印刷&発送業務をしたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~
はじめに(チームより)
フローレンスは、親子を取り巻く社会課題の解決を目指しているNPOで、現在、約700名が所属しています。多様なメンバーの「働く」を支えているのがバックオフィス業務を主に担っている働き方革命事業部、通称「ハタカク」です。
ハタカクは人事、経理、法務、総務、といった業務で構成されていて、障害者雇用チームも含まれています。フローレンスの事業を裏で支えるハタカクメンバーの業務や仕事への思いをnoteに投稿しています。
認定NPO法人フローレンスの総務関連チームで障害者雇用のスタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>
知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。記事執筆の背景>>
▼本日のお悩み
「社内の印刷作業や発送業務を請け負いたいのですが、どんなやり方がありますか?」
ライフハック①作業開始前に印刷や発送情報をまとめる
事前準備をぬかりなく行おう
前にご紹介した名刺印刷をしたいを少しバージョンアップさせた、社内の他の事業部の印刷作業や発送業務も、障害者雇用の定常業務として引き受けやすいものです。
特に、会社案内やパンフレット、チラシやダイレクトメール等の印刷や送付は、まとまった作業量にもなり、依頼してくる事業部も人手として助かることでしょう。
まず、フローレンスでは印刷業務に限らず、障害者雇用スタッフチームへの依頼業務は、下記のように依頼者に作業依頼フォームに登録をしてもらい、下記のようにアプリに一覧化しています。一覧化することで複数人での管理が可能となり、ヌケモレもなくなりますので、おすすめです。
印刷と発送をする場合には、下記を決めておく必要があります。
・印刷設定…カラー、白黒、A4、A3、両面片面、印刷枚数
・セット方法…クリアファイルに入れるのか、ホチキス止めするのか、三つ折りするのかなど
・発送方法…普通郵便、速達、ゆうパック、DM便
・宛名…宛名印刷する場合はリストが必要
その他、差出人名、事業部名など
印刷に関しては、印刷物をWordやパワーポイントのままにせず、PDFにしてフォルダに格納してもらうようにしています。障害のあるスタッフのツール習熟度はグラデーションがあるので、Word等のままだと、ツールの開き方によって、ズレが起きたり、間違えて文章等を触ってしまう場合があるからです。
また、下記のようにPDFのファイルのタイトルに印刷設定を記入してもらうことで、印刷方法の間違いがないようにしています。また、1部だけ印刷見本を依頼時にもらうこともあります。
印刷方法が複雑な場合は、下記のようにページ数や印刷方法等をExcelやスプレッドシートにまとめた上で、マニュアルも作っておくと、次回同じような作業依頼が来た時に迷わず作業することができます。
ライフハック②請求書や契約書等の定期的な発送物も請け負ってみる
難易度の高そうな発送物も工夫して対応してみよう
請求書や契約書など、大量発送以外の発送業務を請け負うこともできます。大量発送との違いは、いつやるのか、確認は誰にとるのかなどを詳細に決めておく必要がある点です。
まずは、マニュアルを作ります。下記はフローレンスで行っているある書類発送のマニュアルですが、マニュアルには、「いつその業務を行うのか」や、ツールから発送物を印刷するので「ツールの使い方」「印刷方法」「専用封筒の置き場所」等が詳細に記載してあります。
重要なのは、個別に送る先が違うので、宛名と封入物が間違っていてはいけません。「間違いがないのか(一致しているか)」の確認にも、ひと工夫します。
例えば、下記の写真のように、あらかじめ付箋に宛名と封入物をメモしてファイルに貼り、その中に印刷したものを入れておくことで間違いを防ぎます。その後、付箋には、宛名と封入物に間違いがないのか「✓チェック」をしていくのにも利用します。
また、発送物の間違いが無いように、下記の写真のように、各事業部の依頼者に内容を確認してもらってから、発送作業をするようにしています。
これは、障害のあるスタッフを守る意味も含まれており、発送者の事業部の方に最終確認をしてもらうことで、責任の所在も明らかにしています。
間違うことは誰でもあることですが、工夫次第で間違いを防ぐことはできます。
ライフハック③「フォルダに入れておくだけ」の仕組みを作る
朝は名刺が無くても、午後にはロッカーに名刺が届く
名刺印刷をしたいでも紹介した通り、フローレンスでは、スタッフが自分の名刺PDFをフォルダに格納するだけで、障害者雇用のスタッフが印刷し当日にはフタッフのロッカーに納品しています。外注の多くが100枚からの注文になりますが、「100枚も使わないうちに部署異動になり、名刺を破棄するスタッフ」は多いものです。10枚から印刷可能な社内であれば、コスト削減とエコロジーが叶います。
フォルダは下記の写真のように、「部署名、スタッフ名、個人ロッカーなど納品してもらいたい場所、枚数」をPDFのファイルのタイトルに書いて格納してもらいます。
例)【めいし:働き方革命事業部_神保町個人ロッカー】スタッフ名_100枚
障害者雇用チームのスタッフは、毎日15分ほどの時間を使って、フォルダにPDFがあれば、名刺を印刷し、納品先のロッカーに投函したり、支社に発送します。
この「フォルダに入れておくだけ」で名刺がロッカーに届いている仕組みが出来てからは、スタッフが「午後に訪問があるのに、名刺がきれてた!」と、出社してから気がついても、午後には名刺がロッカーに届くので「外注するよりも早い」と、とても好評です。
最後に
営業部であれば、DMや提案書、人事部であれば人事書類や研修資料、経理部であれば請求書など、あらゆる部署で印刷や発送業務が行われています。1度お願いされると「これもお願い出来る?」と芋づる式に依頼が来ますし、急な依頼にも答えていくことで「障害者雇用のチームは頼れる!」と思ってもらえます。
まずは、間違いが少なそうなDM等の印刷や発送からはじめて、発送代行センターと呼ばれるぐらいまで成長するとよいですね。
*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。
執筆の背景
障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。
そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました
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ここまでお読みくださりありがとうございます。一つだけお願いをさせてください。
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