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映画「渇き。」感想 : 理想の家族

「渇き。」を観ましたー!


公式が宣伝してる前評判が衝撃作とか銘打ってるから、
一応ストーリーを理解した上で観ました。




観た直後の感想。


という映画レビューに逆行するような気持ちを抱きました。

いや、こんなのまだまだエログロじゃない。

逆にもっと踏み込んで描写できなかったの?と不満すら覚える。

せっかくさー、役所広司使ってんだしさー
もっと突き抜けようぜーって

パッパッってライティング使って、場面変えて中途半端に誤魔化された感じが不満。




それはさておき。



これはろくでなし男の家族愛を描いたハートフル映画ですよ。

自己愛と他人愛を勘違いし続ける。

行き着く先は暴力と暴行。

言葉を尽くして、行動を尽くして、相手に向き合うということをしてこなかった(できなかった)人物だったのかなと思いました。

役職が元刑事だったのも関係してるでしょうね。

仕事に振り回されて、心も擦り切れていた矢先、
自宅に帰ると自分が長らく置いてきぼりにしてきたものに気がついてしまう。

腹が立つ。なんで自分が。

だから、ひたすら酒を飲んで泥酔してる。

愛されたい。尊敬されたい。大切にしてほしい。

どこでボタンを掛け間違えたのか。

あいつは俺を見透かしたように笑う。

腹が立つ。俺を馬鹿にしやがって。
笑うな。俺は愛されたかったんだ。
俺をもっと愛せよ!


という感じでしょうか。

聖母マリア像が出てくるのも藤島の愛情の飢えに対する描写な気がする。


「家族」に空虚感や憎しみを抱いたことのある人なら
藤島の心の中の孤独感や自暴自棄は理解しやすい感情ではないかと思いました。


時間は進んでしまうんですよね。
妻は無感情無関心になっていく。
俺を見てくれない。
子どもは成長してしまうんです。
いつの間にか生意気に。
俺の思う通りにならない。


腹が立つ。思い通りにさせたい。
俺を愛させたい。尊敬させたい。

だからあの強行に至るんでしょうね。
藤島は。あのやり方しかできないから。

あの「あいしてる」はまさに、
藤島の心と脳内には薬のように響き渡ったと思います。



とはいえ、あの妻じゃ無理ですね。
たとえ時間を巻き戻しても誰も幸せにはなれない。

誰も彼も他人を見ていないから。
自分しか見ていない。

で、失ってみて幸せの家族の形がリフレインする。

壊すのは今更むず痒いからだし。
手に入らないから壊したい。
僻みと嫉妬ですねこれは。

原作の方の藤島は作中、
そこにいない加奈子を頭の中で描いてるんですよね。

愛の飢え故に加奈子に執着した藤島でしたけど、

映画の中でストーリーが進むにつれて、

執着から愛着に変わっていく印象を受けました。

娘が所詮俺と同じ穴のムジナだという事実がなんか嬉しい。

「自分の手で」なんて憎愛の究極の形じゃないだろうか。

だから最後は自力で掘り起こそうとする。

これも親の愛情の形だと思っています。

子どもがしでかしたことを親が始末をつける。

非常に愛を感じるシーンを最後に持ってきたなぁと思いました。

だいぶ歪んでますけども。


んーいや、歪んでないな。
わかりやすい男。藤島。



結局執着は愛着に変わり不足感は執着以上。
藤島は渇き続けるのでしょう。



最終的に一緒に土の中で眠ったほうが藤島の理想の形のような気がする。

理想の家族の形にたどり着けるんじゃない?

幸せを感じられるんだと思う。
藤島にとっては。

個人の見解としては藤島はそうなってもらいたいなぁと思う。


元々の藤島そんなにいい人じゃないと思う。

でもあれはあれで幸せなのかも。




役所広司のクズ男に惹かれるー!やばい!







「ここだろう?」

 彼女はうなずく。装いはまだ夏服のまま。灼熱の日々はいまだに続いている。

 再会が叶った日には──。

 シャベルで雪を掘り起こしながら、湯気のように立ち昇る汗をぬぐいながら、男は彼女に願う。

おまえの本当の姿を見せてほしいと。
そして心の中のすべてを打ち明けてほしいと。
そしてどうかおれを愛していてくれと。
そしておれを許してくれと。

新装版 果てしなき渇き(下)



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