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ビジネスパーソンとしての価値を上げる「ラーニング・アビリティ」

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今月25日、新型コロナに関する解雇や雇い止めが4万8000人に上ると厚生労働省が発表しました。

ただし、この数字は「氷山の一角」と指摘されています。

失業率は政府発表のたびにどんどん悪化しており、「10~12月期には失業率は5%台にまで伸び、失業者数は約300万人に達する」と予測する識者もいます。

なんてこった!

とんでもない大不況の到来が日に日に実感されるわけですが、そんな時代に「価値あるビジネスパーソン」で居続けるために必須なものはなにか。

生き残りを賭けた「知恵」「アイデア」「経験」「本物のスキル」の獲得といえます。

では、今回も全ビジネスパーソン必携の書『最高の成果を生み出すビジネススキル・プリンシプル』(中尾隆一郎・著)から、誰もが役立つ至高のビジネススキル、ビジネスマインドの一端をご紹介します。

「代替人材のいない不幸」に気づこう

「〇〇はあなたにしかできない仕事だね」

このように言われたら、誰もが誇らしく思うはずです。ビジネスパーソンにとって「自分にしかできない仕事」は、自身のプライドも十分に満たしてくれます。

新入社員から数年は、「この仕事は誰にでもできる仕事だ。いつかは自分にしかできない仕事をしたい!」と誰もが思ったものでしょう。

ところが、「自分にしかできない仕事」というプライドは大変危険です。

「あなたにしかできない仕事があること」とは、つまり「代替人材がいない不幸」と考える観点が必要です。

・・・と言うと、少し違和感を持つ人もいるかもしれません。そこで本書で紹介される例を示して、理解を進めていきましょう。

時代遅れのデータ分析に疑問を抱かないベテラン社員のケース

 私がマーケティング職をしていたころの話です。私が考案したマーケティングのフレームが優れているということで、当時の上司より、これを他のセクションに転用するよう依頼されました。つまり、私が考えたフレームを1つの標準モデルにしようというわけです。
 なかなか難しい仕事でした。どのセクションにもマーケティング担当がいて、独自の方法でマーケティングデータを分析していたからです。その人たちは、「とても優秀な人である」と評判を聞いたことがある人たちでした。
 さてどうしたものかと思案しながら、その中でも一番のベテランがいる部署に行ったのですが、拍子抜けしてしまいました。その人のマーケティングデータは、現在のマーケット環境にまったく合わないものだったのです。データは定期的にアウトプットされているのですが、経営陣の経営判断にはまるで使えないものでした。それどころか、十年一昔の内容で、このようなデータを出せば、経営判断を惑わすものであったのです。
 私は戸惑いを隠せませんでした。その人への事前情報がなければそうではなかったでしょうが、「優秀である」という評判を聞いていたからです。その人と直接話をする機会があったので、婉曲に聞いてみたのですが、その人自身は「自分のマーケティングデータに問題がある」とはまったく思っていませんでした。ところが、客観的に考えれば、その人のデータ分析は時代遅れになっていたのです。

