オンラインという料理人の独立に対するリスクヘッジ
私自身がECサイトを使って商売を経験していることもあるが、今回はオンライン店舗がもたらす圧倒的な独立までの準備の差を考えたい。
実体験をもとに恥ずかしい話ではあるが例に出して話していきたい。
ECサイトが教えてくれた自分の傲慢さ
普通のレストランはシェフクラスでないと経営に参加させてもらうことはできない。中堅スタッフでも毎日の業務に追われるし後輩の指導もしなければいけない。
そんな状況で限られた人しか店を運営することの重要性を享受できなかった時代から比べると、ECサイト内での自店舗出店は革命的である。
きっとシェフ以下の人でも独立を考えている人は多くいるだろう。
頭ではメニューを作りプロモーション、売り上げ管理から原価調整や資金調達などをしなければいけないのはわかっていても、実際に経験できるわけではない。
そんな人たちの独立までに何かできることといったら、
季節ごとのメニューを考えさせてもらい、そこでお客様の反応を見る
ということだけの人が多いのではないのかと思う。
ECサイトは若手、中堅、大御所を問わずにどんな人間でも平等に経営を学ぶチャンスを与えてくれると思う。
私はECサイトを使うことによって、「自分が思う料理の形と」「消費者の思う料理の形」に大きな乖離があることを思い知ったし、今までどれだけ自己満足の料理を考えてきたかもわかり大きく反省できた。
フランス料理を長いことやってきているせいか築かれた傲慢な私の心は、以前まではカフェスイーツも下に見ていたが
恥ずかしい話、自分が「どやっ」と思えるものは一般の人には全く受けない。
今まで小ばかにしていたものにも勝つことができない現実は、今まで料理しか見ておらず本当の意味で飲食業に携わっていなかったことを露呈した。
あの時は本当に恥ずかしかったし、情けなかった。
ECサイトを始めたことによって料理はもちろん重要ではあるが、世の中でどんなものに人気が集まっているのか、流行っている店はなぜ人を引き付けるのか、など料理以外のマーケティング要素の学びが多くあった。
普段キッチンに閉じこもっている料理人は、その中でしか成長できなかったり飲食業界を料理の腕のみの世界だと勘違いしてしまうことも多い。
しかし、料理を極めんという料理業界でもお金を稼ぐということは当たり前に重要で
私という料理人がいかに傾いた思考だったかがよく分かった。
現時点で働いているレストランのオーナーあるいはシェフが「料理以外の要素」をしっかりと教えてくれている人であればそれはかけがえのない財産になるだろう。
料理人の世界には料理を教えてくれる人は多いが「料理人を続けていくためのお金の稼ぎ方」を教えてくれる人は本当に少ない。
オンライン出店が教えてくれる「独立=退社」ではない答え
独立=所属していた店舗や会社を辞める という流れは必然的になると思う。
しかしオンライン上での出店では現状を変えることなく増収ややりたいことができる可能性はまだまだ残っている。
それはオンラインの特性が料理の特性とちょうどよくマッチした結果ともとれるが、
オンラインでの受注生産のシステムを構築してしまえば、基本的に売れ残りありきで考えるパン屋も廃棄ゼロは夢ではない。
オンラインの特性は料理人の隙間時間の有効活用を促してくれる。
その反面商品が「におい」や「温度」といった五感で消費者の方には伝わらないのでどこで自分の商品に付加価値を持たせるかは通常の店舗販売よりも工夫が必要である。
しかし、商品を五感で伝えれたとしても付加価値を高めていく工夫は今後当たり前に必要な能力だし、オンラインの弊害とは言いにくい。
いつまでも現状のレストランに残って並行してオンラインショップを運営するというのは
長い目線で見ると独立願望のある料理人にとってアルバイトのような感覚に陥ってしまい当初の目的を忘れてしまいかねないので長期の同時進行は勧めできないが、
独立を目指す料理人の「料理以外の大切な独立のための能力つくり」にとってオンライン店舗の出店は、今までのやり方では足りなかった部分の補強をどんな人にも経験するチャンスを生む。
独立開業までにいろんなことを経験しておいて石橋をたたいておきたい瞬間に、
様々なツールを駆使して経験をするチャンスをくれるのがオンライン店舗の独立までの使い方なのではないかと思う。
独立してからも食品廃棄や人件費、経費を抑えることにも場所の関係ないオンラインという立地は優位に働くし、結局料理人がオンラインというものをどのように扱って共生していくかが今後の料理人のリスクヘッジにもなるのだと思う。
2020/5/19
働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。