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なぜ日本は『カスハラ大国』になったのか?【読書日記】カスハラの犯罪心理学|現状、取り締まる法律がない不都合すぎる真実をお伝えします。

本書の結論は
お客様は「神様」ではありません。
お客もお店も「おたがい様」です。


どうも読書セラピストのタルイです。


突然ですが、

あなたはカスタマーハラスメント

通称カスハラをしたことがありますか?

「されたこと」があるかではなく
「したこと」があるかです。



いきなり変な質問をして
すみません。

これには理由があります。


2020年にインターネット上で
男女2060人に行った
カスハラ調査では

なんと全体の45%にあたる
924人


「悪質なクレームを
 起こしたことがある」

と答えたのです。

このアンケートに加えて
カスハラ自覚がない人が暗数として
存在していると考えられます。

よって

「誰でもカスハラをする可能性がある」

といえるのではないでしょうか。


このアンケート結果からわかることは

カスハラ行為に及んでいるのは
特殊な人たちではありません。

実は「普通の人」だったのです。


お客からの暴言や暴行、
不当要求などで
働く人の就業環境を害する
カスタマーハラスメント


いま日本ではカスハラが
大量発生しています。


コロナ禍で従業員に
店内でのマスク着用を
求められた客が

「俺をコロナ扱いするのか」

などと激高して
猛暑日に店外で30分以上も
怒鳴り続けた。


男性客が女性店員に
高い場所の商品を取るように頼み

女性店員が台に上がると
お尻を触ったーー。


これらは本書に書かれていた事例です。



著者の桐生教授
大学教員になる前は、

山形県警の科捜研で
犯罪者のプロファイリングを行っていた
犯罪心理学のエキスパートです。


https://www.toyo.ac.jp/nyushi/column/video-lecture/20151117_03.html

桐生正幸(きりう・まさゆき)
山形県生まれ。東洋大学社会学部長、社会心理学科教授。日本犯罪心理学会常任理事。日本心理学会代議員。文教大学人間科学部人間科学科心理学専修。博士(学術)。山形県警察の科学捜査研究所(科捜研)で主任研究官として犯罪者プロファイリングに携わる。その後、関西国際大学教授、同大防犯・防災研究所長を経て、現職。著書に『悪いヤツらは何を考えているのか ゼロからわかる犯罪心理学入門』(SBビジュアル新書)などがある。


そんな犯罪心理学に詳しい
桐生さんは本書で述べています。

カスハラは
店と従業員に対する小さなテロ


実際にカスハラ加害者
テロリストは傾向が
似ているのだそうです。


テロリストは孤独感を抱え、
自分の社会的な役割と
自己評価のズレから
社会に対して不満を抱えている。

けれども
政治思想もなく
他者を巻き込んで
自爆する単独テロ行為

被害者意識が強く
責任転嫁しがち

歪んだ自己主張に酔っていて
承認欲求の強い言動をみせ

去勢を張り、
一点に固執し
突然に怒って攻撃してくる。


カスハラする人は
「小さなテロリスト」なんです。


2022年2月には
厚生労働省からも
カスタマーハラスメント対策企業マニュアル

が発表されました。


国もやっと
本腰を入れはじめたのですが…


ところがまだ日本には
カスハラを取り締まる法律
がないのです。


今回、切にお伝えしたいのは
この不都合な事実なんです。


実は私のクライアントのお店でも
カスハラ被害が増えています。


カスハラを受けた従業員は、
ストレスや不安、うつ病などの
メンタルヘルスの問題を
抱えることがあります。


これらは
従業員のモチベーションや生産性に
影響を与えてしまい

会社の業績に悪影響を
与える可能性があります。


現状、
取り締まる法律はないにしても

カスハラ加害者から
被害者である従業員を
守らなくてはなりません。



ここからは

・そもそもカスハラとは何か?

・なぜ、カスハラは起こるのか?

・どうやったらカスハラは防げるのか?

以上に視点から本書を要約します。



◆そもそも『カスハラ』とは何か?


