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うみをみわたすほしのひとかげ (短歌)

《ある日、日没のあとに江ノ島の灯台に登った。まわりで恋人たちが愛を囁きあっているあいだに座って、三才の息子と海に掛かる月を眺めた。そのとき息子が突然口走った歌》


たららららーたららららららーなんだっけー
うみをみわたすほしのひとかげ


《下の句だけを口走った息子に、上の句も作って!と煩くせっついてみたが、結局適当にこんな程度にしか作ってくれなかった。下は同じときのわたしの歌》


大海の一歩手前の白波の
くれなずむ岩に灯をともすひと




《神と恋に落ちること、についてずっと考えている。下は前に投稿した、「落ちれば良い、と神が言ふ、わたしと恋に落ちれば良いと」という歌の前後についていた歌》


神経も脳も言葉もかたまって
みあしのもとに投げる秋の夜


あしもとを拐へるやうにすくやうに
暴力的に我がことを主よ


《わたしと恋に落ちれば良い、という歌をさそいのように、キリストはわたしの頭になんども囁いている。十代をとうに越してしまったわたしは、恋に落ちるってどんなことだったかしら、と思いを巡らしてばかりいる》



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