・・・なぜこのベテランのマーケティング担当者は、そうなってしまったのでしょうか。その理由こそが冒頭に掲げた「代替人材のいない不幸」だったのです。

「危機感の欠如」はビジネスパーソン最大のピンチ

 まず、私自身のことを話しましょう。私がマーケティングの仕事をしていた当時のことです。私が急にいなくなっても、おそらく数名の代わりの人材が社内にいたと思います。特に、最初のころはアウトプットのレベルも低かったので、代替人材の数は数え切れないほどでした。
 当時、マーケティングデータの分析は、私の部署で集中的に行っていたのですが、分散して商品側でやった方がよいのではないかという意見もあり、部署自体の存続の危機でもありました。
 別に組織を存続することが目的であったわけではありません。しかし、私たちの部署の存在意義は示したいと思っていました。様々な本を読み、社内外の専門家から意見収集に努めました。つまり、「代わりの人材がいる」、いつ「組織自体がなくなるかもしれない」といった強い危機感があったのです。それが、成長の駆動力になったのです。
 これでお分かりかもしれません。
 前述のベテランのマーケターには「危機感」がなかったのです。その人の組織は小さく、その人以外にデータ分析ができる人は皆無でした。その状態で数年が過ぎたのです。マーケティングデータで分からないことがあれば、必ずその人に相談が来るのです。その状態が続くと、人は学ぶのを止めてしまいます。つまり、「ラーニング・アビリティ」が低下するのです。そうなるともうダメです。環境変化の激しい現代では、学ぶことを止めた瞬間から、能力低下が始まります。厳しい話ですが、しかし、事実なのです。
「代替人材のいない不幸」とは、まさにこのことなのです。
 人間は弱い生き物です。自分の存在が脅かされないと思えば、進化を止めてしまうものです。つまり、「代替人材のいない状態」はきわめて居心地がよい状態ですが、その状態でも「ラーニング・アビリティー」を保ちつづけて、進化しつづけないといけないということです。
 もしも、同じ部署に代替人材がいない、つまりライバルがいない場合は、他の部署にあなたの立場を脅かす人を見つけてください。社内にいない場合は、社外に見つけてください。仮想ライバルがいた方が、危機感を醸成しやすいからです。
「代替人材のいない不幸」。覚えておいてください。

図でシンプルに示すと、こういうことです。

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なるほど、誰もが陥りがちで恐ろしい話ですね。
あなたの職場にもいないでしょうか?
「代替人材がいない」ために「危機感」を持つことなく働いている人が。

あなた自身が「自分がそうかも・・・」と思い当たる節があったら、ヤバいかもしれません。でも、だいじょうぶ。処方箋があります。

変化の激しい時代には「危機感」が欠如すると、ヤバいということは、誰もがなんとなく感じ取っていることでしょう。ただ、人間には「現状維持バイアス」が強烈に備わっています。「現状のままでいたい」というメカニズムが働きます。

このメカニズムは生物レベルのものであり、ホメオスタシスと呼ばれます。生物には内部環境を一定の状態に保ちつづけようとするメカニズムが進化のなかで強固されました。

したがって、「危機感」は意図的に持たないとヤバいのかもしれません。

1億総学び時代で生き残るためには?

ところで、上述の引用に出てきた「ラーニング・アビリティが低下する」とはいったいどういうことなのでしょうか?

ラーニング=学ぶ
アビリティ=能力

「学ぶ能力」ですね。「学ぶ能力が低下すること」がなにを意味するのか。

 私はかつてビジネスパーソン向けの大規模調査を担当していました。
 その中で、興味深い調査結果がありましたので、紹介します。その調査では対象者に対して以下の設問に答えてもらいました。

設問:
過去1カ月以内に仕事に関連する学び(本を読む、社内外の専門家に話を聞くなど含む)を行ったか?


 あなたはいかがでしょうか? 今まさに、この本を読んでいるわけですから、この段階で「学び」実施者の仲間入りです。
 ちなみに、この調査の対象者は、正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、パート、フリーターなどすべてのワーキングパーソンが対象でした。「学びを行った」と回答したワーキングパーソンは全体の17%、2割弱にすぎませんでした。つまり実に残りの8割強の人は、この1カ月間、仕事に関して新たに学んでいないのです。
 そして、この学びへの態度と年収の関係を調べると、この2割の平均年収は、他の8割と比較して総じて高いという結果が出ました。

