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短編小説 『色の魔法』 #ひと色展

 私は毎朝、魔法の箱を開け

「ど・の・色・に・し・よ・う・か・な~」

と、ウキウキしながらコスメを選ぶ。


 その日の天気や肌のコンディションによって緻密に変えるコントロールカラーにファンデーションやハイライト。

服装や予定によって決めるチークやリップ、アイライナーにアイシャドー。

その組み合わせ方が無限大だからこそメイクは楽しい。


 中でも私はアイシャドーが一番好きだ。

だって、パレットを開くと、吸い込まれそうなほどカラフルな世界が広がっているから。

同じ色に見えても、パール、ラメ、マットとニュアンスも違えば、パウダーやクリーム、リキッドと質感が異なるものもある。

単色でも塗る位置や、筆やチップ、指といった道具を使い分けて濃淡を変え、時に鮮やかに、時に繊細に目蓋を彩る。


 目蓋という限られたキャンバスに、下地を塗って、ベースカラー、ニュアンスカラー、締め色を塗り合わせていく。

それは塗る順序や、グラデーションを縦にするのか、横にするかでも雰囲気が全く変わってくるから奥深い。

 最近は、上目蓋と下目蓋で、あえて反対色を使うのがお気に入りだ。

パッキリと溌剌としたミカン色を上目蓋に、ひんやりと涼しげなラムネのような水色を涙袋にそっと添える。アイライナーはミカン色に合わせて、モスグリーンにしてみよう。

 鏡の中の自分を見て、ふふっと微笑む。

ほんの少しだけ垂らしたブルーハワイに沢山のミカンをトッピングした、かき氷みたいに見えたから。


 誰かのために色を決める日もあるけれど、自分のために選んだ色の目蓋は、世界中のどこへでも飛んていける羽のように美しい。

さあ、また今日が始まる。



 こちらに参加させていただきました🤗💕

メイクもまた芸術のひとつだなあ、という
思いを込めた作品です。

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