カスハラとは、
「カスタマーハラスメント」の略です。

お客が店員やサービス提供者に対して
暴言や暴力や性的な発言や
セクハラ行為をも含む
不適切な行為をすることを指します。


さてここまでを読んで
クレームカスハラの違いって
わかりづらいと思いませんか?


この2つの違いは
非常に曖昧なんです。


クレーム
は、顧客が消費者として
商品・サービスに対する不満や
改善点を指摘するところが
根幹にあります。

ですが、

カスハラの場合は、
商品・サービスの改善を特には求めず
顧客の個人的な行動
行われるケースが多いのです。


本書ではカスハラを
5タイプに分けて
説明されてました。

◆カスハラの5つのタイプ

①思い込み・勘違いタイプ

カスハラ加害者は
自分が常に正しいと
信じているようです。

「不良品を買わされたわ!
 いますぐ新品を持ってきて!」


購入した商品を
不良品だと思い込み

会社や店側から
勘違いを指摘されて恥をかき

責任転嫁から引っ込みがつかず
クレームを言い続けるタイプ。

実に見苦しい。。。


②歪んだ正義感タイプ

カスハラ加害者は
自分の正義感を満たすために

店員や企業に対して
「アドバイス」と称した
カスハラを行うこともあります。

「君では話にならん!
 責任者を出しなさい!」

と責任者を呼び出し、

「君の気苦労もわかるよ…
 私も長年チームを率いる立場だった」

と、寄り添う感じに発言しながら
頼んでもいないのに改善点を指摘し

アドバイス料と称して製品を要求する

実に厚かましい。。。


③ストレス発散タイプ

個人をターゲットにしたカスハラです。

「⚫️⚫️さん出してくれる?」

と個人をターゲットに呼び出して、
長々と説教します。

またターゲットが
シフトを変えても
曜日を変えて来店してくる。

従業員を萎縮させて
謝罪する姿をみて
鬱憤を晴らすゲスです。

こいつを放置するとストーキングにも
発展します。

④攻撃的タイプ

土下座を強要して写真を撮り
さらに謝罪を要求する。
その写真をネットで拡散する。

これは立派な「強要罪」です。


⑤強い執着タイプ

「なにもかもこの指輪が悪い!」

とプロポーズを断られた理由を
商品のせいにする男性客。

従業員個人ではなく、
商品に異常に執着するタイプです。

中には過度なストレスで
正常な判断ができないくらい
精神状態がおかしい人もいます。


◆「年齢」「年収」「プライド」が高い人はカスハラしやすい人


本書の内容をもとに
カスハラする人の
特長と傾向をまとめてみました。

攻撃のタイプとしては
男性は身体的、女性は言語的と、
攻撃のタイプが異なります。

女性は30~40代で
商品の欠陥を理由に
淡々とクレームを述べて
商品や商品代を受け取るタイプが多い。

男性は50~60代で
店員のミスや手続不備などを理由に
高圧的な態度を取り、
上層部からの謝罪を受けるタイプが
多いそうです。


ところで日本では昔から
「金持ち喧嘩せず」
といいますよね。


クレームを挙げる人も
どこか心に余裕がない
貧困層がしそうな感じを受けます。

ですが
これは大誤解でした。

なんと!

世帯年収が1000万円以上になると
カスハラ加害経験の割合が
増えるそうです。

つまり金持ちは
喧嘩はしないけど
カスハラはするのです。


ですから
経済状態の悪さが
カスハラを増長させる

というような見方は
必ずしも正しくないかもしれません。



◆なぜ日本はカスハラ大国になってしまったのか?


ここまでのまとめで
日本はカスハラ大国と言えることは
ご理解いただけたかと思います。

ではいったい
なぜ日本ではこんなにも
カスハラ客が増えてしまったのか?