なかなかショッキングな調査結果ですね。

本を読んだり、専門家の話を聞くといった「学び」をやるかやらないかで、年収が左右するとは。

たしかに、自分の周りでも、バリバリ稼いで、仕事もプライベートも大忙しな人は、すきま時間で本もよく読んでるし、セミナーやら会合にも積極的に参加している印象です。

時代の変化とともに「即戦力」の定義が変わってきた

こうした「学び」「ラーニング・アビリティ」が重要なのは、なぜか。

それは「時代変化」が激しいからです。

昨日の常識が明日の非常識になる時代。私も社会に出てずいぶん経ちますが、ここ数年の変化のクソ激しさには日々驚いています。

そうなってくると、「人材の価値」もこれまでとガラリ変わってくるようです。

 環境変化が小さいかつての状況であれば、現在の能力を長期にわたって、そのまま使用し続けることができます。極端な場合、ルーティンで仕事がこなせるため、新たな知識や能力を取得する必要はなかったかもしれません。
 しかし、めまぐるしい環境変化がある今日の状況では、昨日まで使えた能力や経験が陳腐化してしまうことは想像に難くありません。企業自身もそうです。環境変化に対応できなければ、自然淘汰(つまり倒産やM&A)されていくのです。
 話を元に戻しましょう。
 結果として、企業の中途採用の選考にも変化が表れてきています。
 従来であれば即戦力ということで、現在の能力・知識に期待して採用の合否を決める場合がほとんどでした。
 もちろん、現在でも即戦力を求める姿勢は同じです。
 ところが、その「即戦力」の定義が変化してきたのです。『現在だけではなく、将来にわたって戦力となり得るか』という視点が加わったのです。
 つまり、環境変化に対応して自発的に新しい知識や能力取得を行う姿勢(これを私たちはラーニング・アビリティー=「学ぶ能力」と呼んでいます)を維持し、イケてる社員として会社に貢献し続けてくれるのかというポイントが重要視されるようになってきたのです。
 下の図のように、従来であれば「現在能力はあるが、ラーニング・アビリティーが低い」人材の方が「現在の能力は劣るが、ラーニング・アビリティーは高い」人材よりも企業の優先順位は高かったのですが、現在では逆転するケースが出てきたのです。

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採用にあたっては「ラーニング・アビリティ」があるかどうかが重要になってきたという話です。

Aさん=能力・経験・スキル面ではバッチリだけど新しいこと学ぶ気ゼロ
Bさん=能力・経験・スキル面ではイマイチだけど新しいことをガツガツ学ぶ

これまではAさんが採用されてきたのが、これからはBさんを採用したほうが、組織にとってはプラスになるケースが多いということです。

ラーニング・アビリティのある2割のグループに仲間入りしよう

 新人の営業時代に私は企業の新卒採用のためのメディアを扱っていました。その関係で、「中尾通信」と銘打って、大学生が読むメディアのトピックスとビジネスメディアの採用関係のトピックスを担当顧客に送付していました。
 今のようにインターネットのない時代でしたので、それらの情報を入手するには媒体を購入して、実際に読むしか方法がありませんでした。
 私自身は、大学生と企業の人事担当者の両方が商売相手ですから、彼らの考えている情報は常に入手しておく必要がありました。
 学生は毎年変わります。彼らの興味関心も変わります。常にラーニング・アビリティーが求められる環境だったのです。それを顧客向けに情報提供メディアとして転用することで、役に立つ営業担当というブランディングを行い、仕事の生産性を向上させたわけです。
 一般的に年齢を経ると保守的になり、新たな知識を習得しない傾向が強くなってきます。そのわりに大企業では年功序列で賃金は高い。そうした結果、このような人がリストラの対象となるという側面もあるのです。
 変化の大きい時代は、年齢や経験にかかわらず常に知識や能力のバージョンアップをしつづけなければなりません。
 ただ、ワーキングパーソンの中で、たった2割の人しかラーニング・アビリティーはないのです。少なくともあなたはこの本を手に取ったわけです。この姿勢を続けることができれば、この2割のラーニング・アビリティーがあるグループに仲間入りし、転職にも有利であるはずです。


A「能力が足りない」
B「経験も少ない」
C「スキルも不安」

こうした3重苦に悩む若きビジネスパーソン、いや、A~Cすべてに自信を持っているベテランこそ真摯に「ラーニング・アビリティ」を高めていくことが大切。

こんなメッセージが読み取れます。

これこそが大不況時代を生き抜く秘訣かもしれません。

逆に言えば、このたった2割の「学ぶグループ」に仲間入りすることで、あなたのキャリアは守られる。そう考えれば、未来は明るい。

そう考えて、がんばることにします!

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