなって。僕ら、出版社視点ですけど、仕事がしやすくて、さらに売れるなんて、こんないいことはないって話ですよね。だからこそ、たくさんお仕事がきて、しかも結果が出るっていう。売れっ子って言われる所以ですよね。

小口:いえいえいえ(笑)。わからないですけどね。でも、それこそ売れっ子って言っていただくと、だんだん傲慢になったりとか(笑)、気をつけないといかんなと思ったりしますし。
最近は、打ち合わせもあまり僕は出ないようにしていたりするんですよね。スタッフが打ち合わせに入ると、そのスタッフは急激に成長するので、打ち合わせはすごくいっぱいやっておいた方が独立した時に絶対にいいので。

フォレスト出版×tobufuneの仕事スタイル

渡部:寺崎さんは、小口さんとお仕事されている時とかってどうなんですか?最終的な決定と言うか、どういう感じで本づくりをしているんですか?デザインで言うと。

寺崎:あんまり小口さんの意見を聞いたりとかはしないかな。基本的にラフパターンを出していただいて、それを社内で揉んで、最終的には自分で決めて、「これでいきます」って言って、それをブラッシュアップして・・・みたいな感じでやってますね。

小口:そうですね。寺崎さんみたいなタイプはいいですね。寺崎さんは変っているので(笑)。超飄々としていると言うか(笑)。

寺崎:小口さんの意見を聞いたら、僕もきっとぶれちゃうので。それが怖くて。

小口:それでいいと思います。

寺崎:従っちゃう自分が怖いなって感じで。

小口:全然いいと思います(笑)。

書籍デザイナーとして習慣づけていること

渡部:色々とお話を聞いてきましたけど、他に何か・・・。Voicyのリスナーさんが直接デザインをやっているかどうかは、わからないんですけど、(小口さんは)アイデアを形にしていくっていうお仕事をされていると思うんですけども、普段から習慣付けていることとか何かありますか?

小口:いいとこ取りをするみたいなことはよくやると言うか。マネをすると言うか。例えば、本じゃないデザインでも、デザインがないものってほとんどないので、どこにいてもデザインって見えるんですよ。電車に乗っていても、歩いていても。
僕らは文字とかのオタクみたいなものなので、「あの文字は、すごくいい間隔で置いているな」とか、「なんでこのデザインは気持ちよく感じるんだろう」とか、それをちゃんと考える。「あ!そっか!これはすごくちょうどいいサイズの余白があるからだな」とか、そういうのを電車広告ですけど、考えたら、それを本に落とし込んだりとか。
あらゆるところで、なぜそれがよく見えるのか、それを(書籍のデザインに)活かせられるか、みたいなことをいつも考えています。
ただ、それをずっとやっていると疲れるので、常にリセットもするようにしています。僕の場合は、家で漫画とか本を読むか、ドラマを見るか、お酒を飲む。もうどれだけ働いても、それをやらないと次の日にはいかない。1回、何も仕事のことを考えない時間を絶対つくるみたいなことをやっています。

渡部:あー、なるほど。クリエイティブな仕事をしている方だと特にそうなのかもしれませんが、リセットも重要というところと、自分と直接関係なくても、いいものを見て、そこから学んで、何を活かすか考えるみたいなことを、習慣付けられているんですね。

小口:そうですね。それはすごく大事だと思います。

渡部:そうですよね。見渡してみても、あらゆるものがデザインされていますもんね。自然界にいる時じゃない限り。

小口:そうなんですよね。デザインって、特に本とか文字ってちょっとしたことなんですよね。素敵に見えるデザインと、野暮ったく見えるデザインで、ちょっとした字の間隔とか、行間とか、余白とか。その感覚を高めれば高めるほど、やっぱりデザインがよくなっていって、それが「すごいなあ」っていう人たちがいっぱいいて、それを見て、「なんでそうやって、置けるのかな?」みたいなのを考えて。

渡部:本当に奥深いですよね。以前(Voicyの収録に)、山之口さんが来てくださった時に、本当に失礼なんですけど、「このデザインって、僕らがワードでやっても、できますよね」みたいな、すごく失礼な話をして(笑)。でも、これがカッコいいと言うか、これだから売れるみたいな、「本当にちょっとした差なんですよね」みたいな話を別の編集者としていました。

寺崎:ワードじゃ無理でしょ。笑

渡部:本当にすごくシンプルなやつで(笑)。

小口:究極はできるんですよ。ただそこをより(よくする)ってなると、やっぱり差が出てくる。

渡部:本当にちょっとしたことで、全然違うんだろうなっていうのは、すごく感じました。

小口:それをずっとやるんでしょうね(笑)。

渡部:本当にプロフェッショナルというところで。

小口:まだまだです(笑)。

渡部:ちょっとお話をいくらでも聞いていきたいところなんですけど。寺崎さん、時間的にはそろそろっていう感じですか?

寺崎:そうですね。本当はもっとお聞きしたいんですけどね。

渡部:日付も変わって、いい感じで夜は更けてまいりました。まあ、僕らだけの話ですけどね。リスナーさんは全く関係ないですけど。

小口:このあと、僕はビールを飲みます(笑)。

渡部:我慢していただいたので(笑)。本当に2日間に渡って、興味深いデザインのプロフェッショナル、まさに売れているデザイナーさんから、ならではのお話をお伺いさせていただきました。是非、この放送を聞いている、リスナーさんの中にも、ブックデザインとか、本に関わる仕事をしたいなという方もいるかもしれません。最後に小口さんからリスナーのみなさんにメッセージいただいて終わりにしたいと思います。小口さん、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。

小口:はい、今日はありがとうございました。本のデザインをずっとやっているんですけど、色んなことを考えて、色んなデザイナーがいて、もちろん編集者、著者がいてなんですけど、それで本ができているので、そういうのを気にしながら、本屋で本を楽しんでもらえたら、またうれしいなあと思っています。ありがとうございました。

渡部:ありがとうございます。思ったんですけど、Voicyのリスナーの皆さんは本が好きな方が多いと思うので、家の本棚を見たら、「この本はこの人がデザインしていたんだ!」みたいなことが、わかると思うので、小口さんのインスタのURLを載せておくので、是非チェックしてみていただきたいなと思いました。

https://www.instagram.com/tobu_fune/

渡部:はい。では、本当に小口さん、貴重なお時間をいただきまして、今日はご出演ありがとうございました。

小口:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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