その理由としては


日本では価格競争以外に差別化できる
「おもてなし」を重視したことで、

お客の期待値が高まりすぎて
サービスとのギャップが生じたことが
カスハラの要因と考えられます。

つまり、
「お客様は神様」
という間違った思い込みです。



著者の桐生教授は

「日本は戦後の高度経済成長で大きく発展した一方で、個人は自立できずに他人の顔色をうかがって生きる社会でした。自立した個人としての寛容さがないことが、カスハラ大国の一因ではないでしょうか」

と指摘されています。


しかし、日本も最近では
同調圧力や画一的な生き方から
人々が解放されつつあります。

カスハラに対する意識も
変わり始めています。

カスハラは許されない行為であります。

被害者も加害者も
互いに尊重しあう関係を
築くことが必要なのです。



◆カスハラ防止法案はできないのか?


現在、パワハラやセクハラなど
職場におけるハラスメントに対する
法規制は存在します。

ですがカスハラは現状では
取り締まる法律がないです。

わかりやすく「土下座」や
「金品の要求」がない限りは
刑事事件にもできません。


厚生労働省は2022年に
「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」
を発表しました。

その内容については
「カスハラとは何か?」を
定義しながらも

「どこからがカスハラなのか?」

この線引きまでは
明文化されませんでした。


桐生教授の考える
カスハラの線引きはコチラです。

カスハラの定義

①相手に大声や暴言を発する、ないし著しく粗野もしくは乱暴な言動ををすること。

②店舗内などで、長時間にわたり、要求を繰り返すこと。

③電話やメール、SNSなどで要求を繰り返すこと。

④相手に性的羞恥心を害する事項を告げること。

⑤要求が満たされない時に相手が不安や恐怖を抱く言動をおこなうこと。

⑥従業員や店舗、企業の名誉を害する事項を告げ、またはそれを不特定多数が知りうる状況に置くこと。

⑦営業をおこなうにあたり、行動の自由が著しく害される不安を抱かされること。

これでしたら
いくつかの事例が明文されていれば
「これはカスハラだ!」

とわかるようになりますね。


⚫️いまできるカスハラ対策


職場内で共有したいのは、
著者の桐生教授が提案する

「被害に遭った際に取るべき
 5段階の手順」
です。


こちらの図をご覧ください。


ポイントは❸状況を整理する

「ノンカスハラ」
「じわじわカスハラ」
共感的対応までで
解決することが多いそうです。

しかし
「異次元カスハラ」に対しては
以下の4つの攻撃タイプに応じて
防護策が必要です。


1. 「回避・防衛」としての攻撃

自分が危害を受けたという
被害意識が強く
相手の悪意や敵意を原因として
攻撃行動をとります。

「はい、おっしゃることは
 ごもっともです」


といった返答で相手に対して
差別的な態度を
とっていないことを示す。

2. 「影響・強制」としての攻撃

自己主張や競争心や支配欲が強く
自分の意見を通すために
攻撃行動を利用します。

また、
地位や権力がある場合にも
このタイプの攻撃行動が
起こりやすいこともあります。

「しばらくお待ちいただけますか」

と返答して上司を呼ぶなど
心理的に距離を取る。


3. 「制裁・報復」としての攻撃

自分が正義であり、
相手に責任があると
信じる傾向があります。

法律や社会的ルールに
違反した人を制裁し
報復するために
攻撃行動をとります。

「その件については
法律に詳しいものに相談します」

と述べて、
相手の出方を冷静に眺める



4.  同一性・自己呈示としての攻撃

自己呈示(self-presentation)とは
自分をよく見せようと
アピールすること
です。

「自分は正義」
「やられたらやり返す」
と考える人たちです。

体面やプライドにこだわりがあり、
自分のイメージや名誉を守るために
攻撃行動をとります。

「おっしゃる通りですね。
ご指摘どうもありがとうございます。」

と、相手のプライドを損なわないようにする。



攻撃行動には4つパターンが
あることを知っていれば

「この人は話を聞いて
 もらいたい人なのかな?」

「バカにされたくない人なのかな」

と予想が付きます。


それだけでも心の余裕ができ、
カスハラ対応のストレスが
軽減されます。

また、
組織的な対応もしやすくなります。




◆〈タルイのまとめ〉カスハラ加害者は「カス」です。


