見出し画像

本屋大賞候補作:小川哲さん「君のクイズ」

こんにちは。おはなです。
今回は一冊の本の感想です。

直木賞を受賞された小川哲さんの本が書店にたくさん並ぶようになりました。
もともとは芥川賞受賞作品を購入予定でしたが残念ながらお品切れ。同時期に本屋大賞ノミネート作品も並んでいたことと直木賞受賞もあって小川哲さんの「君のクイズ」が多く陳列されていたので購入してきました。

こんなタイトルをつけていますが、10冊中どこまで読めるかは未定です。
それなのにnoteに残す理由は、この本めちゃくちゃ面白かったんです
そもそも前提として、自分はYoutuber「QuizKnock」が大好きで、東大王をはじめとしたクイズ番組を見ることが好きな人間です。
クイズ界とプレーヤーへの興味が人一倍あるからこそ楽しめたというのもあります。それはもちろんあるんです。
でも、ミステリーとしてもすごく好き!!!

ミステリーは起承転結がしっかりしていることが必要ですが、「え!?そんな結末なの!?(もしくはまさかあなたが犯人なの!?)」といった結末を楽しむ作品と、そこへたどり着くための推理の過程を楽しむ作品、どちらに重きが置かれているかは分かれていると思います。
そしてこの作品は圧倒的に後者です

〇あらすじ

クイズ番組『Q-1グランプリ』の最終決戦まで勝ち残った主人公・三島玲央。
決勝戦の相手は「世界を頭の中に保存した男」本庄絆
接戦の末、最終問題で本庄は問題が一文字も読まれることなく正解を答える。
果たしてこれはクイズなのか、やらせなのか。

「Q. なぜ本庄絆は第一回『Q-1グランプリ』の最終問題において、一文字もよまれていないクイズに正答できたのか?」

小川哲「君のクイズ」p.34

あらすじにある通りクイズ番組のやらせ疑惑がミステリーの軸にあるため、クイズプレーヤーが嫌な思いを感じるような言葉とかが少しでもあると怖いなと思たっため、すぐには手を付けることが出来ませんでした。
でも帯にて伊坂さんや山上さんが絶賛されているから大丈夫だろうと読み始めたところ、読み終わるまで他のことが何も手に付かなかったです。

好きなポイント① プレーヤーの脳内がのぞき込める

190ページにわたる本の中で、驚くほど多くのクイズが出題されます。
それはテレビ番組の問題はもちろん、主人公三島が常に脳内で回想とその記憶にまつわるクイズとそこから派生した知識を反復しているからです。

例えばこんな場面があります。
三島は他の出演者と共にテレビ放送後の控室にいます。
その様子から「公民権運動に参加する人々」を思い浮かべます。
人々を思い浮かべたら、次は年代を考えます。
「1964年」だと予想するとそこから「1963年」の出来事を考えます。
そこまで考えた後にもう一度他の出演者を見て、次は「ラシュモア山の国立記念碑」へうつります。
そこの露頭に彫られたアメリカ合衆国の大統領を答えよという問題がでたと仮定し、脳内で回答を述べます。

連想ゲームのように三島はひとつの状況や言葉を幹として、どんどん枝葉を広げていきます。
それはあまりにもリアルな「クイズプレーヤーの日常」のようで、人の脳内というのぞき込むことのできない世界を小説という形で文章化してくださったことに感謝と喜びが溢れますし、なによりそういう思考をされているのかと思うととても楽しくなります。
こんなすごいことが出来る人がいるのかと思えます。

好きなポイント② 視聴者とプレーヤーの境界

上記の私のように「クイズプレーヤーすごいなぁ。同じ人間とは思えない。天才過ぎる」という考えがある一線を過ぎると、きっと本庄のファンのようにやらせではないかと疑う側が悪であるという見方をしてしまうのでしょう。

実際に私の好きなQuizKnockメンバーにもしももしも、過程をすることもおこがましいのですが、やらせ疑惑などが浮き上がったときには「彼らの凄さを知らない人にそんな根拠のない発言は控えていただきたい」と強火厄介ファンになるのかもと考えてしまう自分もいます。

そうした「クイズプレーヤー」自身の気持ちと「視聴者・ファン」側のクイズプレーヤーを見ている人の気持ちの理解が深いと読みながら感じました。

彼らは自分たちとは違う高みにいるから、「魔法使いのような存在だから」と境界線をひいていたのは常に私たち側であり、彼らにそんなつもりは毛頭ないのだろうということもこの本を読むことでわかりました。
ただ「クイズが好きだから」好きなものに全力で取り組んでいたらその域に達していたのであって、全てを超人神話にするのはおかしいのでしょう。

ただ、「クイズが好きだから」という理由で世界の万物全般に興味を持ちそれを覚えようと努力し、脳内にいくつも引き出しを用意し、それを短時間でひっぱりだす力を身に付けられたというのは尊敬の対象であることは間違いないので、神格化したくなるんですけどね!

好きなポイント③ クイズとは何か

「早押しクイズ」は私にとって知識がある人間が勝つものであり、どれだけ多くの知識を身に付けているかによって勝敗がわかれるものだと思っていました。
でも「広辞苑を覚えた」という本庄絆に対して知識はあってもクイズが強いわけではないと三島は考えています。

そんな三島はクイズとは「数列」に似ていると言っています。
数列のようにルールがあり、そのルールの確定ポイントに気付くこと、そのルールにのっとって全速で計算を行うこと、しかし答えがわかってから推していては他プレイヤーに後れをとってしまうため、それがある程度の賭けであっても押して、そこから多くの可能性を考えた上で制限時間内に答えを出せる技量が必要であると述べています。

そこを読んでいる時百人一首を思い出しました。
競技かるたは暗記をしていることは大事だが、どこの言葉まで聞けば答えを絞ることが出来るかという「決まり字」も必要になります。
将棋においても「定石」はあり、自分の一手が相手の何手先もよんだ先での一手である必要があります。
クイズにおいても「知識」とは別に必要な物があることがわかりました。

本当はもっともっとおもしろポイントを語りたいのですが、やりすぎるとネタバレに安直に触れかねないのでこの辺りでやめておきます。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
4月の本屋大賞発表楽しみですね~!ぜひ予想しながら楽しみましょう!

そして、最終的な三島にとってクイズとは「何か」の答え。
ぜひ本書を手に取って答え合わせをしてみてください。





この記事が参加している募集

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートはビジネス書購入のために大切に使わせていただきます。