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「経験・知識・スキル」を評価する人材採用はもはや時代遅れ!?

フォレスト出版編集部の寺崎です。

企業が即戦力の中途採用をするときにもっとも重視するのが「経験・知識・スキル」です。

現に編集部でもいま即戦力の人材の採用を進めており、もっとも重視しているのがこの「経験・知識・スキル」といっていいでしょう。

「優れた企画を立てられるか」「書籍編集の実務経験があるか」「著者や関係者とスムーズに仕事をこなしていけるか」といったあたりを探りに応募者にインタビューしていきます。

ただし、じつはこの「経験・知識・スキル重視の採用」が過去の産物である・・・といったら驚かれるでしょうか?

VUCAの時代と言われる今、世界はどんどん変化しています。

あらゆる業種、職種も同様に変化せざるをえないでしょう。そんな時代には「これまでと同じ仕事をこなせる経験・知識・スキル」が足かせとなるかもしれません。

そんな問題意識も携えながら世に問われたのが『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(小野壮彦・著)です。

では、「経験・知識・スキル」ではない、人を選ぶ判断基準とは?

それが・・・「コンピテンシー」そして「ポテンシャル」です。

ここで『人を選ぶ技術』のおさらいをします。

人を見る4階層がこちらです。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』78ページより

これについては11月21日のnote記事に触れましたので、下記リンク先をご確認ください。

今日はいよいよ、地下2階部分の「ポテンシャル」の話に進みたいと思います。ここからが「人を選ぶ技術」「人を見抜く技術」の最先端の知見が詰まったところです。

ミステリアスな地下2階=人間のポテンシャル

 人は、「変わりやすい部分」と、「変わりにくい部分」があると先に述べた。地上階のエクスペリエンス(経験)・知識・スキルや、地下1階のコンピテンシー(行動特性)は、どちらかというと、物心がついてから、学習と体験を通じて形作られるもので、また、変化していくものである。
 いわばコップに注がれる水だ。
 では、コップそのものについてはどうだろうか?
 それが地下2階の「器=ポテンシャル」である。
 人はまさにコップのように、それぞれ大きさが違うし、形も、触り心地も違う。
 地下1階や地上部分で注がれるものは、その器がある上で成立しているものだと言っていい。
 この器がどれだけの容積を持っているのか。その中に注がれたものが、どのくらいの量か。この二つがわかれば、さらに加えられる量がわかる。
 これを世の中では「伸びしろ」と呼ぶ。
 つまり、コップの大きさがその人の「器」であり、注がれる水が「経験・知識・スキル」「コンピテンシー」だ。
 そして、その差分のさらに注ぐことができる水の量が、「伸びしろ」というわけだ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』より
小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』94ページより

とても短い文章の一節ですが、ここで語られていることはきわめてこれからのビジネスに重要な示唆を与えてくれます。

いま、この記事を書いていて、ふと思いつきましたが、これって一人の人間の話だけでなく、組織単位でも当てはまることかもしれません。

「ポテンシャル(器)」が大きければ大きいほど、「伸びしろ」はデカい。

「経験・知識・スキル」そして「コンピテンシー」を測るだけでは、伸びしろを予測することはできません。

最先端の「ポテンシャル・モデル」とは?

では、この「ポテンシャル」っていったいなんなんでしょうか?

 人の「伸びしろ」について、エゴンゼンダーが、ハーバード大学などとともに、長年科学的にリサーチし、2014年に初めて世界に公表したコンセプト。それがこれから解説する「器」を示す「ポテンシャル・モデル」だ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』より

なんと、その人のポテンシャルを測るための「ポテンシャル・モデル」なるものがすでにあったのです。

このモデルの開発を指揮したのは、アルゼンチンの著名コンサルタントであるクラウディオ・フェルナンデス・アラオスという方だそうです。

クラウディオは、人の器の大きさ、伸びしろは、「好奇心(Curiosity)」「洞察力(Insight)」、「共鳴力(Engagement)」、「胆力(Determination)」の4つの因子で測ることができると、ズバリ言い切っている。これが大量のサンプルを分析した、リサーチの結果だ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』より

人のポテンシャル、つまり「器」の大きさ、伸びしろを測る4つのポテンシャル因子は次の4つ。

◎好奇心
◎洞察力
◎共鳴力
◎胆力

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』98ページより

「好奇心」がすべての要素の上位に立つ最重要項目で、そこに「洞察力」「共鳴力」「胆力」が加わり、さらに「好奇心」には「吸収」と「更新」、「洞察力」には「集める」と「繋げる」、「共鳴力」には「結ぶ」と「響く」、「胆力」には「腹決め」と「律する」というサブセットがそれぞれにあります。

 注意してもらいたいのは、これらは便宜上、日本人に通りが良い「○○力」という言葉をネーミング上の都合で使っているが、見るべきは能力ではなくて「エネルギー」だということ。対話からいろいろな情報を得ながら「この人からはこのエネルギーが強いな」と〝感じとって〟いく作業となる。
「感じる」などと書くとオカルトっぽくなるが、体感的には言葉のインフォメーションだけでなく、その人の顔つき、表情、体の動き、声のトーンなどからも情報を得る作業と言っていい。五感とまでは言わないが、二感か三感ぐらいは駆使して判断する必要がある。
(中略)
 ここで言う「エネルギー」とは、本人からすると無意識で、時に無自覚に、自然と湧き起こる「熱量」のようなものだという理解がポイントとなる。四六時中、それらが燃えているのでは疲れてしまうだろう。しかし、スイッチが入ったらグワーッと盛り上がってくる。そうした種類のエネルギーという理解でよい。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』より

なかなかこのレベルになると深みにハマりそうですね。その人の「能力」ではなく、「エネルギー」を見るのがポイントというわけです。

そこにこそ、ポテンシャルを見出すカギがある、と。

本書ではこれらの各ポテンシャル因子の分析、さらには各サブセットの詳細を解説しています。

そして、結論としてこう結ばれています。

 好奇心、洞察力、共鳴力、胆力の4モデルごとに相手を掘り下げて、全体のエネルギーレベルを統合し評価すると、器の大きさが測れる。
 その人の「ポテンシャル=伸びしろ」が見えてくるのである。
 繰り返しになるが、上層階部分は、化粧も後づけも可能である。
 たとえ知識や経験、スキルがなく、また、変革志向や成果志向、戦略志向などの発芽がまだ弱くても、そこはかとなく感じさせる大きなポテンシャルや、その人を強く突き動かす何かの存在をその人に感じたならば、個人としては積極的に付き合うべきだし、組織としては積極的に採用すべきなのだ。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』より

卑近な事例で恐縮ですが、フォレスト出版で過去活躍した社員のなかには、元ギャンブラー(!)、元焼肉店店員、元警察官(の彼は今でも活躍中)、元塾講師など、出版とは縁もゆかりもない世界から飛び込んで成功した事例がたくさんあります(ポテンシャル・モデル採用の最先端企業かっ!?)。

「経験・知識・スキル」の乏しい、しかしながらポテンシャルは期待できそう。そんな人材の採用には踏み込むのは、なかなか勇気がいることですが(本書ではこれを「ワイルドな採用」と評している)、組織としての伸びしろを大きくするうえでは大事なことかもしれません。

人を4階層で分解していくこの考え方ですが、最下層の「ソース・オブ・エナジー」とはなにか?

これについてはまた改めて別の記事でご紹介します。

▼過去記事はこちら


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