「カス」とは自分の保身のために
自分の不利益・不都合でしか
ものごとを考えられない人のことです。

人間から良心をとりのぞいた
残りカスです。


自分の行為を正当化するために、
道徳的な価値観や規範を歪めたり
無視したりします。


「自分は権利を主張しているだけだ」

「相手は仕事ができないから
 文句を言われて当然だ」


「相手はサービス業なんだから、
 客の要求に応えるのが義務だ」


「相手は自分より立場が低いから、
 敬意を払う必要はない」

このように
自分の行為に対して
都合のいい理由をつけて
自己正当化を図ろうとします。

自分の行為に責任を取ろうとせず、

被害者や社会に対して
非難や攻撃を繰り返すことで
自分の心を守ろうとしているのです。

本能のおもむくままに生きることは
人間の本来の生き方ではありません。


私たち人間には理性があるのです。


以下を理性に基づいて
書き残します。


1. お店と顧客の関係はフィフティーです。

日本では長年「お客様は神様」
曲解した商習慣が続いてきました。

諸外国に比べて
「お金を払っているのだから偉い」
という意識があるのです。


でもよく考えてください。

そもそも買い物とは

・自分で得ることのできない物品を
対価を払って得ること

・自分ではおこなえないサービスを、
自らに代わっておこなってもらうことです。


つまり、

お金を払っているんだから
偉いなんて
そんな道理はないのです。



サービス業の現場で働く
従業員のみなさんは

顧客に対して
常に笑顔や親切さを見せることが
求められる
のです。

これを「感情労働」と呼びます。

そして欧米では感情労働の対価に
「チップ」が支払われますが

日本ではその対価が
支払われていないのです。

だから日本での買い物をすることは
必然的に「お値段以上」なんです。


「『お客様は神様』という言葉が曲解されていますが、客は神様ではなく、客も店も『おたがい様』です。互いに尊重することができればカスハラは減り、日本の消費者社会も成熟したものになると思います」

本書あとがきより


客も店も『おたがい様』

日本は神道や仏教などの宗教を
融合させながら変遷してきました。

その中にはお互い様の精神を表す概念や
行為が多く見られるのです。

「和」や「恩返し」、「お裾分け」、「お年玉」、「お土産」、「お祝い」、「お見舞い」、「お供え」、「お焚き上げ」などです。

これらは他の国では
あまり見られないかもしれません。


感情労働によって
従業員の自己尊重感や
自己効力感が低下すると、

顧客からのクレームに対して
適切に対処できなくなる
可能性があります。


それがどうしても
理解できないのならば

買い物は全部amazon

外食はしないでUber eats

そして配達員とは
非対面接触で受け取ればいいのです。



2. たとえキレて暴言を吐いても、イライラは解消しない

桐生教授がカスハラ経験者に

「クレームをおこなったあと、
 あなたの心身の状態に
 なにか変化がありましたか?」

と尋ねた調査において

カスハラしてすっきりした
という人は少なく、

むしろ嫌な気持ちを
引きずっている割合の方が
多いということです。

接客に対して
時にはイラッとくることも
あるかもしれません。

ですが
怒って従業員を攻撃しても

ネガティブな状態は
必ずしも解消されません。


だったら落ち着いて
お互い気持ちのいい解決の仕方を
考えたほうが合理的です。



どうかカスハラ加害者は
理解してほしい。


従業員だって同じ人間なんです。


自分の要求内容や手段が
妥当かどうかを冷静に判断してほしい。


相手の立場や感情を尊重してほしい。


社会には相互理解や
相互尊重の精神が
必要なのです。



【目次】
・序章 衝撃の実態
・第1章 キレる"お客様"たち
・第2章 カスハラの心理構造
・第3章 "お客様"の正体
・第4章 カスハラ対策の最前線
・第5章 カスハラ防止法案という希望
・終章 カスハラのない国へ


最後までお読みいただき
ありがとうございました。

感想はスキとコメントで
教えて頂けると嬉しいです。


いまイオンなどが加盟する
UAゼンセンさんをはじめ、
政界に働きかける動きがあり

日本でも遅くとも数年以内に
カスハラ規制法案ができて
ハラスメントに対する罰則が
定められると思われます。


一刻も早い法案成立のために
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