発酵はなぜ人を魅了するのか(後編)
前回のあらすじ
発酵は微生物の働きで何かが何かに変わるのだ。
※五ヶ月も前に書いた前編を見てない方はこちらをあらかじめみることをお勧めします。
というわけで、後編のはじまり。
発酵で何が起きているのか
発酵において必ず起きているのは、成分に変化が起きているということ。
例えば、糖→アルコールになることで、ただの甘い液体がお酒という魅力的な液体になり、人々の生活を豊かに(そして破滅的にも)します。
ほかにも、
たんぱく質が分解されてアミノ酸になり、旨み成分が増強されたり
乳糖が乳酸になってお腹がゴロゴロしにくくなったり
糖がアルコールになって有害な菌の繁殖を抑えたり
人間にとって役に立つことをたくさんしてくれます。
この「成分が変換される事」こそが発酵食品を発酵食品たらしめている1番のコア。
発酵は人類の培ってきた食に関する知恵とも言えるでしょう。
発酵はなぜ人を魅了するのか
では最後にいよいよタイトル回収。
発酵食品という響きに惹かれる人は多いでしょう。それは消費者視点だけではありません。
醸造に魅了され、それを生業とし、発酵・醸造と一生付き合い続ける職人は世の中にたくさんいます。
なぜ発酵にはそんな魅力があるのか?
わたし自身は酒造りや調味料などいわゆる醸造に関わった経験はなく、どちらかというと機能性成分を探索するために菌の力を借りていた身です。
そんな薄っぺらい経験ではありますが、私の頭の中を言語化していきます。
何が起こるかわからない
これは本当にいつも思う。なんか思った通りにいかなくて、予定通り行かない。だって生き物なんですもん。だからおもしろい。
人工では作り得ない何かがある
何が起こるかわからないかも、調べてみたら思ってもみなかった属種が思ってもみない成分を分泌したりするし、極論言うと微生物の可能性は無限大。
ここまで複雑な成分群を化学合成で作るのはムリやろな、、ってことがしばしば。
独自の文化が発展しやすい
微生物は生き物。いろんな土地にいろんな奴らがいて、日本の国の菌は「ニホンコウジカビ (Aspergillus oryzae)」なんて話もあるくらい。
海外の人が納豆を苦手にするように、各国の発酵食品はその菌とともに独自の食文化を形成している・・それだけでなんかいい!
時の試練に耐えるだけの意味
文化や伝統は馬鹿にできません。残っていることには意味がある、なぜかはわからないけど意味がある。
なぜか分からないなら突き止め甲斐があるよね!
ということで、伝統食などをサイエンスによって解き明かす事例もよく見かけます。
仮説と検証をくり返せるので楽しい
発酵を含む工程が複雑で試行錯誤の連続です。
・原料を何にするか
・原料のどの部分を使うか
・発酵条件(温度、時間、pH)をどうするか
・後工程をどうするか
などなど、いじれるパラメータがおそらく一般的な食品製造の中でも多いと思います。
つまりね、実験のしがいがあるってことなんですよね。仮説を立てて何度も試して解析してもう一度仮説を立てて・・・もしかしたら醸造家は一生この作業の繰り返しなのかもしれませんね。
それが苦しくもあり楽しい。
生き物なので愛着がもてる
最後にバカみたいな話ですが・・・理系の方で細胞実験や微生物の実験をしたことある方なら絶対わかるはずです。
増殖するの、可愛くない?
いや、慣れたらそりゃそうかってなりますよ。でもね、培地調整したり、いろいろ準備した結果、顕微鏡覗いたら元気に増えてる、この最初に与えられるえもいえないあの成功体験は何事にも変え難いもの。
まとめ
ということで、発酵食品は人間を魅了してやまない理由をつらつらと言語化してみました。
発酵食品は伝統的なものという印象は強いながらも、だからこそサイエンスしきれていない知見もたくさんあります。
ちなみに、醸造関連の工場や蔵って結構見学できることも多いし、出来立てを振る舞ってくれるところなんかもあります。
みんなも工場見学をして醸造を学ぼう!
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